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重いとか軽いとか⑥

「君さあ、最近よく来てるよね。俺のこと、そこでずっと見てるでしょ?」  櫂という男は流し目で此方を見てくると、先ほどまで徹史が座っていた座席を指してきた。あまり露骨になりすぎないように、目が合いそうになったら逸らして相手に悟られないようにしてきたが、バレてしまっていたらしい。 「え、はい。すみません。理人さんのことがずっと気になってて……」  徹史は俯くとテーブルの上の右拳を強く握った。適当にはぐらかすことも出来たかもしれないが好きな人を前に嘘を吐きたくはなく正直に話す。  名前呼びを許してもらい、好調な出だしだと思っていたが、希望の光は閉ざされてしまったかもしれない。 毎日お店に来ては理人さんを見つめているだけなんてストーカー紛いなことをされていると分かったら、気持ち悪いと思われて当然だ。  これはもう叶うことのない恋になるかもしれない。  徹史は半ば諦めて、自分の行いに気落ちをしていると右手の拳が細くて柔らかい指先に包まれた。何度目を凝らしてみても理人さんの手が自分の手に重なっている事実は変わらず、心拍数が上がる。 左手で頬杖をついて微笑んでくる彼は幻なのではないかと思うほど、徹史には神々しかった。 「じゃあさ、これからホテル行く?」 「え……?」 「相手してやってもいいよ」  ホテル……相手してやる?  ホテルに誘われたということは、勿論その先にすることと言えばひとつしか思い浮かばない。まさか、理人さんも同じ気持ちだったのだろうか。少なからず俺のことをいいなって思ってくれていて……。  じゃなければそんなこと言わないだろうし……。  こんな魅力的な人の体を触ってもいいのだろうか。首筋の白い肌の先に微かな期待で胸が高まる。

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