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第6話 キスは初めて
ガチャ
「ただいま
彗ちゃん、一回降ろすよ」
玄関を開け靴を脱ぐために一旦彗ちゃんを降ろして座らせる
「靴、脱がせるね」
失礼しますと言いつつそっと靴を脱がせた
眠っているので大人しい
「彗ちゃーん。動けるー?」
「…んにゃ……」
起きそうにないので抱っこして部屋の中まで運ぶことにした
おんぶよりも距離が近い
彗ちゃんの匂いがさっきよりも濃くてドキドキする
手が震える…
落とさないようにしないと
そーっと運んでソファに寝かせる
服が皺になっちゃうから上着だけでも脱がせた方がいいかな
「失礼しまーす…」
彗ちゃんを万歳させて服を引っ張る
「……んぅ……ここ、どこ……あれ、こ、はく??」
「あ、彗ちゃ」
「っ?!?!」
上着を半分ほどたくし上げたあたりで彗ちゃんがぼんやりと目を開いた
と思ったらばっと手を降ろして服をおさえこちらを睨んできた
「……お前…人が寝てるからって、ナニしようとしてるんだ」
「え?あ、、いや違うよ?!服が皺になるかなと思って!それで、上着だけでもって!ほんとだからね?!変なことしようとか思ってないから!」
「酔っ払った奴を自分ちに連れ込んで、服脱がせようとしてたくせに…変なことって言葉が出てくる時点で怪しいんだよ」
「いや、ちがっ!」
弁明するが彗ちゃんは聞く耳持たず
無防備な彗ちゃんに触れるとか、、そりゃ少しは思ったけど
ナニかしてやろうとかそんなことは全然なのに…
「はー流石モテる男は手慣れてるわけだ」
「は?」
ぷちんと何かが切れた音がした
こちらの様子には気づかない彗ちゃん
「だってそうだろ。さっきも先輩にキスされそうになってたし、なんなら大学でも女子によく囲まれてるし
「慣れてんのは彗ちゃんの方だろ!」
は?
いたっ」
目を逸らしていた彗ちゃんの肩を思い切り掴んでこちらを向かせる
「さっきのキス!オレ初めてだったのに!彗ちゃんはすごく慣れてた!舌まで入れてきたし!
オレの知らないところで、色んな奴とやってたんでしょ!だから、あんなにうまかったんだろ?!」
オレなんかずっと彗ちゃんのこと追いかけるのに必死で、彗ちゃん以外考えられなくて…
全部、全部初めては彗ちゃんが良いなって思ってたのに…
「やっぱり、彗ちゃんはオレなんかどうでもいいんだぁぁぁあ。だからいつもオレのことおいて行くんだぁ! うわぁぁぁ」
お酒のせいもあってか涙腺がいつもより脆くなってしまっていたようで、ボロボロと涙がこぼれてきた
「あ、え、、こ、虎狛? ごめん。俺が悪かった。初めてだったとは…思わなくて…言いすぎた。だからそんなに泣くなって」
自分の袖でオレの目元を拭ってくれる
彗ちゃんの前髪ごしの瞳に情けないくらいぐしゃぐしゃになった自分の顔が映っている
「…ぐすっ…彗ちゃんのばか…」
「は?バカにバカって言われたくないんだけど」
「じゃあ、彗ちゃんのビッチ、キス魔」
「はぁ?!誰がビッチのキス魔だって?!?!」
「だって、お酒飲んだらキス魔になるじゃん!」
「………だけだよ。」
「へ??」
ぼそっと呟いた彗ちゃん
涙越しに見えた顔が赤くなっている気がする
「…だから!!キスなんかしたのお前だけだって言ってんの!!」
「え………うそ、でしょ?」
「嘘じゃない」
「だって!あんなに慣れてたのに!エッチなキスもうまかったのに!!」
信じられない!と詰め寄る
顔を赤くしたままの彗ちゃんは目を合わせてくれない
なんで?どうして?誰と練習したの?!と肩を揺する
「誰ともしてない。……うさに借りた本見てイメトレしてた…」
「うさ先輩??本??もしかして、ずっと??」
「っ……あーーーもーーー!そうだよ!勝手に虎狛の前から逃げたくせに、忘れられなくて!いつかまた会ったらってバカみたいなこと考えてたんだよ!無理だってわかってるのに
そしたら、なんでかわかんないけど、同じ大学にお前がくるし!こんな最低な奴のこと怒って無視してくれてればいいのに、あちこち着いてくるし!前みたいに優しくしてくるからっ……誰にも取られたくなくて…こんな自分勝手なのが許されるはずないのに…」
今度は彗ちゃんが涙目になってきてオレが慌てる番になった
彗ちゃんがオレのことをずっと考えてくれてたなんて
一緒にいない間に1人で大人になったと勝手に思っていたのに、勘違いだったみたいだ
「彗ちゃん…」
「…なんだよ。」
「オレ、自惚れてもいいのかな?
彗ちゃんに好かれてるって勘違いしちゃいそうだよ…」
「……勝手にすればいい」
「…うん!オレも好きだよ!大好き!」
思いっきり抱き寄せる
彗ちゃんもおずおずといった様子で手を回してくれた
「ところでさ、本当に誰とも何もなかったの?」
「え、あーーー……キス、はなかった」
「何その間…ていうか、キスはってどういうこと?!」
抱きしめていた彗ちゃんを離して体を揺する
彗ちゃんは気まずそうな顔で目線を逸らしている
「ねぇ!彗ちゃん!どういうこと!?キス以外はあるってこと?!?!」
「……した…」
「え…」
「…エッチは、したことある」
「え、ええええええええ?!?!?!」
オレの知らないところで彗ちゃんはやっぱりおとなの階段を登っていたらしい
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