6 / 156
開幕 5
ここにいる、自分一人で生きられない連中は、大抵が金持ちの家庭出身だ。
だが、彼のように身寄りも金もない人間も、少しは受け入れている。
慈善なのだろう。
男も相棒も、金持ちの連中にはさすがに手をだしたりはしない。
金持ちのえげつなさも十分知っているからだ。
自分達では施設にぶち込んで面倒をみないくせに、ささやかなことにも目くじらを立てて文句を言ってくるクレーマーどもだ。
モンスターばかりだ。
でもまあ、多少のセクハラを、そう、言い付けたり出来ないような、脳性麻痺で口の利けない、抵抗も出来ない少女の身体にちょっと触れたり、舐めたりはしても、ぶち込んだりはしない。
後はまぁ、ムカつく眼差しの少年を、言葉で嬲ったり、傷が付かないやり方で虐めて苦しむのを観ることはあるが、まぁ、犯したりはしない。
男も知能の低さや口が利けないからといって、彼らが意志を伝えられないなんて思うほど楽観的ではない。
最近の家族達は身体チェックにも余念がない。
痣や、表情にも注意している。
男は知ってる。
金を使って奴らは連中を家から追い出したくせに。
自分達が何もしない分、文句をつけることで罪悪感を誤魔化すのだ。
彼は違う。
彼は金持ちでもないし、誰もコイツを気にかけてはいない。
誰も彼についてはチェックしない。
彼は男と相棒が楽しむためにピッタリの存在だった。
誰も気にしないから。
ともだちにシェアしよう!