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4.素股で精子を出せ!

 細菌兵器とかを運ぶやつ、っていうのかな。映画にでも出てきそうな、物々しい立方体にゴチャゴチャと金具や取っ手がついた小型の冷却装置を置くと、純也はパソコンをつけた。 「なあ、“鏑木厳選動画”っていうフォルダ、あれはお前の趣味なのか?」 「いや、智直が好みそうなのを集めておいた」  何で俺主体なんだよ。 「上の二つは見た。後はどんなのが入ってるんだ?」  純也がフォルダを開く。 「メイドの3P、風呂でオナニー、青姦、レイプ、いろいろあるぞ。顔が可愛くてロリータ系のを選りすぐっておいた」 「で、純也は何が好みなんだよ」 「俺は何でもいい」 「よーし、じゃあ俺が選んでやる。…そうだなあ…この洋物どうだ?」  純也はうなずくと、いきなり下半身を出した。 「うわっ、いきなり脱ぐんじゃねえ!」 「じゃあ、断ってからならいいのか? これから智直にしてもらうから、いまから脱ぐぞ」  …そうだった…まずは俺がしてやらなければならない。 「わ…わかったよ…とりあえず、まずはお前が自分で大きくしろ」  ソファーに座った純也が、さっそくコキ始めた。すぐに半勃ちになり、息が荒くなる。画面では巨乳の金髪美人が、外人男性にフェラしてる。  俺が隣に座ると、純也はいきなり手を握ってきた。 「後はお前が…擦ってくれ」  恥ずかしがっていても終わらない。それにしても、こいつには抵抗というものがないのだろうか。俺が意識しすぎているのかな。  言われるままにペニスを上下に擦ると、すっかり硬くなって血管まで浮き出ている。  パソコン画面はファックシーン。後背位で巨乳をゆさゆさ揺らし、“Oh! Oh!”なんて金髪美人が喘いでいる。  純也をチラリと見ると、目元を手で覆って、画面を見ていない。オカズなしで、俺の手だけでイケるっていうのか?  画面が、金髪美人が巨乳を揉みながらの騎上位に変わると、純也の息がかなり荒くなってきた。 「うっ…くっ」 「イキそうなのか?」  そう尋ねると、純也はうなずいた。俺は試験管を用意し、鈴口に当てた。四回ほど精液を飛ばし、純也はぐったりと背もたれに体を預けた。 「あの、これ…」  コルクで蓋をした試験管を、純也に渡す。俺は冷却装置の使い方がわからない。試験管を受け取った純也はいつもと変わりない表情で、事務的にシールを貼って、冷却装置を開ける。液体窒素を使っているというその装置から、玉手箱よろしく白い蒸気がモクモクと出ている。手際よく内部に試験管をセットすると、蓋を閉めた。 「よし、お前の番だな」 「そ、その前に、純也が“前”を何とかしろっ」  ひと仕事終えて萎えかけているイチモツを出したままだ。純也はパンツだけを上げて、パソコン画面を操作する。 「風呂でオナニーとかどうだ? この間のメイドに雰囲気が似てるぞ」  顔なんて一定以上クリアしてたら何でもいいんだけど。 「別に何でもいい」  パソコンの真正面に座ろうとすると、純也が先に腰かけ、自分の膝を指差す。 「膝に座れ」 「何でそんな恥ずかしいことするんだよっ」 「俺の顔が見えない方が、恥ずかしくないだろう」  そりゃまあ、そうかもしれない。純也にうまく言いくるめられた形で、純也の膝に座った。友達になって十五年ぐらいたつだろうが、膝に座るなんて初めてだ。 「やめっ…何すんだ!」  純也が俺のベルトを外し、ジッパーを下ろす。逃げようと腰を浮かせると、下着とジーンズを膝まで下ろされた。 「ほら、映像に集中しろ」  集中ったって…。幼なじみの膝で下半身丸出しとか、どうやって集中すればいいのか。しかも、擦る前から半勃ちっていうのが恥ずかしい…。  シャワーを浴びながら、ディルドをはめてアンアン喘ぐ女の子の動画。男の体は正直なもので、裸の女の子がいればアソコは元気に育つ。硬くなったペニスを、純也に握られた。 「うっ…!」  純也は手にローションをつけている。ぬめりが気持ちいい。ただ機械的に擦るんじゃなく、亀頭を優しく撫で、轆轤で粘土に命を吹きこむ陶芸家みたいに、繊細な手つきで触れてくれる。  女の子はローターで、クリトリスの辺りを刺激する。はっきり言って、画面に集中できない。純也の手つきがすご過ぎて…! 「あはっ…」  服の下から侵入した手は、俺の乳首をいじる。軽くつまんではひねり、指先で転がす。硬くなって敏感になった乳首は、少しの愛撫でも感じてしまう。何もそこまで触らなくても…。 「や…あ…」  やめろ、と言おうとしても、うまく言葉にできない。抗議するには目で訴えるしかないのか。首を回して後ろを向くと、純也の唇が重なってきた。  逃げようとしても顎をとらえられ、抗議の声を上げようと唇を開けると、舌が入ってきた。純也の舌は震える俺の舌に絡み、いやらしく口内を這いまわる。初めてのキスが純也となんて…!  そんなショックよりも、俺の脳内はキスの気持ちよさに支配されていた。 「んっ…は」  いつしか、俺の方からも舌を絡めていた。もう、パソコンなんて見ていない。耳からは女の子の喘ぎ声が聞こえるけど、そんなのはもう興奮の対象ではない。停電が起きてパソコンが消えても、俺はこのままイケるだろう、そんな気がしてきた。キスって、こんなに気持ちいいんだ。  俺のケツの割れ目に、あいつのペニスが当たる。パンツ越しなんだが、勃起しててヒクヒク動く様子がダイレクトに伝わる。それが妙にエロティックで、キスで興奮したのもあって、俺は尻に純也のペニスを押しつける。 「智直…腰、動かしていいか?」 「うん…」  もう、好きにしろよ。この熱い体をおさめるには、気持ちいいことを何でもするしかない。  そのまま擦るのかと思ったら、純也はパンツを下ろし、ローションをペニスに塗りつけた。何でローションまで机に置いてあるんだよ。 「ちょっ、待てっ。何する気だっ」 「安心しろ。挿入はしない」  純也が俺の腰を抱え、尻の割れ目にペニスを押しつけ、前後に揺さぶる。タマを亀頭でつつかれる。このいやらしい行為は、さらに俺を興奮させる。気がつけば、俺の方から体をひねらせ、純也にキスをしていた。  むさぼり合う唇からは、唾液が漏れそうになる。それを思い切り吸い取り、また深く唇を重ねる。  尻の間からは、ヌチッヌチッといやらしい音が響く。もうその音だけでもイキそうになる。  今さらのように思い出したんだが、これは研究用のサンプルを取るためにしているんだ。キスと素股に夢中になりすぎて、危うく射精してしまうところだった。 「純也っ…試験管」  純也が素早く試験管を手にし、俺のペニスを握って精液をしぼり取った。呼吸を整えてパソコン画面を見ると、動画はとっくに終わっていた。  純也は試験管にシールを貼り、冷却装置に入れるが、勃起したまんまだ。全体がローションでテカッてる。 「なあ純也…それ、どうすんだよ。勃ったままだとマズイだろ。処理しとくか?」 「そうだな」  と、いきなり背後からタックルされた。俺はティッシュでお掃除中で、パンツもはいていない状態で、ソファーの上に四つん這いになる。 「うわっ、タンマ、やめろ!」  俺はただ、自分の手で抜いておけ、と言いたかったんだが。  後ろから犯されるような形で、純也が俺の耳元でささやく。 「だから、挿入はしないって言ってるだろ」  純也はまた、バックから素股をした。俺の尻とタマは、そんなに気持ちいいんだろうか。これ、見ようによっては、入ってるみたいに見えるんじゃあ…。  何度か腰を動かしているうちに、ティッシュを何枚も引っ張り出す音がした。純也が亀頭をティッシュで押さえ、俺の背中に覆いかぶさって荒い息を吐く。  …やめてくれ、そんな抱きしめるみたいな仕草。また、勃起してしまいそうで。 「悪かったな」  少し赤らんだ顔で、純也が俺の頭を乱暴に撫でる。 「わ、悪いって何が?」  眼鏡のブリッジを指先で押し上げると、いつもの表情に戻っていた。 「お前のファーストキスを奪った」 「いや、それはお前も初めてだろうけど…。そういや何で、その…、俺にキスしたんだよ」  純也はそれには答えてくれなかった。いつもと変わらない真顔で片付けをすませる。 「後で焼き肉屋に連れて行ってやるな」  と、ドアを開ける純也の顔を、俺はもう見られなかった。  結局、焼き肉を食いに行くのもパスした。

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