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第6話 ケンケンかあ

 そうこうして御剣さんとお友達になれた……のはいいんだけど、御剣さんには期日がある。  仕事が終わればこの土地を離れる。ただの旅行者なのだから。   (いつ帰るんだろう……)  俺は仕事の合間にそんなことを考える。ま、仕方ないんだけどさ。  人には人の生活ってものがあるし。  俺もこの地を離れる気はない。    不思議なことに、俺は御剣さんと出会ってからこの仕事がもっと好きになったような気がする。御剣さんがこの温泉を好きって言ってくれたことが嬉しかったのだ。  御剣さんの言う通り、確かに空いている。豪華でもないし儲かってもない。それでも御剣さんのように喜んでくれる人がいる。  その人たちのために、この温泉をもっといい温泉に出来たら……そんなことを考え始めたのって、スゴくないか? (御剣さんのおかげだよ)  御剣さんは小さい会社だって謙遜してたけど、御剣さんの、好きな仕事をしてるって感じがイイんだ。これが刺激を受けるってことなのかなあ。  例え一時の出会いだとしてもそれって凄い気がするんだ。  だから行ってしまう前にまだ御剣さんに会いたい。  それはいいんだけど……。  ガラッ。 「こんにちは、湯人くん」 「あっこんにちは。御剣さ……?」  御剣さんの後ろに、彼より小柄な男の人が一人。  男の人って言っても、俺と同じくらいの年齢に見えるけど。  少し茶味がかった髪がジャ〇系の雰囲気の、可愛い子……? 「へぇ、ここが先輩が毎日通っていた温泉かあ!」 「うっ……?」 「ごめんね湯人くん、今日は後輩を連れて来たんだ」 「ごめんねって何? ケンケン先輩お客を連れて来たんだもん、謝ることなくないっ?」 「ミド、頼むから静かにして」  ミドと呼ばれた後輩は頬をプンっと膨らませて御剣さんを見た。  っていうかケンケンって……。  御剣さんのことだよね。  俺は馴れ馴れしい後輩にどうも馴染めない。 「ど……どうもいらっしゃいませ」 「どうもー」  後輩は僕をチラと見ると男湯の方へ行った。そして、俺に何か言いたげな御剣さんも一緒に。  とは言っても、俺たちに何か喋る用事は取り立ててないし。  とゆうか。そうだよね。  二人は一緒に湯に浸かるんだよね? 「…………」  男同士だし当たり前だけど。何だか俺は腹が立っている。  何でなんだろう。

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