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「水は必要だよね。行くよ、僕。その間に羅羽須さんに痛み止めをお願い」  瀬那は立ち上がって空になった水入れ四本を腰に下げた。羅羽須の顔を見つめてから、六花の方を振り向いて近づく。 「六花、今から森の沢まで連れて行ってくれるかな? 羅羽須さんのために。僕が背中に乗って手綱を持つけど、許してもらえる?」  六花の鼻面をやさしく撫でながら静かに話す。ふんふん、と鼻息を荒くして瀬那の顔に鼻の先を近づけてくる。六花の目を見ると、わかっているよ、と言ってくれているように見えた。 「……ありがとう」  瀬那は礼を言って六花の背に跨がった。緊張していたが、六花はわかっているようで、沢のある森の方へと向きを変えて早足で歩きだす。 「瀬那! 気をつけろよ!」  絵理久の声を背中で聞きながら、瀬那は六花と共に森の沢を目指すのだった。  六花は本当に頭がいい馬だった。手綱は瀬那が握っているが、まるでさっきの説明を理解していたかのように沢まで真っ直ぐ向かってくれたのだ。そこで水入れを満水にして、再び六花に跨がる。なんら問題なく水の入手をして羅羽須たちの元に戻ってきた。 「瀬那! 早かったな。痛み止めで羅羽須様はかなり楽になったみたいだぜ」 「うん、早いのは六花のおかげだよ。まるで人の言葉がわかるみたいに沢まで一直線だった」 「さすが六花だね」  絵海琉が六花の鼻面を撫でながら褒めている。それがわかるかのように六花が小さく鼻を鳴らした。  瀬那が汲んできた水で布を冷やし、羅羽須の痣の熱を取る。何度もそうやって看病し、痛み止めも効いてきたのか、ようやく羅羽須の痛みが落ち着いたようだった。 (意識はないけど、さっきよりは落ち着いたのかな。苦痛に歪む顔がかなり穏やかだ)  しかしすぐに動かすのは無理そうで、最後の材料を一緒に取りに行くのは難しいだろう。 「大鬼の角の粉末、僕が一人で行ってくるよ」 「は? 瀬那、なに言ってるんだよ。それが一番の難関なんだぞ? 羅羽須様がいなくちゃ絶対に無理だ」

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