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集結ゴールデンウィーク①

 毎日璃央と過ごした楽しいゴールデンウィークはあっという間に最終日。でも今日は璃央と一緒じゃなくて、いつもの友達3人と遊んだ。朝から金子の家にお邪魔してライブの円盤見たり、ゲームしたり……璃央と付き合う前のいつもの休日の過ごし方。思えば、璃央に生活まるまる変えられたなあ……と浸ったり。  金子と酒井は夕方からバイトがあるらしく、そこそこの時間でお開きになった。もう少し遊べそうだから、前田と一緒にショッピングモールにきた。連休最終日の昼過ぎは意外に人が少なかった。 「和真なんか見たいもんある?」 「うーん……ゲーセンかな」 「いいじゃん。音ゲー対戦でも……」  言葉を途中で止めた前田が遠くを見つめた。視線に合わせて顔を向けると、こっちに手を振ってる人がいた。その人はだんだん俺たちめがけて近づいてくる。 「よーっす、前田!」  派手で元気良さそうな男が前田の名前を呼びながら駆けてきた。前田の知り合いか? いや、なんか見たことあるような……どこでだっけ…… 「おー! なんで俺らの地元にいんだよ、颯太!」  ん、颯太……颯太って……璃央の友達の人だ!?  東京に行って、璃央とあれこれあった時に前田たちと仲良くなったっていう……それに璃央がめるちゃんコスしてた時テレビ電話越しで話した人だ! 「友達と遊びに来ててさあ! ……お!」  颯太くんは俺の方を見て目を輝かせた。 「木山和真くんだ!」 「は、はい!?」 「すげえ偶然! 前に電話で話したの覚えてる? 俺、璃央がお熱の木山くんに直接会いたかったのに、璃央がお前は会うな、和真に構うなってうるさくて。あ、今日璃央は?一緒じゃないの?」  息つく間もないまま一方的に喋られ、握られた両手をブンブン振られる。テンションが……高い! 「えっと、今日は前田たちと遊んでて」 「そうなんだ。今は二人だけ?」 「だよ」  前田が返す。颯太くんはへえ、と笑顔を広げた。 「じゃあさ、俺たちとー……」  すると、いつの間にか颯太くんの隣に可愛い女の子がいて、腕をぎゅっと掴んだ。 「ちょっと颯太」 「沙羽」 「勝手にふらふらしないでよ」  彼女? 仲が良さそうだ。女の子は肩ぐらいのピンクアッシュの髪をふんわり巻いて前髪は姫カット。服とメイクは清楚系。どこかのお嬢様って言われてもおかしくないぐらい、めちゃくちゃ可愛い子。  その子が、俺の方をパッと見た。 「ん……? もしかして和真くん?」 「え、え!?」 「和真、こんな可愛い子と知り合いなん!?」  前田がすごい形相で俺を睨む。それは俺のセリフだ! 俺が覚えてないだけで、めっちゃイメチェンした昔の同級生とかだったりする!? でも俺のこと名前で呼ぶ女子なんていないよな……  頭を悩ませていると女の子は、ぽん、と手を叩く。 「あ、そういや前に喋った時と髪型変えてるからか。ボク、サーニャだよ! 本名は沙羽!」 「サーニャさん!?」 「沙羽は俺の高校からの友達なんだ」 「あ、てっきり彼女かと……」 「颯太なんかこっちから願い下げだよ。趣味は合うけどガサツだし気遣いが足りない」 「ひでーな、沙羽は」  あの時、璃央のコスプレをやってくれた、有名レイヤーのサーニャさんが今、目の前に!? 確かに前テレビ電話越しに話した時は違う髪型だったような……私生活もオシャレで可愛いなんて、すごい……! 「サーニャさん、近くで見ても可愛い……! あっ、璃央のことどうもありがとうございました!」 「いやいや、璃央くんほんとメイク甲斐ありすぎたよ~こっちこそ楽しかった、ありがとう!」  うわ~っ、いい人だし笑顔も素敵だ。こんなとこ璃央に見られたら璃央が嫉妬でキレ散らかすだろうけど、可愛い人は可愛いから仕方ない。でも璃央がいちばんだから許してくれ……!  見惚れていると前田が俺の服の裾を引っ張り、「サーニャって?」とこっそり耳打ちしてきた。そうか、前田はあんまりコスプレ見ないから知らないのか。 「ネットで有名なレイヤーさん。クオ高いって評判だよ。そのアカウントがこちら」  実は璃央のコス騒動のとき、サーニャさんをフォローしておいた。前田に画面を見せると、スマホを奪われ夢中でスクロールしている。 「す、すげえ……可愛い! こんなん二次元じゃん!?」 「ほんと? ありがとー!」 「あっ、このアニメ、サーニャさんも好きなんですか?」 「うん! このキャラと衣装が好きでー……」  なんか盛り上がってる……まあ楽しそうだからいいか。  その時、颯太くんとサーニャさんの背後に、ぬっ……と大きな影が現れた。  この人…… 「二人とも、こんなところにいた。いつの間にか消えてんだから……あれっ、木山じゃん、偶然だな。久しぶり」  笑顔で笑いかけてきたのは、|水戸大晴《みとたいせい》だ!  中学の頃から璃央と仲が良い友達、つまり1軍の者。悪い感じはしないけど、ヒラヒラと掴みどころがない印象がある。平均身長より頭ひとつ分くらい背が高くて、確かバレー部だったはず。クラス同じになったことは何回かあるけど、会話は必要最低限しかしたことない。陽キャ怖いし。あっちも俺のことなんてどうも思ってないだろうし…… 「ひ、久しぶり……」 「璃央は? 一緒じゃないの?」 「今日は友達と遊んでて」 「そうなんだ。まあそんなビビんないで」  ビビってんの誤魔化せてなかった。璃央のこと聞かれたってことは、俺と璃央のこと知ってんのかな……それにこの三人で遊んでたみたいだけど……颯太くんとサーニャさんはオタクで、水戸は違うよな。どういう繋がりなんだろう。  俺の疑問を察したのか、水戸が説明してくれる。 「俺と颯太は同じ大学で、沙羽ちゃんは別の大学。この前璃央をコスプレさせたときに颯太に紹介してもらったんだ。今日は二人に地元案内してるとこ」 「へえ……」  そういや璃央がコスしてた時、このメンバーだったな……(璃央が可愛すぎてツッコむ暇なかった) 「ま、中学高校という小さなコミュニティを出たんだから、改めて俺とも仲良くしてほしいな」  爽やかな笑顔だ。一方の俺は繕った笑顔で手を握り返す。内心全然ビビってるし、璃央以外の陽キャへの苦手意識はそのままだけど……悪い人じゃなさそうだしな。 「お、なんかそっちもいい感じじゃん。せっかく揃ったしお茶でもしに行こっか!」  と、颯太くんが提案した。それに合わせて前田とサーニャさんも盛り上がる。 「いいな、行こう行こう!」 「おー! オタトークしよー!」  ちょっと待て、それって水戸と一緒に……!? 丸2年ぶりに会う微妙な知り合いと飯って気まずいんだけど!? 「俺たちも行こ」  この雰囲気を壊してひとりだけ帰る選択はできず、「おう……」と力なく答えて、重い気分を引きずりながら四人の後をついていった。

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