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第8話
夢魔はわずかに眉に皺を寄せて考えていたようだが、俺が目をキラキラとさせていたせいか、小さくため息を吐きながらも了承してくれた。
「……わかった。好きに呼べ」
「うわ、やったぁ! 言ってみるもんだなぁ! メアさん……メア!」
「はしゃぐな。それと、あまりにも気安く呼ぶな」
うっかり嬉しくなったが、睨まれるとやはり萎縮してしまう。
「……ねえメアさん。俺って、そんなに精力ある方……なんですかね。だってメアさんって夢魔なんでしょ? それが俺の前に現れるってことは……」
「うむ。近年にしては見たことがないくらいにな。だのにどうして貴様はまだ童貞なのだ? 金を払えば立派な男にしてくれる売女などいくらでもいるだろう」
売女って……女性のことをそんな風に。
もしやソープのこと? それともガッツリ犯罪の買春?
喋り方からして長く生きてはいそうだけど、何時代の男なんだこの夢魔は。
「それは…………その、ただ機会がなくて。俺、ずっと男子校だったからたぶん女子への理想が高すぎるんです。話すのもすっごい緊張しちゃって、変な空気になっちゃって……今さらそういうお店に行くのも、なんか気が引けるっていうか……」
「なるほど、だからその壁掛けの方を好むのか」
「ああ、そのタペストリーね……。そりゃあ、二次元は裏切りませんから」
「二次元……?」
「えっと……その壁掛け……みたいな絵の女の子に恋しちゃうっていうか。もうそれにしか興味ないっていうか」
「フン、それは嘘だな。何の行動も起こしていないのに勝手に生身の女に劣等感を抱き、逃げている……所詮貴様はただの臆病者に過ぎない」
「な、なんでメアさんにそこまで言われなくちゃいけないんですか! ……確かに、軽く女の子恐怖症的になってるとこはあるかもしれないですけど……性的趣向なんて人の勝手でしょう?」
「うむ。それはわかっている。だから俺様が琢朗をつまんでも問題あるまい?」
「それとこれとはっ……! つまむ……? 今日も、エロいことします……?」
「当たり前だろうが。その為にここに居る。ほら、さっさと飯を食って湯を浴びて来い」
飯を食った後は半ば無理やり風呂場へ連れて行かれて、しかも扉をあの巨体で塞がれてこれじゃあ監禁だ。
着替えとかいろいろ要求したけど、「これから性交するのに服は要らないだろう」だと。
反抗は……できなかった。できる訳がないだろう、その、物理的に。
あんまり調子乗ったら向こうは一応悪魔だ、何をされるかわからない。
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