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素直になれないクリスマス④

 このいくら考えても答えの出ない無限ループから、俺はずっと抜け出せないでいる。  今日1日ずっと考えてみたけど……結局は、何で自分がこんなにモヤモヤするかなんわからなかった。  恋なんて御免だ……そう割り切って医師と看護師として接すればいいだけなんだから。 『月居先生って、頭が良いくせに本当に馬鹿ですよね。馬鹿っていうか鈍感?』  少し前に日下部に言われた一言。  確かにそうなのかもしれない。かと言って相談する相手もいないし……。 「蓮」 「ん?」  仕事を終えた俺は、ステーションを出てトボトボと医局へ向かう。そんな俺に声をかけてきたのは、麻酔科医の瀧澤晴人……俺の元彼だ。 「なぁ、お前クリスマス予定あるの? 良かったら飯でも行かない?」 「あー、予定なかったけど、ついさっきできたわ」 「ついさっき?」  瀧澤が顔を顰めるのを見て、イラッとしてしまう。  大体別れた男とクリスマスを過ごそうなんて、下心見え見えなんだよ……。  こいつの顔が良くなかったら、一発ぶん殴ってるとこだ。  なぜなら、こいつのせいで俺は新しい恋ができずにいるんだから。 「もしかして、あの看護師か?」 「ん?」 「日下部だっけ? あいつと約束してるとか?」 「日下部か……うん、そうだね」  その名前を聞いただけで胸が痛む。  泣きたいわけではないのだけれど、あまりにも心がグチャグチャになって、自分に残された手段は泣くしかないのではないか…と、思えてならなかった。  ヤバい、やっぱり俺日下部のことが……。 「なんで泣きそうな顔してんだよ? 何かあった?」  そんな俺の頬を優しく撫でてくれる。  下半身がだらしなかったけど、瀧澤は昔から優しかったなぁ……ふとそんなことを思い出す。 「話聞いてやろうか?」 「お、お前なんかに話すことなんてねぇし」 「そんなこと言うなよ、蓮のことは俺が一番わかってるんだから。それに俺は今だって蓮が好きだ。いつでもお前が帰ってくるのを待ってるんだよ」 「…………」 「行こう。2人きりのが話しやすいだろう?」  流されるまま瀧澤に肩を抱かれ歩き出すと、グイッと強い力に腕を引かれた。その力強さによろめきながらも、俺は後ろを振り返った。 「月居先生、1人点滴の指示出すの忘れてます。もう一度病棟に戻ってください」 「日下部……」 「と言うことで、瀧澤先生失礼します」  そう言いながら日下部は瀧澤に向かって丁寧に頭を下げる。 「ほら、行きますよ」 「ちょ、ちょっと待ってよ」  俺は日下部に引きずられるように歩き出した。

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