彼には気楽なのであろう、片膝を立ててその上に腕を乗せるという、格好付けてるのか天然なのか……な座り方で弁当を無表情で見つめている。 　昨夜は薄暗かったけど、明るいところで見ると、やっぱりすごい良い体格をしている。 　肌は褐色で、服は着ているけど服っていうより布地に近いかな……それをかろうじて下半身に身に付けているような感じ。 　上半身は当たり前のように露出していて、胸も乳首も腹筋だって丸見え。 　確かにこれで外で実体化されても困るっていうくらい変態的だ。 　でも向かい合っているだけで圧倒されてしまいそうな圧があるから、そんなこと口が裂けても言えない。 　普段自宅ではあぐらをかくか、アニメを観ながら行儀が悪くも横になってスナック菓子を肴に缶ビール片手でそのまま寝落ち、なんてこともあるのに、彼の前では正座か土下座以外の選択肢がない気さえする。 　俺はなるべく彼の機嫌を損ねないようにと、ほとんど飲み込むように唐揚げと白飯を駆け込みながら、なんとなく無言も気まずいので夢魔と話すことにした。 「あの、俺……あなたのことずっと夢魔って呼ぶのも何なんで、名前考えたんですけど」 「名前だと？　まあよほど無礼な呼び方でなければ何でもよい。言ってみろ」 「ナイトメアの、メア……とかどうですか？」 「ナイトメア……俺様はかの悪夢を糧にしている悪趣味な悪魔とは違う。それにメアは雌馬という意味だ。そんなことも知らんのか」 「え……そうなんですか？　あ、いやでも、性別はこの際置いといて……俺は馬って賢くて凛々しくて好きですけど……。それに、ナイトだってほら、スペル違いで騎士の意味もあるじゃないですか。悪夢見せるなんて嫌がらせしてくる悪魔より、夜の騎士の方が断然格好良いと思う！」 　一介のサラリーマンの俺が中高生じゃあるまい、悪魔の種類とか名前の由来とか知る訳ないじゃないか。彼の常識で話されても困る。 　なんてそれっぽい理由を付けてみたけど、確かにそう言われてみればこの夢魔のアソコは馬並みだったな。 　いや、変な意味で考えた訳ではないけれど。