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触れられない心②

同性同士は異性相手と手順は同じなのだろうか。 千坂曰く、お尻の穴がどうのっと言っていたけど具体的なところまでは分からない。でも理人さんはきっと慣れているのだろう。 だからと言って相手に任せきりのままではいかないだろうし、漸く近づくことができたのにセックスが下手だからと幻滅されたくなかった。  そんなことを考えながらシャワーを浴びては、バスローブを羽織り、浴室から出てくると入れ違いで煙草を終えた理人さんが入って行った。  理人さんが浴室に居る間、徹史は終始落ち着いていられずソファとベッドを行き来する。 ソファに居て出迎えるべきか、すでにベッドで待機しているべきか。後者だと明らかにやる気満々な気がして理人さんに引かれてしまわないだろうかと悩んでいたが、向こうから誘ってきたのだのだからあまり考え過ぎも良くないような気がしてベッドの縁に腰を掛けて座って待っていることにした。  暫くして理人さんもバスローブ姿で出てくると、此方へ近づいてきたかと思えば徹史の膝の上に跨ってきて狼狽える。 「まっ……。理人さん⁉」 「回りくどいのとか嫌いだからさっさとヤろうぜ」    咄嗟に理人さんの腰を支えた右手が震える。上から見下ろして悪戯に笑みを浮かべる彼の表情に胸を弾ませながら、これから誘われるであろう快感に興奮が止まらない。 「んっ」 徹史の性的スイッチを目覚めさせるような彼からのキス。初めての彼の唇の感触。何度か触れるようなキスを繰り返したことによって、緊張が欲望に変わるまで時間は掛からなかった。  この人のもっと奥に触れたい……。 「んっ……」  理人さんの唇を割ると中で舌先が触れ合う。 お互いの舌先を擦り合わせるようなキスは心地が良かったがやはり理人さんはキス一つとっても自分よりは上手で、次第に彼のペースにのまれていく。 リードすると言うより、追いつくのに夢中でどうにか主導を得ようとした舌先で追い回していると、唇が離された。 「君、もしかして初めて?」   眉間に皺を寄せて怪訝そうな顔で問われる。 「あ、えっと……。同性は初めてです」  あの場は同性が恋愛対象である人が集う場所。そんな場所に異性愛の自分が行くのは場違いだし、この場でそう答えるということは冷やかしに来ていたと思われかねない。しかし嘘を吐くことも出来ずに俯きがちに正直に答えた。 「へぇー?ノンケか。あんなとこにノンケが来ることもあんだな」    理人さんは眉間に皺を寄せるのをやめると、したり顔で徹史の左頬に右手を添えてきた。理人さんが触れてきた途端に体中の熱が帯びてくる。 「どういう経由でこっちに来たか知らないけど、俺の方が女よりいいってくらい気持ちよくさせてやるよ」  頬から顎先へと指先でなぞられて、背筋からゾクゾクっとせり上がってくるのを感じる。バスローブの紐を解き、布地を脱ぎ去った体はとても綺麗で思わず触りたくなるほどだった。

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