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第2話 目の保養

「湯人くん、お疲れ様。ところでにょう、さいきん見慣れにゃい子が来るでにょう、あにょー子は湯人くんのおともだちにゃのかねえ」 「マルさん、いったい何のこと」  マルさんは亡くなった祖父の従妹(いとこ)で、暇があるとうちの温泉を手伝ってくれるお婆ちゃんだ。もう八十も過ぎているんだけれど、本人は動いていた方がいいと言うし、うちの父ちゃんも身体が無理になるまではいてくれていいと言っている。  今は入口の端で、彼女の家で取れた野菜や取って来た山菜を販売している。  俺は、そんなマルさんの言う内容を薄々気づきながらも、知らないふりをして聞いた。  マルさんの言っているのは、たぶんあの人のことだと思うんだ……。 「さいきんよう来る若い子にょーことにょ。毎日来る若い子にゃんて、ここらにはめったにいにゃいでにょ。だから、湯人くんにょおともだちかと思ったんだけんにょ……」  ちなみにマルさんの言葉遣いは、若い頃に名古屋あたりに行っていたとかその他の地方にもいたことがあるとか、それに加齢が加わって、何とも独特の言葉遣いとなっている。  俺は目をしょぼしょぼさせているマルさんに言う。 「ううん、俺の友達じゃないよ。俺も全く知らない、人」 「そぉ?」  俺がマルさんと話している折に、ちょうど入口の暖簾(のれん)が揺れて、引き戸がカラカラと開いた。 「ほら、噂をすればだにょ」 「いらっしゃいませ……っ!」  相槌を打つように答えたマルさんの横で、俺はその入って来た人に挨拶をした。  背は高い。マルさんの言うように、若い人だ。俺と同じくらいか、もう少し上の齢ごろじゃないかな。  大体カジュアルにTシャツで来るんだけど、黒髪をうなじより上に整えているからか、大人っぽくて爽やか。  暖簾をかき分けて見えた顔は、いつも表情を崩さなくて、クールな印象を受ける人だ。  

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