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episode5 ヤキモチ?
「昨日あの後、藤野先生が泣いちゃって大変だったんですが?」
「あ?」
「いくらなんでも、あれは言い過ぎです」
パソコンに向かい書類を作成している俺の隣の椅子に、日下部が物凄い勢いで座る。こいつにしては珍しく、相当怒っているようだ。
「別に藤野先生が誰と話してようが、あなたには関係ないでしょ?」
「………………」
あー、めんどくさい……。
こういうのが1番ダルいんだよ。
「月居先生、聞いてるんですか?」
「聞いてない」
「なんですか、それ。ヤキモチですか?」
「はぁ?お前何言ってんの?」
突然馬鹿なことを口走る日下部に、思わずパソコンを打つ手が止まる。
なんで俺がヤキモチを……?
「だってそうじゃないですか?俺と藤野先生が仲良くしてたのが面白くなかったんですよね?」
頬が火照ってきたから、棚から資料を取るフリをしてさりげなく日下部から視線を逸らした。
「ヤキモチ妬いてくれたんですよね?ねー、月居先生」
俺の白衣の裾を掴むと、子供みたいに引っ張った。
普段しっかりしている日下部が、やっぱり年下なんだな……って時々感じることがある。
不覚にも可愛いな……って思ってしまう。
次の瞬間、日下部の手がパッと白衣から離れたから、思わず日下部のほうを向いてしまった。
「俺、藤野先生みたいな、気が強いけど本当は弱い部分を持っている年上の人が好きなんです」
「え……?」
「って言ってもヤキモチなんか妬かないですよね。じゃあ、これから点滴に回ってきます。今度、藤野先生に会ったら謝っておいてくださいね」
そう言い残すと日下部は行ってしまう。
「そっか……日下部は、気の強い年上が好きなんだ……」
その言葉が、なぜか俺の胸にズキッと突き刺さった。
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