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第21話 関西弁のキューピッド

居酒屋で食事をしていたら橋間の策略で 勇が急遽この場に来ることになった 話をしたいとは言ったがこんなにすぐにとは思っていなくて焦りを隠せない 「おっおまっ!?は、はしま?!?!」 「こっちもうるっさ。 話するんやろ?こんなんは長引かせても仕方ないねん。先送りにすればするほどこじれて面倒になるんは目に見えてるんやから。善は急げっていうやろ?」 「いや!!それは…そうかもしれんが。急すぎやしないか?!」 まだ心の準備が…それにここしばらくまともに顔も見てないから、なんて切り出せばいいやら… 「そんなん、なんでもええんよ。」 「なんでも?」 「そーやね。例えば…ごほん この浮気者!!俺と言うものがありながら!!何ほかの男に尻尾振ってんだ!!!とか?」 「んな?!?!」 俺の声真似をしてケラケラ笑っている橋間 そもそも浮気とかでもないし…というか、俺と言うものがありながらって! その言い方だと語弊があるだろ 「まぁ冗談はさておき。ちゃんと自分の気持ちは伝えんとあかんよ。すれ違っててもさみしいだけやしね」 「お、おう……がんばる!ちゃんと話して、す、すす好きだって!いうぞ!」 「よっしゃ、その息や!応援してるで! いい加減わいも開放されたいしな(ぼそっ」 「ん?なんか言ったか?」 「なんもー?」 やるぞやるぞやるぞとぶつぶつ呪文のように唱える 橋間はそうやで!その調子や!と肩を叩いて励ましてくれている ガラッ!!! 勢いよく店の扉が開いた その先には息を切らしてぜぇぜぇ言っている勇がいた いらっしゃいませーという店員にぺこりと頭を下げてなにか話している 店員がこちらを手で指し示した どうやら席を聞いていたみたいで、こっちに顔を向けた勇と視線がぶつかった 店員に一礼して早足でこちらに向かってくる 「……香澄!!!」 「勇……」 近くに来たと思ったらそのまま抱きしめられた 久しぶりに触れられて久しぶりに名前を呼ばれただけなのに、なんだか泣きそうになってしまう あぁ、俺はこいつが本当に好きなんだな 「……ぐすっ」 「かっ香澄?!?!おまっ泣いて?!」 「あーあーーーまぶさん泣かしよったー。」 「あ、え、わ、悪い…」 バッと離して距離を取る勇 明らかに慌てている様子でさっきまで焦っていた自分が馬鹿みたいに思えてきた 少しこぼれてしまった涙をゴシゴシと拭き取る 「……勇」 「はっはい!!」 改まって名前を呼ぶとびくっと反応する 覚悟を決めて一息吸う 「話がある。今から時間よこせ」 「……はい」 自分で思っていたよりもかなり低い声がでた おずおずと返事をした勇に外で待っててほしいと伝えると俺と橋間の顔を交互に見て何か言いたげにしていたがいう通りにしてくれた 出て行ったのを確認して橋間の方に向き直る 「行ってくる」 「お〜気張りや〜」 「おう!!あっこれお代おいてくな!お釣りは持ってってくれ。デートの邪魔して悪かった。お兄さんにも謝っといてくれ」 テーブルに多めにお札を置いて飲みかけのお酒をぐいっと飲み干し立ち上がる ひらひらと手を振って見送ってくらている橋間に ありがとなと伝えて勇のところへと駆け出した 今から幸せになるであろう男たちの見送りを終えた関西弁のキューピッドはグラスに入った酒を煽る 「……ふぅ。やっとひと段落つきそうやな。ほんま手ぇかかるわ〜」 置いていかれた空のグラスをみて呟いた 「そんなこといいつつ、ちょっと楽しんでただろ。」 「あっにーちゃん!」 空になった皿を下げにきてくれたにーちゃんにそう言われて、少しにやけてしまう 「いややわぁ。そんなふうに見えてた?」 「見えてた。おれには両片想い拗らせカップルご馳走様です〜!って鼻息荒くしてるようにしか見えなかった」 「あっちゃ〜やっぱりにーちゃんにはバレバレやったかぁ。できるだけ顔にでんように気をつけとったのに」 「まぁ、おれくらいにしかわからなかっただろうから先輩がたは気づいてないんじゃないか」 「なにそれ?!愛の成せる技ってこと?!照れるわ〜」 「うっさい」 そう言って厨房の方へ戻ろうとするにーちゃん ちょっと顔が赤いけど突っ込んだら怒るやろから何も言わんでおこ 一瞬足を止めたにーちゃんがこっちを振り返る 「もう少しで上がりだから待ってろ。あと、あんまり飲みすぎるなよ、一応未成年なんだから」 「あーい。わかっとります〜。良い子にして待ってるからはよきてな」 「はいはい」 今度こそ仕事に戻っていく背中を見つめてニマニマしてしまう 「やっぱり、わいのにーちゃんが一番やわぁ」

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