10 / 29

第10話 自分だけの星空

急いでシャワーを浴びて 彗ちゃんの待っているベッドに向かう 「お待たせ……ってあれ、いない」 待っているはずの彗ちゃんの姿がみえない 「彗ちゃん!どこー!?」 まさか気が変わって帰っちゃった、とか? でも、玄関の方から音はしなかったし 「彗ちゃーん!」 「うるせー。そんな大きな声出すと近所迷惑だろ」 もう夜中だぞといってベランダに続く扉の向こうから彗ちゃんが顔を覗かせた 「彗ちゃん!よかった!いたぁ」 「いるよ。こんな時間に帰るわけないだろ」 それに、待ってろって言われたし…と指で頬をかく 照れてる。可愛い。 「ていうか、そんな薄着で外にいたら風邪ひいちゃうよ。早く中入らないと…ってうわ」 部屋に引き込もうと手を取ると逆に手を引かれベランダに出てしまった やはり寒かったのか少し冷えた手でお風呂上がりで体温が上がったオレの手をぎゅっと握り込む 「彗ちゃん、冷えるから中はいろ?」 湯冷めしそうだ ベランダから外を眺めている彗ちゃんの隣に行って肩を寄せる 「ん、その前にほら、上見てみろよ」 「うえ?……おぉ」 見上げると雲のない透き通った夜空に満点の星 そういえば、自宅のベランダから空なんて眺めたことなかったなぁ 「…きれい」 「だろ。いい場所見つけた」 隣にいる彗ちゃんが嬉しそうに口元を緩めている そのグレーの瞳には夜の星空が映っていた 「ほんとに、綺麗だね」 「なんでこっち見てんだよ。空みろ空」 「うん。見てるよ。」 そう言って空いている方の手で彗ちゃんの前髪をかきあげる 「ここにね。オレだけの綺麗な星空があるんだ。」 瞳を合わせじっと見つめるとだんだんと彗ちゃんの顔が赤くなっていく 「は、はぁぁ?!おまっ!なにキザなこといってんだ!!恥ずかしい!」 「んへへ〜。照れてるー!可愛いよ彗ちゃん」 ちゅっと露わになったおでこにキスをする 「んなっ!?」 更に赤くなって目を見開く 星が溢れそうだ、なんて 「へへ、さっきからやられっぱなしだから、ちょっと仕返し。どう?ドキッとした?」 「……ぅるさい。」 前髪をおさえていた手をぺちっとはたいて下をむく 耳まで赤くなっちゃって…ほんと可愛い これからこんなに素敵な人を独り占めできるなんて 「オレって幸せ者だなぁ」 噛み締めながら空を見上げる 「キザの次は年寄りくさい…」 「ほんとのことだからね!」 「まぁ、否定はしないけど」 「うん!これからもっともーーっと2人で幸せになろうね」 「はいはい。ま、楽しみにしてるよ」 繋いだ手をどちらともなく更に強く握りしめた 「…はっくしゅ」 「彗ちゃん?!大丈夫?!風邪ひいちゃうからもう入ろっか」 「んー」 手を引いて今度こそベッドに向かう 次は大人しく着いてきてくれるみたいだ 彗ちゃんを寝かせて、隣に並んで寝転んで向かい合う 「狭い…」 「ごめんね。でも、今日は一緒がいいから。我慢してくれると嬉しいな」 シングルサイズのベッドに男2人はやっぱり狭い、けど、今は彗ちゃんの体温を感じてたいから 「まぁ、いいけど… 別に、今日だけじゃなくてもいいし」 「ほんと?じゃあこれからは毎日こうして一緒に寝ようね!」 「毎日は無理だろ」 「うぅ…そっか。一緒に住めたらいいのになぁ」 「ま、それはおいおいでいいだろ。それよりなにか話したいんじゃなかったのか」 「あ、うん。」 そうだ。会えなかった一年間の話をお互いにしたくて待っててって言ったんだ 俺の知らない彗ちゃんを知りたくて なんて切り出そうかと思案していると 「…先輩のこと、だろ?」 彗ちゃんの方から話を振ってくれた 「うん。そう。彗ちゃんは話したくないかもしれないけど…ちゃんと知っておきたくて」 「別にそんなに深刻な話じゃないし…」 「オレにとっては深刻なの!彗ちゃんがもし先輩のことも好きとかだったら多分オレ耐えられないし」 例えそうだとしても、もう離してあげられないから 「いや、だから、それはないって言ったろ。俺が好きなのは虎狛だけだ。」 「ぐっ…彗ちゃんさらっと不意打ちするのずるい」 急にさらっと好きって… 「はぁ?なにがだよ。 まぁ、いいや。 先輩と会ったのは…」 彗ちゃんが身体をよじり背中をこちらに向けて話し始めた 大丈夫。なにを聞いても今ならきっと 背中から手を回して抱きしめる

ともだちにシェアしよう!