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9人目
「母上っ!」
僕が倒れたと聞いて子供達が心配そうに部屋に駆け込んで来た。
「ええっと、大したことじゃないから…。」
原因を考えると言いづらい。
口ごもってしまうと。
「妊娠だ。」
アレク様が続けた。
子供達はざわつく。
僕が赤い顔で苦笑を浮かべていると、
「母上…また辛い思いを…。」
ぎゅっとリシェールが抱き付く。
「有難うリシェール。でも、苦痛だけ乗り越えれば幸せだからね。」
「苦痛…。もうお前が産めっ!」
リシェールがすぐにアレク様に食って掛かる。
「産むのはリシェだが、苦痛だけ引き受けたい…。」
リシェールの言葉でアレク様が考える。
「身代わりのようなのは無いのか、闇の神力で。」
リシェールが提案しだす。
「それがあったら最初から使っている。身代わりの代わり…。」
「いや、平気平気!苦痛も産みの内の一つだからね!」
本気でアレク様は研究しかねないから、慌てて言った。
「それに、言ったでしょ。僕にとってアレク様は大事なんだから、僕の身代わりでアレク様が苦しんだら、その方が僕にとって辛いんだから…。」
「リシェ……。」
アレク様に感動の眼差しを向けられてしまい、リシェールから僕は離されて、アレク様の胸に抱かれる。
「は、母上っ!私にもそう思ってくれますか?」
「当たり前だよ、リシェール。」
「母上っ!」
リシェールも僕に抱き付き、アレク様とリシェールが睨み合いになる。
他の子供達は二人を一歩退いて見てる。
いつもの事だから。
「リシェー、おめでとう!」
急にバターンとドアが開いて陽太さんが入って来た。
そう言えば誰一人ノックしないよね。
礼儀作法の授業無かったっけ?
まあいいけどね。
「あ、母上、おめでとうございます!」
我に返った子供達が、エイリシュを先頭に次々お祝いを言ってくれた。
後は安静にするためにと子供達は部屋に戻って行く。
リシェールは僕を看病すると言い張ったけど、陽太さんが引っ張って連れて行った。
アレク様が何やら陽太さんに合図していたから、アレク様の指示だったんだろう。
「リシェ、出来るだけリシェの苦痛の時間は短くしたい。それには…二十四時間常に一緒に居る必要がある。」
「え?でも仕事どうするの?」
「……三日おきに俺の部屋とリシェの部屋に籠って、仕事をするというのはどうだ?」
「それは、僕の仕事もアレク様が片付けるの前提だよね。」
アレク様と違って、三日も僕は仕事を休んだら追い付けなくなる。
「大丈夫だよ、二十四時間は無理だけど、仕事の合間にでも僕の部屋に様子を見に来てくれれば、ね?」
「…それが現実的か…。」
そして僕は結局アレク様が様子を見に来た時、苦しんでた。
いつものように転移で取り出してもらって、清潔になった子を見ると、女の子だった。
女の子は一人しか居ないから、妹を作ってあげられて良かったなって。
「聖母の核は割れたが、そうしているとやはり聖母に見える。」
「もうあんな思いするのはやだよ。」
「俺が必ず守る。」
赤ちゃんごとアレク様が抱き締めてくれる。
「聖母を失った宇宙はどうなるんだろう?」
「必要ならまた生まれるんじゃないか?今まで居なかったんだから多分大丈夫だろう。」
僕はこりごりだけど、また生まれてくるならば…願わくばこの星には関係しないでほしいな。
「リシェの悩みも憂鬱も、俺が全て払う。」
「頼りにしてる。」
アレク様が言ってくれると本当に沈んだ気持ちが向上する。
アレク様に感謝の気持ちを込めて微笑んだ。
「……約一年ぶりだ。」
アレク様は赤ちゃんをベビーベッドに寝かせて、僕を押し倒す。
ん?何かこの遣り取りやったことあるような…。
「あっ、リシェールを産んだ時!」
「ん?そういえば…エイリシュを作った時だな。」
「アレク様も覚えてたんだ。」
「リシェの言葉、仕草、何もかも記憶しているからな。」
「……恥ずかしい失敗とかは忘れてね。」
何をどこまで覚えられてるのかって考えると、顔が熱くなってしまう。
「そういう可愛い反応は特に全部忘れない。」
きっと、揶揄ってる。
「十人目、作る気?」
「リシェが俺の理性を消し飛ばさなければデキないぞ。」
「アレク様のスイッチは未だにわからないよ。」
二人で笑い合ってから、ゆっくり口付けた。
デキてもデキなくても、アレク様といつまでも抱き合っていられればいいなって。
僕がアレク様の頭を抱き締めると、どちらからともなく深い口付けを交わした。
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