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開幕 5

 ここにいる、自分一人で生きられない連中は、大抵が金持ちの家庭出身だ。  だが、彼のように身寄りも金もない人間も、少しは受け入れている。   慈善なのだろう。  男も相棒も、金持ちの連中にはさすがに手をだしたりはしない。  金持ちのえげつなさも十分知っているからだ。  自分達では施設にぶち込んで面倒をみないくせに、ささやかなことにも目くじらを立てて文句を言ってくるクレーマーどもだ。  モンスターばかりだ。  でもまあ、多少のセクハラを、そう、言い付けたり出来ないような、脳性麻痺で口の利けない、抵抗も出来ない少女の身体にちょっと触れたり、舐めたりはしても、ぶち込んだりはしない。  後はまぁ、ムカつく眼差しの少年を、言葉で嬲ったり、傷が付かないやり方で虐めて苦しむのを観ることはあるが、まぁ、犯したりはしない。  男も知能の低さや口が利けないからといって、彼らが意志を伝えられないなんて思うほど楽観的ではない。  最近の家族達は身体チェックにも余念がない。  痣や、表情にも注意している。  男は知ってる。  金を使って奴らは連中を家から追い出したくせに。  自分達が何もしない分、文句をつけることで罪悪感を誤魔化すのだ。  彼は違う。  彼は金持ちでもないし、誰もコイツを気にかけてはいない。  誰も彼についてはチェックしない。 彼は男と相棒が楽しむためにピッタリの存在だった。 誰も気にしないから。      

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