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開幕 7

 最後に口を犯そうと、唇にねじ込ませようとした時、浴室の入り口の外に転がしておいた施設内用の携帯が鳴った。  相棒からだ。  相棒一人では手に余る事態が発生したのだ。  誰かが床に転げ落ちたか。  自分ではまともにおきあがることもできないくせに、ベッドから起き上がり、車椅子に乗ろうとしてそのまま床に倒れる奴がいるのだ。  ベッドに縛り付けてやれば面倒がないのに、人権の問題とかで、病院以外の施設では縛り付けることほ禁じられているのだ。  男は舌打ちした。  ブツブツいいながら、ズボンをひきあげる。    携帯を取る。  やはり相棒からで、やはり予想通りの内容だった。  相手はこの施設では数少ない、「話せる」利用者だ。  朝まで床に転がすわけにはいかないし、それなりに丁寧な応対が必要になる。     「すぐにいく」  溜息まじりに言った。  マットの上の彼に目を向ける。  しばらく置いてても大丈夫だろう。  残りは戻ってからだ。  「待ってろよ。オレのをたっぷり飲ませてやるからな」  ニヤニヤ笑った。  首をふり、嫌がるその喉を犯すのは、中でするのとは違う良さがあるのだ。  男は早く戻るために、早く出ていった。 浴室の床に彼を転がしたまま。  彼は呻く。   出て行った男を呪うために。  口を思い切りあけ、うなり声をあげる。  切られた舌は満足な声を出すことはない。  だけど、それでも男を呪うことを彼は止めない。  彼は呪う。  声は失っても、男を呪い、世界の全てを呪う。  彼は怒る。  彼は決して怒りと憎しみを諦めることはしない。  彼は無気力や諦めを知らない。  こんな身体にされる前も、その後も、同じような身体にされた他の人間が絶望で無気力に陥っても、彼は呪うことをやめない。  それかどんなに無力であったとしても。  自分を貪るモノ達に、彼の憎しみに満ちた目こそが、快楽以上に楽しい娯楽であったとしても。  呪うことはやめない。  止めたりなどしない。 絶対に。

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