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第14話

 俺、こんなんでも真面目に仕事して来てんのになぁ。  メアさんはとにかく俺とセックスできれば良いんだろうと思ったから、飯だって手っ取り早く外で食って来たのになぁ。  とてもじゃないが疲れを隠せず、俺は不機嫌にごちゃごちゃになったリビングを片付け始めた。  ちらっとメアさんを見やったけど、ベッドに寝転がっていて、なんか漫画……しかも一番好きな作家のエロ漫画読んでる!?  ああ、これは手伝ってくれる良心とかそういうのはないな……。  百七十センチの俺が寝るベッドなんだから、メアさんにはかなり窮屈だろうに。  あんまり気にならないんだろうか。  すごく几帳面という訳じゃないが、さすがにゴミ屋敷化するのはどうかとは思うので、ちゃんと片付けてはいる方だ。  巻数もバラバラになった本やDVDたちを一つの場所に集めて整理しながら、俺は聞く。 「……メアさんはどうして俺を選んだんですか」 「うむ?」 「俺は……俺はっ、男には興味ないです。確かにメアさんとするのは気持ち良かったけど……やっぱり俺は女が良いです! サキュバスが良かったです! なのになんでメアさんがうちに来たのか全く意味がわからない!」 「……俺様は貴様のことをずっと見ていたと言ったであろうが」 「だ、だから? 俺なんかをただ見てるなんて、いったい何の得が……」  ベッドから起き上がったメアさんがのそのそ歩いてくる。  やばい、殴られる!? 胸ぐらを掴まれたので、脊髄反射で顔を背けてしまう。  だが、次の拍子、向き合うように指先でクイッと顎を固定されて、唇になにか柔らかいものが当たった。  それがメアさんが俺にキスしているのだと気付いたのは、のろまな俺は数秒遅れてからだった。 「……俺様は貴様が良かったのだ。もちろん他に貴様を狙うサキュバスもいた。それでも俺様は貴様が……琢朗が」  顔を離したあのメアさんは、眉を下げ、目も伏し目がちになって、初めてどこか困ったような、憂い顔をした。

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