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第16話 わがままはお互いに
先輩とは、そんな感じだった
そう言って話し終えた彗ちゃんの小さく丸くなった背中をさらにぎゅっと抱きしめる
「そっか、そんなことがあったんだね。
教えてくれてありがとう」
「…怒らないのか?」
「なんで?」
「俺が勝手にいなくなったこととか、虎狛のこと忘れようとして先輩に抱かれたとか…」
「うーん……怒らない、というか怒れないかなぁ。
だってその間もずっと彗ちゃんはオレのこと考えてくれてたんだよね?」
「まぁ…それはそう、だけど」
「なら、それはオレが彗ちゃんのことちゃんと捕まえてなかったせいかなって思うし。
それに、離れてる間もお互い同じ気持ちだったなんてさ、嬉しすぎて怒れないよ」
黙って彗ちゃんが遠くへ行ってしまった時、きっともうオレのことなんてなんとも思ってないんだと思った
追いかけても、もしもう違う場所で自分の居場所を作っていたら迷惑かもしれないとかも考えた
それでも諦められなくて万に一つかもしれない可能性を信じて勝手にここまできたのが無駄じゃなかったんだから
「お前は、昔から優しすぎるんだよ…俺に対して色々と甘い…」
「そうかなぁ。別にそんなことはないと思うよ?
本当に優しかったら彗ちゃんのことちゃんと忘れてあげて離れてあげるべきだったかもしれないし。結構自分勝手なことしてると思うけどなぁ」
「そんなこと…」
まぁ当然忘れるとかそんなのは無理だけど
離れてより一層自分のそばには彗ちゃんがいてくれないとダメだと実感したから
「…オレさ、多分彗ちゃんが思ってるよりすごいわがままだよ?
もしも、会えない間に彗ちゃんが他の人のこと好きになってたとしたら、2人を引き剥がして彗ちゃんのこと閉じ込めて、誰の目にも触れないように独占してやろうとか、考えるくらいには」
「お前…それ、冗談……いたっ」
冗談だろうといいかけた彗ちゃんのうなじに噛み付く
あぁ…彗ちゃんの綺麗な肌にオレのマークが…
自分のつけた歯形に舌を這わせて凹みを確認する
「結構、本気だよ?」
「ふ ぁっ…こは、く。お前なんか変なスイッチ入ってないか?」
「オレががどれだけ彗ちゃんのこと好きで独り占めしたかと思ってるかわかってもらおうとおもってさ」
「くっ…童貞のくせに…」
「それももうすぐ彗ちゃんで卒業するから、ね?」
「うぅ…こんな虎狛、知らない…」
「んへへ。オレも彗ちゃんといない一年で変わったってことかなぁ」
会えない間彗ちゃんへの気持ちは膨れるばっかりで、いつの間にか独占欲になり、今こうして恋人になれたことでそれが溢れてしまっているのだろう
「さっきも言ったけどもう離さないからね。
だから、彗ちゃんも逃げないで」
「ん…わかった…」
「もし逃げたら今度はほんとに監禁しちゃおうかな」
「冗談に聞こえないからやめろ」
それに、といって、彗ちゃんの身体がこちらを向く
「俺だって、もう逃げる気も、逃す気もないからな」
オレの胸元に顔を埋めてくる彗ちゃん
か、かわいい…!!!
「うん!!!」
思いっきり抱きしめると彗ちゃんもグッと体を寄せてきてより密着した体勢になる
しばらく、お互いの体温を感じて抱き合っていたら腕の中からすぅすぅと寝息が聞こえ始めた
話しつかれたのか眠ってしまったようだ
「おやすみ、彗ちゃん。ゆっくり休んでね」
「んん…」
「ふぁー…オレもそろそろ寝ないと」
彗ちゃんを抱きしめたままでオレも眠りに落ちた
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