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素直になれないクリスマス⑥

「月居先生、当直お疲れ様です」 「あ、うん」  机に向かいカルテを入力して俺を背後から抱き締めるのは……クリスマスイブの夜を一緒に過ごした日下部だ。  一緒に過ごした……と言っても俺が当直で、日下部は夜勤だった。だから甘いepisodeなんてあるはずもない。おまけに、昨日は亡くなった患者んさんがいたせいか、慌ただしい夜だった。  当直の俺は、このまま日勤まで働かなければならないけど、夜勤の日下部はこれで帰ることになる。  夜勤明けのくせに、汗の匂いすらしない日下部に思わず抱き付きたくなった。 「今晩、19時。ここで待ってます」 「……は……?」  日下部は自分のスマホの画面を指先でつつく。そこには、有名な公園の写真があった。  大きなクリスマスツリーに賑わう出店……まるで夢の国のように見えた。 「待ってますから、必ず来てくださいね?」 「で、でも!」 「待ってます、からね」 「…………」  にっこり微笑む日下部を見ると、何も言い返せなくなってしまう。  こいつ、最近押しが強過ぎるだろう……。 「じゃあ、お疲れ様でした」  そう言い残し、日下部はさっさと帰ってしまった。  なんで俺が日下部なんかのために……そう思うと腹がたってくるけど、一応念のため日下部が待ち合わせに指定してきた公園を調べてみる。 「行くかわかんねぇけど……」  そう呟きながら、一日中その公園のホームページを熟読してしまった。    19時ピッタリ……俺は待ち合わせの公園にいた。  公園には想像していた以上の人で賑わっている。キラキラと輝くイルミネーションに、たくさんの出店。 「あ、ホットワインとかある……」  少しだけ心がウキウキしてきた。  楽しそうな家族連れに、幸せそうなカップル。  俺と日下部は、一体周りからどうやって映るんだろうか……そう思うと少しだけ不安にもなる。  今更、やっぱり帰ろうか悩んでしまうけど……それ以上に、俺は今日、日下部に会いたかった。  でも、俺は日下部のことなんて……。  もう恋で、傷つきたくなんかないんだ。

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