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第7話 初めての相手
「彗ちゃん、、、エッチ、、、」
衝撃の事実を知って茫然とする
エッチ、、セックスしたってこと…だよね
そういえば、うさ先輩が言ってたけど、彗ちゃんはどっちなんだ…
抱かれる側なの、かな
最中どんな顔してるんだろう…
涙目でぐちゃぐちゃになっている彗ちゃんがふっと脳裏をよぎった
エロ……
「うわぁぁぁぁぁ!!!!」
浮かんだ妄想を掻き消すように叫ぶ
彗ちゃんがビクッと驚きで身体をはねさせた
「な、んだよ。急に叫ぶなって」
「いやいや!彗ちゃんのせいだからね!?その、え、えっちはしたことあるって…」
そんなこと言われたらもう色んな感情が行き場をなくして自分の中でぐるぐるするに決まってる
「別に、お前だってしたことくらいあるだろ…」
モテるんだしと言ってくる
心外だ。オレは彗ちゃん一筋で全部取っておいたのに…
「ないよ!!オレは!全部初めては彗ちゃんって決めてたんだから!」
「……ごめん」
彗ちゃんはもう終わっちゃったみたいだけど…
「っていうか!誰なの!?誰が彗ちゃんの初めてを奪ったの!?」
「……言わない」
彗ちゃんが露骨に目を逸らした
なんだかその相手のことを庇っているみたいに見えてしまってムカムカする
「どんな人なの?オレの知ってる人?どんなことしたの?どこ触られたの?」
「……」
ペタペタと彗ちゃんの身体に触れながらどこを触らせたのか問いただしていく
けど、目を逸らしたままで答えてくれない
「ねぇ彗ちゃん、お願い、教えてよ…」
彗ちゃんはそんなに交友関係広いわけじゃないし、多分初めて会う人なんかとはできないはず…
ある程度の親密度のある人だと思うんだけど
ふと、飲み会の時に言われた言葉が頭に浮かんだ
『前に2人で飲んだ時はキスはしてこなかったし』
『ま、そこらへんは猫田本人に聞けばいいんじゃないか』
あの彗ちゃんが先輩と2人でお酒飲んで酔っ払ったってことだよね…
それになんとなく含みのある言い方をされたような気もする
「熊田先輩?」
呟く程度の声で言ったのだがしっかりと聞こえていたようで彗ちゃんの体がひくついた
「熊田先輩なの!?」
「………」
だんまりを決め込むつもりらしいが、むしろその表情と無言は肯定にしか見えない
「そうなんでしょ?熊田先輩なんだよね?彗ちゃんの初めての相手って」
「……ちがう」
「嘘だ。じゃあ目を見て違うって言ってよ。本当に違うならオレのこと見てよ!」
「………」
気まずそうにしてこちらを絶対に見ようとはしない
やっぱりそうなんだ…
まさか、熊田先輩だったなんて…
「彗ちゃんは熊田先輩のことが好きなの?」
「ちがっ!」
「じゃあ好きでもない人とやれるんだ。」
「っ…そうじゃない…」
「違わないでしょ。」
お互いに沈黙する
彗ちゃんには彗ちゃんの自由があるし
会えなかった一年のことなんてわからないから何かあったのかもしれないとは思っていたけど
こんなにも受け入れ難いだなんて
いっそこのままここで全部上書きしてやろうか…
でも、他の人が触れた事実に変わりはしない
あーあ、オレって心が狭いななんて自嘲気味な笑いが溢れた
「ごめんね。オレの知らないことだってあるよね…一旦頭冷やしてくる」
掴んだままだった腕を離して立ち上がる
一緒にいると無理矢理にでも襲ってしまいそうな気がして
夜風に当たってこよう…
「虎狛っ……」
立ち去ろうとするオレの服を掴もうと手を伸ばしてきたのを避け
なるたけいつもの調子になるように努めて彗ちゃんに笑いかける
「冷えるといけないからシャワー浴びてね。タオルは脱衣所にあるのと着替えはオレので悪いんだけどタンスから適当に取ってくれていいからさ」
オレはちょっと外出てくるね
できるだけ落ち着いた声で伝えたつもりだけど
自分でもわかるくらい震えていた
「……うん。早く帰ってこいよ」
「わかった。寝ててもいいからね」
泣きそうな顔の彗ちゃんがポツンと座っている
抱きしめたい、けど、今は冷静にならないと…
震える唇をかみしめながら玄関を開けて外に出た
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