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第78話『うまくいかない?』★

サキが薄く口を開くと、レイは舌を入れてきた。濃厚に絡ませながら、ベッドに上がる。 「……ふ」   息を漏らすと、レイはサキの服を脱がした。 あごから首筋、胸へと手を這わせ、口をつけていく。 愛おしむように撫でられ、サキは目をつむってレイの愛撫を味わっていた。 時折、微弱な快感が走り、身じろぎすると、レイの撫でる手に力が入った。 「ん……」 サキが声を零す。レイはサキのズボンを下着ごと剥ぎとった。 すでに快感に酔っていたサキの下半身は充分に反応している。 レイはサキのものを握ると、躊躇なく口に含んだ。 「ちょ……! レイ!」   驚いたのはサキの方である。まさか咥えられると思っていなかったので、仰天したが、 「んっ……」   舐め上げられ、口腔に含まれる心地良さに抗えなかった。 サキは小刻みに息をした。 レイの口で快感が高められていく。サキはベッドのシーツを掴んで、のけぞった。 「レイ……! い、イクっ」   放して、と言った声が掠れた。 レイはサキのものを含んだまま、吸いあげるように口を動かした。 「んッ!」 とたん、サキは我慢できずに果ててしまった。レイは口で受け止めた。 「あ、あ……ごめん……」   サキは恥ずかしさと罪悪感で、紅潮した。 レイはサキの顔を見ながら真顔で、手の甲で口元をぬぐった。 その仕草にサキはゾクッとした。レイの目に情欲が浮かんでいる。 レイは自分の指を舐めると、サキの内股を撫でながら、後孔に指を入れた。サキは大きく震えた。 レイの長い指がほぐすように抜差し動いている。 何度もレイを受け入れてきた身体だ。 恥ずかしくもあるが、すぐに馴染むだろうと思っていた。ところが今日は勝手が違った。 オメガの男は後孔が女のように濡れる。何度かヒートを経験したサキは違和感を覚えた。 (おかしいな。いつもすぐ濡れるのに……) レイは慌てず、ゆっくり慣らしているので、サキの方が焦ってきた。 「なんか、変だ」   思わずつぶやくと、レイが言った。 「痛い?」 「いや、痛くはないんだけど、その……」   サキが言い淀むと、レイはすぐに察してくれた。 「きつくて、濡れない?」   恥ずかしげもなく言うので、サキは赤らんだ。レイは指を動かしながら、 「ヒートじゃないからね。男のオメガは普段は濡れにくいんだよ」   言いながら、レイは指を増やした。サキはレイの指を呑み込みながら、 (手間かけさせてるのか)   なんてことを考えていたら、狭い内壁をグッと押され、稲妻のように快感が走った。 「あっ!」 たまらず嬌声を上げると、レイはサキが感じたところばかり攻めてきた。 (またイってしまう……!) シーツを掴んだまま、背が浮かぶ。尻にギュッと力を込めると、レイは指を抜いた。 あやうく果てそうだったサキは肩で息をしていた。 イかずに済んだと思うと同時に、物足りないとも思った。室内は真夏の夜のように暑い。   前戯をやめたレイは、着ていた服を脱いだ。 逞しい体をうっとり見ていると、レイはサキの身体を開いていた。 後孔に熱い半身が押し当てられ、侵入してきた。 しかし、ヒートのときのように、ぬるりと入らない。 「う……」   内壁を押し開いていくように、レイはゆっくり侵してきたが、サキの身体は強張ってしまった。 レイが顔をしかめた。 「サキ、ちょっと、力抜いて」 「ご、ごめん……」 きつそうなレイの顔を見て、サキは泣きたくなった。 「うまくできない……」   唇を噛むと、レイは、ふ、と笑った。 「大丈夫」   そう言って、サキの身体をすくい上げて座らせた。 「んっ」   レイの上に腰が落ち、奥までつながった。サキが蕩けた瞳を向けると、 「ゆっくりやるから」   レイはサキの耳朶を噛んで甘く囁いた。 「……春之」   刹那、サキの胸に熱いものが込み上げてきた。 目頭が熱くなり、見られたくなくて、レイを抱き締めた。地肌で感じる温もりに、サキは涙した。 「レイ。好きだ」   レイは、うん、と言って、サキにキスをした。強張った全身が溶けていくようだった。 唇を離すと、レイは柔らかく言った。 「動いていい?」   サキはうなずいた。 レイはサキを横たえさせると、気遣うようにゆっくり動いた。 サキの感じる場所に当たるように抽挿される。 「んう!」   サキが快感で喘ぐたびにレイも昂るのか、しだいに激しく突き上げてきた。 「あ……あっ!」   サキが絶頂を味わったとき、レイもまた、己の熱を解放した。

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