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深夜1時ちょっと前。事務所の駐車場に車を止める。 「地下駐車場でよかったぁ。」 「そんなに降って無かっただろ。」 「そうだけど、1ミリも濡れたくないし。」 「はいはい。」 バンッとドアを閉めると、小雨で濡れた車体から水しぶきが飛ぶ。 「げぇっ。濡れたぁ。」 「乱暴に閉めるのが悪い。」 「くっそ。事務所で乾かしてから出発しよ?」 「用件による。」 「ちょっとぐらい、いいだろ?」 なんて会話をしたのが、すごい前。 「『ちょっと』でいいんだよぉ!」 「うるさい。」 事務所に顔を出すと伝令係が居て、告げられた仕事内容は『明朝7時、火葬場で骨を受け取り指定された寺へ運ぶ』というもの。『明朝起こしに来るまで事務所に居るように』と言い放つと、伝令係はサッサと帰ってしまった。 「ここから火葬場まで1時間もかかんないんだよ?!いま何時?」 「2時。」 「火葬場もう着いちゃうよ?!」 「着かない。車乗ってない。事務所。」 「分かってるよ!なんで深夜に呼び出すんだって話!」 「朝に呼び出しても時間通り来ないから。」 「…それはそう。そうだけどぉ!」 「うるさい。」 「はぁぁぁぁぁぁ。」 そりゃデカい溜息だって出ちゃうよ。そもそも俺は夜行性なのだ。朝に呼び出されても、これから寝るぞ!って時に困る。仕事はヒロに任せて寝てればいいって?それが出来れば苦労はしない。ガチャリと事務所のドアが開く。 「よぉ!ハヤトじゃねぇか!」 「あ、お疲れ様です!」 「久しぶりだな。どうよ、最近は?」 「ぼちぼちっすね。先輩方は仕事の帰りですか?」 「そうなのよ。任務は成功したんだけど、血ぃ被っちゃって。着替え貰いに来たんだわ。」 「わー!真っ赤じゃ無いっすか。大変でしたね。」 「帰りの車が生臭くて最悪だよ。よぉ、ヒロユキ!お前も元気か?」 「…。」 「ははっ、相変わらずだな!返事くらいしろよ。」 スーツの中のシャツが赤黒く染まった先輩がヒロの頭をガシガシ撫でるが、ヒロは無反応だ。 「すいません。ヒロ、返事くらいしろよ。先輩だぞ!」 「…うっす。」 「おー、声聞いたの久しぶり。んじゃ、行くわ。お前らもこれから仕事か?」 「はい!明日の朝っす!」 「そっか、そっか。俺たち着替えたら帰るわ。今日はもう誰も来ないから、鍵閉めろよ!」 「はーい!お疲れ様でした。」 「おぅ!」 先輩方がロッカールームへ消えて行くのを見届けて、向かいに座るヒロを睨みつける。 「…なに?」 「ヒロはさぁ、もうちょっと人と話したりとか出来ないわけ?」 「…別にハヤトと話せればいい。」 「そうじゃなくって。昼の仕事の時も、そんな感じなの?」 「……。」 「あ、そう。よく仕事出来るね。」 「言われた事やればいいから問題ない。」 ヒロに任せられない原因がコレだ。何故かヒロは俺としか話そうとしない。これが原因で、取引先と揉め事になる事が多く、俺が交渉担当をやっている。じゃあ、なんで俺だけでやらないかって?俺は車の運転が好きじゃないから。交渉係と運転係、持ちつ持たれつ二人組の運び屋をやっている。 「それにしたって、あと5時間もあるぜ。」 「6時に出るから、4時間。」 「細けぇな。あと4時間どうすんだよ。ヒロだって、夜中の長距離に備えて昼まで寝てたんだろ?」 「…まぁ。」 「寝ないで居るのも危ないけど、寝れる?」 「寝れない。」 「だよねぇ。あ、お疲れっしたぁ。」 先輩方が事務所を出たのを見送って、ヒロが鍵を締めに行く。戻ってきて、そのまま俺の横に腰掛ける。 「なに?なんかあった?」 「ハヤト。シたい。」 「…はぁっ?!」 何考えてんだ、こいつ。 「お前、ここ事務所だぞ?」 「コンドーム持ってる。」 「そういう問題じゃねぇよ!あと4時間後には出発なんだぞ?大体シャワーだって無ぇし、無理!」 「…。」 「そんな顔してもダメ!」 こういう甘えたい時のヒロは、まるで大型犬に見える。俺よりデカい身体をしておきながら可愛く見えてしまうのは、俺がヒロに惚れているからなのかも知れない。どっちにしろダメなもんはダメだ。 「ハヤトも寝れないだろ?」 「そりゃそうだけど。」 「じゃあ、抜きあいでもいい。」 「はぁっ?!」 「俺のココ、もうヤバい。」 そう言って手を取られ、ヒロの股間を触らせられる。お前、なんでこんなガチガチなの?思わず冷や汗が出る。手を引っ込めようと思ったが握る力が強すぎて動かない。この馬鹿力が! 「しばらくしてない。」 「嘘つけ!3日前に散々しただろ!」 「それからやってない。」 「少しは我慢しろ、馬鹿犬!」 空いてる方の手で頭を引っぱたくと、その手も掴まれて引っ張られ、ソファーの上に押し倒されていた。何これ、ヤバくない? 「お願い。シたい。」 「ダメ!ここ事務所!」 「どうしても?」 「どうしても!!」 「…分かった。」 『分かってくれたかぁ。よかったよかった。さぁ、手を離してくれ。』と思ったら、両手をまとめて押さえられた。 「へっ?」 「勝手にやる。」 「待て待て待てまてっ!」 バンザイさせられた俺の両手を左手でまとめて押さえつけ、右手で器用にズボンとパンツを脱がせにかかる。『なんで俺イージーパンツ履いてきたんだよ!』『いや、長距離だからベルト食い込むかと思って!』とか脳内で一人ボケツッコミしている間にズルリと膝まで脱がされてしまった。縮こまったチンコにヒロの手が触れる。少しだけ冷たいその手に、ビクッと身体が跳ねた。 「待てってば!」 「どうして?勃ってきた。」 「ばっ!擦られりゃ勃つだろ!」 「シたい。ダメ?」 「ここ事務所だってば!」 「コンドーム二人分ある。」 「そういうもっ、あっ、ひゃぅっ!」 「気持ちよさそう。」 「んあっ!っう、やめろって!」 ヒロと身体を重ねるなんて日常茶飯事で、こいつは俺のイイところを知り尽くしている。ギュッと握りこまれたまま上下に擦られ、鬼頭をくるりと優しく撫でられれば、口からいやらしい声が漏れる。 「あっ、あっ、やだっ、ヤダってば!ヒロっ。」 「濡れてきた。いいよね?」 「だっ、ぅう、ダメっ!」 「…じゃあ、シてあげる。ツラいだろ?」 そう言うと、パッと手を離し次の瞬間両足を掴まれた。 「痛っ!なに?!」 ズボンもパンツも最後まで脱がされて、太ももに手がかかる。足の間から俺を見上げたヒロが舌で唇を舐める。その瞬間、何をされるのか理解した。 「ヤダヤダヤダっ!!やめっ、ひゃぅ!!」 ヒロの温かい口内に迎え入れられ、さっきよりも強い快感が俺の背筋をゾクゾクゾクっと稲妻のように走る。 「やだぁ、やめてぇっ、ひゃぅ、あっ、あっ!」 「ハヤト、ひゃわいいよ。」 「バカバカバカっ!!そこでっ、っあ、しゃっ、しゃべんなっ!」 ヒロの頭を引き剥がそうとするが、どこにどう力をかけてもビクリともしない。バタバタと足を動かして抵抗していたが、だんだん体に力が入らなくなってくる。ズルズルと滑っていく身体を支えきれず、ソファーに寝そべった俺の股間にソファーに乗ったヒロが顔を埋めている。座り心地のいい無駄にデカいソファーを憎むなんて初めてだ。天井の蛍光灯も眩しいし。 「っあ…んんっ!」 「ハヤト、いい子だね。口と外どっちがいい?」 「うぅ。」 「どっち?」 「…外にっ、んんんっ、外に出すっ!」 「汚れたら洗えないから、コンドームするけどいい?」 「いいっ!はやくっ!」 舌と指で高められた俺は、もう限界だった。それでも、口の中には出したく無かった。口の中に出したものをゴクリと飲み込まれたら、それこそ歯止めが効かなくなりそうだったから。やっとの事で身体を解放されたが、もう逃げる力は残っていなかった。というか、逃げる気力も無くなっていた。ここが事務所だからヤりたくなかっただけで、俺だってヒロとヤりたくない訳じゃない。 「んっ!」 「冷たかった?ごめんね。」 「ん、大丈夫。」 ヒロの手でクルクルとコンドームを被せられた息子に、ピタリと熱いものがくっつく。ドクドク脈打っているソレがヒロのモノだと思うと、また興奮してきた。右手を取られ、2本まとめて握らされ、その上からヒロのデカい手が重なる。 「いくよ?」 「ん。」 右手ごとギュッと握られ、上下に擦られる。気持ちよくなれるように指で鬼頭を撫でるように動かせば、コンドームの中で先走りがヌルヌルと滑った。外れてしまうのでは?と思ったが、根元の方まで握りこまれ押さえられているので、その心配は無さそうだ。 「んっ、あっ…。」 「っ…。」 「ヒロっ。」 「ん?」 「きもちいい?」 「あぁ。気持ちいいよ。」 「ん。」 じっと俺を見ていたヒロの水色の瞳が弧を描く。ギュッと握る力が強くなり、俺は指先でくるくると鬼頭を撫で、カリを引っ掻き、二人で一気に高みを目指す。 「っ…あっ!!」 「っ!!」 頭の中が一瞬真っ白になって、びゅるるっと薄い膜の中に欲を吐き出す。ヒロも同時に達したのか、ビクンビクンと脈打っている。 「あー。事務所でやっちゃった。」 「うん。」 「バレたら殺されるんじゃね?」 「俺が護る。」 「そういう話じゃねぇよ。ってか、離せよ。後片付けしなきゃ。」 ギュッと握りこまれた右手が解放されない。解放されないどころか再び力が入った気がする。 「え?ヒロ?」 「ハヤト。」 こっちを見たヒロの眼は獲物を逃さない雄の眼だ。目線があった瞬間、手の中でヒロのモノが固く大きくなった。 「…え?」 「もう一回。」 「はぁっ?!?!」 「ハヤト、手だけ貸して。」 「いや、おまっひっ!」 「ん。」 「待て待て待て待てっ!」 上下に動かされ、グチャグチャと音を立てるコンドーム。生まれた隙間から、出した精液が下へと落ちていく。 「バカバカバカ馬鹿っ!」 「ハヤト。」 「溢れる!コンドームした意味ねぇよ!」 「じゃあ、新しいのにするから。」 「ばっ!」 「してくれないなら、このままする。」 「分かったっ!分かったから!ソファーに垂れる!」 「押さえてるから大丈夫。起き上がれる?」 背中に手を入れられ身体を起こされると、ようやく右手が解放される。慌てて中身が溢れないようにコンドームを外す。 「げぇっ、ベタベタなんだけど。」 「ティッシュ使う?」 「お前も取り替えろよ。」 「分かった。」 ヒロのモノは、正直、取替えなくても溢れなさそうなくらい勃起してるけど。それでも言った通り慎重に外されたコンドームには、俺の倍くらいの液体が溜まっている。 「お前、こんなに出しても足りねぇの?」 「足りない。」 「…あ、そ。」 「コンドーム取ってくる。」 そう言って、持ってきているボディバッグを取りに立ち上がる。ヒロの身体は俺より、ひと回りもふた周りもデカくて思わず見入ってしまう。身長は高いし肩幅はあるし背中はデケぇし、そのくせケツは小さくて締まってるし。上半身Yシャツなのに下は丸出しなのはダセぇけど。 「あった。」 「おう。」 仕方ねぇから、もう一戦くらいは付き合ってやるか。なんて思っていた俺は、この後精液出なくなるまで付き合わされる事をまだ知らない。

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