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第十話⑥

「俺たち、今からツナヒキだから」  勇太がノリノリで圭を振り返る。 「早く行くよ、圭ちゃん。そんなイヤそーな顔しないで」  圭はいつものようにポーカーフェイスを決めているが、勇太にはお見通しのようで、運動が天敵な学級委員長は小さくため息をついた。 「早く終わればいいのに。僕には拷問だ」 「ごーもんってナニ? おいしいの? 早くみんなと行こうよ」  運動大好きマンの勇太は意気揚々と圭の愚痴を粉砕して、脇にいる伝馬に手を振る。 「じゃねー、伝馬も頑張ってね」 「ああ、そっちもな」  綱引きに出るクラスメートたちがぞろぞろと教室を出て、第一体育館へ向かう。残ったメンバーが出場する競技は、バレーボールだ。 「じゃ、オレたちも行こうか」  体育委員の水瀬が先頭に立って廊下へ出る。廊下は生徒たちがそれぞれの体育館目指して列を成しているため、あちらこちらで話し声が飛び交い、賑やかだ。 「さあ!! みんな頑張ろう!! 青春の体育祭を謳歌しよう!! 君たちが主役だ!!」  階段付近でひときわ賑やかに声援をおくっているのはジャージ姿の古矢だ。その反対側にはスーツ姿の理博がいる。 「静かに、早く歩け。さもないと体育祭は終わらないんだぞ。無駄口を叩いていると、ああなるぞ」  と、毒々しく古矢をディスって、通り過ぎる生徒たちをドン引きさせている。  伝馬はバレーに出る仲間と一緒に第二体育館へ向かいながら、集中力を上げていく。午前中はバレーに出場し、午後からが学園一文武両道会だ。  吾妻学園の体育祭は、午前に綱引き・バレーボール・障害物競争・リレーが学年ごとに行われ、午後に文武両道会が行われる。以前はもっと幅広く種目があったが、熱中症対策のために体育館で行われるようになってからは、生徒たちにアンケートを取り、体育館でやりたい競技を選ぶ形になった。合わせて、保護者たちの観戦も場所が確保できないために中止となった。保護者たちからは残念がる声も出たが、生徒たちは全然気にしていない。むしろ、親たちがいない方がのびのびと仲間内だけで体育祭を楽しめると好評である。  体育祭では、生徒は必ず一種目には参加しなければならない。自主的に練習していたクラスもあれば、ぶっつけ本番なクラスもある。伝馬たち一年三組のエアースローガンは一発勝負なので、バレーも簡単な説明だけで、試合に臨む。 「バレーって、そんなに面倒なスポーツじゃないから。ママさんバレーってあるくらいだし。オレが指示出すから、そのとおりにやれば大丈夫」  バレーボール部所属の水瀬が指揮を執る。 「運動部のメンツを揃えたかったから、体育委員の権限でメンバーを決めさせてもらったから。正直、運動やっている仲間だとオレが助かる」  第二体育館に到着して、水瀬が五人をぐるっと見渡す。それで俺が選ばれたのかと、伝馬は納得した。他は、水瀬と同じくバレー部所属が一人、テニス部が一人、サッカー部が一人、バスケ部が一人、そして剣道部の伝馬だ。

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