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素直になれないクリスマス⑦

「月居先生、こんばんは」  弾かれるように顔を上げれば、見慣れない私服に身を包んだ日下部がいた。  見慣れたスクラブではなくて、雑誌で見かけるようなカジュアルな洋服を着た日下部は、凄くかっこいい。キラキラ光るイルミネーションに負けないくらい綺麗で……。  そう思ってしまう自分が恥ずかしくなる。 「行きましょう」 「え? どこに?」 「一番奥の広場に大きなクリスマスツリーがあるんですけど、それを月居先生に……蓮さんに見せたくて」  俺のことを名前で呼んだことが恥ずかしかったのか、頬を赤らめながら微笑む。 「腹も減ったから、何か食いながら行きましょう? 蓮さん、何か食いたいものありますか?」 「俺、肉が食いたい!」 「ふふっ。いいですよ。俺も肉が食いたいです」  俺が目をキラキラさせれば、そっと手を取られる。  こんなところで……誰かに見つかったら……。  冷や冷やしながら手を払いのけようとすれば、指を絡め取られギュッとに握られてしまった。 「暗いから大丈夫です。それにいざとなれば俺が病院辞めますから。だからお願い……今日だけは手を繋がせてください」 「そ、そんな……」 「心配しないで。看護師なんて引く手あまただがら。就職先なんてすぐに見つかります」  幸せそうに微笑まれてしまえば、もう手を振り払うことなんてできなかった。 「ほら、これがクリスマスツリーですよ」 「わぁ! めっちゃ綺麗!」 「ね? 俺も実物は初めて見ました」  出店を抜けた先には大きな広場があって……その中心には大きなクリスマスツリーが立っていた。  まるで星みたいにキラキラ光るオーナメントが枝という枝に飾り付けられて、眩しい位に輝いている。一番上には大きな星が翳されてあり、思わず息を飲む程に美しい。  広場にはランタンも置かれており、ユラユラと淡い光を放っている。  その絵本に出てくるような光景に、思わず見とれてしまう。  ちょこちょこ出店に寄り込んでは食べまくっているうちに、時間はあっという間に過ぎていき……人影もまばらになってきた。もうすぐ閉園の時間だ。 「楽しかったな」  思わず呟いてしまった言葉に、自分自身がびっくりしてしまう。  嫌だな、俺はこんなキャラじゃないのに……。

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