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3.オナホで精子を出せ!

 そして金曜日、資料室であいつが俺に見せた箱に、俺は完全に引いてしまった。 「な…なんでオナホなんか買ったんだよ」  しかも三箱も。そしてそれをいつものように真顔で見せる。 「いつもと違う快感で精子の状態が変わるとすれば、それも大発見なんだ。だから試してほしい。メイドにフェラチオ好きなお前には、これはどうかな」  純也が勧めたのは、パッケージに萌え絵のメイドさんが描かれた『エッチなメイド萌絵(もえ)のお口』ってやつ。 「入り口に歯のような物がついていて、甘噛み気分を味わえるらしい」 「へ、へえ…」  としか言いようがない。いったいどんな顔で、こんなアダルトグッズを選んでるのだろうか。 「ほかには『ミチルのカズノコ天井』、これは中のザラザラが気持ちいいらしい。こっちの『処女喪失』は、かなりキツいらしいぞ」 「別に…メイドの口でいいや」  正直、歯っていうのは興味がある。童貞な俺には、カズノコ天井ってのも処女を奪うのも魅力的だが。 「けど、何で三つも用意したんだよ」  純也はスチール棚にほかの二箱を乗せる。せめて見えない所にしまえよ。 「俺と智直、もう一つは同じ遺伝子工学科のやつだ」 「ほかにもサンプル取ってるやつがいたのか?」 「ああ、昨日頼んだら取らせてくれた。そいつにも今度、オナホを使ってしてもらう」  …びっくりだ。そいつもここで抜いたのか。 「それともう一つ、ピンクローターも買ってみた。オナホの中に入れてみるといい。すべりがよくなるよう、ローションも買ってある」  だんだん、危ない世界の扉を開いていく感じがした。純也はローターのスイッチを入れ、動作確認した後、そいつを俺に渡す。  純也は隣の研究室へのドアを開け、俺の方を振り返った。 「使い終わったら、俺がきれいに洗って消毒もしておくからな。箱にお前の名前を書いて、そこのスチール棚に保管しておく」 「やめてー! そんな公開処刑!」  まったく、こいつにはデリカシーとか羞恥心とかは無いのか。  さて、今度は何で抜くかな…って、結構ワクワクしている俺って恥ずかしいな。  パンツを下ろし、ソファーに腰かけ、よさそうな動画を探そうとしたら、ブックマークに“鏑木厳選動画”っていうフォルダを見つけた。  あいつ、真面目くさった顔して、本性ではどんなエロいのが好みなんだろう。そのフォルダを覗いてみた。  さっそくトップにあったやつをクリックすると、セーラー服にツインテールの女の子が、オナニーをする動画。  やけにリアルなディルドを口にくわえ、唾液だらけにしてからスカートをめくり、パンツの上からジリジリ当てる。これでも結構、下半身にムクムクと刺激を与えてくれる。  女の子はパンツを下ろし、ディルドを突っこんだ。喘ぎ声がすげぇ。アニメ声だ。  すっかり大きくなったところでローションを塗り、萌絵ちゃんのお口をかぶせてみた。見た目はなんとなく出っ歯みたいで、萌絵ちゃんって感じはしないんだが、白いシリコン製の歯が亀頭やくびれ、サオを刺激する。それで抜き差しすると、萌絵ちゃんの歯はいい感じに愛撫してくれる。  そうだ、二番目の動画はどうだろう。  …これはっ! レズものだ!  女の子同士のおっぱいの揉み合いも、なんだか可愛いもんだな。互いのアソコをクンニ。上も下もチンコ、みたいな二人用ディルドを互いに挿入して、松葉くずしみたいな体位で擬似セックス。  これ、めちゃくちゃくるじゃん!  いい感じに体も興奮してきたところで、ローターを作動させ、萌絵ちゃんのお口に突っこんでみた。  すごい! この振動! エッチなメイドさんは、めちゃくちゃ淫乱なセクサロイドにトランスフォームした。  これはヤバすぎる。ヌメヌメした萌絵ちゃんのエッチなお口、萌絵ちゃんの歯、それにピンクローター。この三種の神器は、俺を天国へと連れて行く。  名残惜しいが萌絵ちゃんをさっと外し、試験管を鈴口に当てる。いつもより勢いがいいのは、気のせいだろうか。  片付けを終え、研究室へのドアを開けた。毎回、この瞬間は恥ずかしい…。 「どうだった? 手でするときとの違いは」  なんていきなり純也が言うから、俺は返事に困る。 「まあ…なんというか…自分の手とは段違いだな」  純也は俺から試験管を受け取ると、事務的にシールを貼る。 「やはり、快感の違いだけで“幸せ”は感じられないか?」 「幸せとかどうとかは別に…」  何、恥ずかしいこと聞くんだよ。教授が同じ部屋にいるのに。  俺をじっと見下ろしていた純也の眉が下がった。 「言いづらいか。…悪かったな」  俺は眉間にしわが寄って、よっぽど不機嫌そうな顔をしていたらしい。純也が困ったふうに謝る。 「あ、いや、その…ただ、どう表現したらいいか」  謝られては、俺の方こそ困る。 「俺も今度、オナホを使ってみる。それでお前に感想を教えるから、それを共感できるかどうか、でいいから教えてくれ」  結局はオナホの感想を教えるハメになった。日時は来週月曜日の昼休み、場所は学食で。 「土曜日に『処女喪失』を使ってみたんだが」  純也がカツ丼を食べながら普通に世間話でもするみたいにそう言うもんだから、俺はまたハンバーグが喉につかえそうになった。  水を飲んで落ち着いてから、感想を聞いてみた。 「いきなり何だよ…で、どうだった?」 「説明書どおり、かなりキツい。ローションがないと、上下に擦るのに力がいるな」  と言って純也は右手を、チンコを扱く形にして上下させる。 「そんな手つきすんな!」  学食には女子もいるんだぞ! 「幸せという感覚ではなく、自分の手とはまた違った感触だから、性的欲求のために新たな刺激を得られる、というだけだな。No.3との比較対象としてはいいデータになるかもしれない」 「俺も…そうだな、彼女がいねーからわかんないけど、本当に相手が好きでヤッてるときとは違うと思う。たまったからムラムラして…みたいな」 「No.2の相手の手によるもの、と比較しても差が出るかもしれないな。智直も同じ感覚だったか。話してくれてありがとう」  こんな話してると、ちょうど一週間前に互いのモノを手コキした記憶が蘇ってしまう。あのときの、純也の感じている顔――そういや俺は、どんな顔をしてただろうか。純也は見たのかな、俺のアホ面なアヘ顔を。 「そういえばさ、お前の言葉を借りるなら…No.3のサンプル? それはどこで取るんだ? まさか、あの資料室で…」 「いや、それでもいいんだが、あの部屋だと雰囲気が出ないだろうから、小型の持ち運びができる冷却装置を貸して、取ってもらっている」  できるだけリラックスできるように、自宅とか気分が盛り上がりそうなラブホで取ってもらうらしい。 「智直」  急に呼ばれて、今度は味噌汁を吹き出しそうになった。 「今日はNo.2のサンプルを取りたいんだが、いいか?」  頭の中を電気が走ったような感覚がした。一気に顔が熱くなる。 「な…な…No.2っていうと…」  言葉が出ない。汗しか出ない。 「俺たちが互いの手で」  何でそう、純也は平気なんだよ。 「あ、あんな恥ずかしいとこ、またお前に見せんのかよ」 「俺も恥ずかしい。お互い様だ」 「けど…」  決心がつかない俺に、純也が“そうだ”と身を乗り出した。 「じゃあ、教授に小型の冷却装置を借りて、一人ずつ出すっていうのはどうだ」 「どういうこと?」 「まず、智直が俺のを扱く。そして採取して冷却させる。次に俺が智直のを扱く。先に俺が恥ずかしいところを見せたら、お前も気が楽だろう。冷却装置があれば、採取から十分以上たっても問題ない」  なるほど…って、納得してる場合じゃない! 「俺、やっぱそんな恥ずかしいこと――」 「終わってから、焼き肉おごってやる」  俺は二つ返事で引き受けてしまった。

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