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重いとか軽いとか②

「千坂はその子とどこで出会ったの?」 「路地にあるところのバーだよ。お前は行ったことないだろ?」 「うん……」 「お前が抵抗なければ行ってみるか?新境地開けるかもしれないぞ?」  千坂は大学生の頃から恋愛対象が同性であることは知っている。在学中も全くその手のことには抵抗がなかった徹史に、何度惚気話を聞かされたことか……。そんな千坂が行きつけるバーなのだから同じ恋愛志向が集まる場所には変わりないのだろう。  ニヤニヤと頬を緩ませる千坂と自分の手元を交互に見遣る。同性を好恋愛対象として見たことがないから分からない。行ったところで結局自分は異性愛者だと分かれば冷やかしになるような気がして素直に頷けなかった。 「そんなところに俺が行って大丈夫なの?俺、同性を好きになったことないから確信がないし、単なる冷やかしにならない?」 「ならねぇよ。強いていうなら、獣の餌食になるかもな」  千坂が両手をガオっと顔の横に出して、徹史に向かって食らいつくすような動作をする。その行動から獣と聞いて真っ先に出てきたのは百獣の王であるライオンだった。徹史の脳裏にはよく映画なんかで見る、裏賭博なんかで、借金を抱えた男が一発大逆転を狙ってコロシアムで肉食獣と戦い、それを高みの見物で貴族たちが賭け競っている光景が浮かんできた。 「獣⁉俺、誰かに食われんの?」  そんな俺の一驚した反応から察したのか「そっちの意味じゃねーよ。お前のケツの穴だよ」と補足されたことで、全てを理解した。  いわゆる処女を奪われるってやつだろうか…。  徹史は一連を想像しては身震いして、自然と穴を窄めようと臀部に力が入っていた。 「まぁ、でも。お前みたいな堅物は一回くらい遊んでもらった方が、その凝り固まった脳みそもほぐれるかもな。踏み込んでみるのもありだと思うぜ?」  千坂は鼻で笑いながら洋服の胸ポケットからお店の名刺を渡してくる。『|papillon《パピヨン》』と書かれた名刺には住所と簡易的な地図が示されていた。 「千坂は一緒に着いて来てくれないの?」 「行くわけないだろ。あんな可愛い彼氏いんのに行く必要ねーもん」  確かに恋人持ちが出会いの場であるバーに行くなんて禁忌ではあるが、世の中には二方向でつまみ食いをしているがいることも事実である。 けれど、千坂はもっと遊べなんて言っているものの、あっちこっちに手を出してるような話は聞いたことはないので意外と真面目なのだろう。  そんな千坂に焚きつけられて、恋人が家で待っているからと早々にお開きになった彼と別れて、例のお店に向かってみることにした。

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