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瀬那は顔色の悪い羅羽須の顔を見る。意識はまだ戻らない。こんな状態で一緒に行けるはずがなかった。しかし最後の大仕事は絵理久の言う通り難関だ。自分だけでどうにかできる自信はなかった。
「でも、ここまでずっとみんなを頼ってきて、僕は一人でなにもできていない。この材料集めは僕がやると言い出したんだから、ひとつくらいは一人でやり遂げたいんだ」
瀬那は本心でそう思っていた。現世の頃からは考えられない発言だなと、自分自身が一番驚いている。だがすべて本心で本音だ。
「瀬那がそこまで言うなら、やってみたらいいけど。でも硬殻山の場所とかわからねーだろ? どっちにしたって案内が必要だと思うけど」
絵海琉がすくっと立ち上がり身支度を始める。
「絵理久くん?」
「俺が一緒に行くって言ってんの。絵海琉には羅羽須様を見ててもらうから」
「絵理久はすぐに格好つけるんだから」
ぼそっと絵海琉が呟くと、うるさいな、と絵理久が照れ隠しの悪態をつく。しかし初めて行く場所だから、やはり道案内は必要だ。絵理久に来てもらえればこれほど心強いことはない。
「じゃあ、道案内だけお願いするよ。大鬼には僕が話をつけるから、それでいい?」
「巨鬼獄がそう簡単に説得されるとも思わないけどなー」
絵理久が不安げにそう言いながら出発の準備を着々と進めていた。とにかく絵理久には道案内だけをお願いして、あとは瀬那が引き受ければいい。どこまでできるかわからないが、今は瀬那が頑張るしかない。
「よし、行こう」
準備が整い、瀬那と絵理久は六花の背に二人で跨がった。獄楽畑から北西へ進み、岩でできた山、硬殻山に向かう。
「絵海琉くん、羅羽須さんをよろしく頼むよ」
「わかってる。瀬那さんも絵理久も気をつけていってね」
出発前に羅羽須の眠る顔を目に焼きつけ、二人を乗せた六花は硬殻山を目指して走り出した。
足元がやわらかい土から硬い地面に変わり、かつかつと小気味よくリズムを刻む六花の足音が聞こえ始めた。周囲の風景もガラッと変わっている。少し前までどこまでも続く花畑だったはずが、周りは岩山や枯れた木々が目につくようになっていた。
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