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開幕 13
「気持ちいいか?」
彼は男の耳元で囁いた。
吐息で熱く、いやらしく。
男は喘ぐ。
歯のない口を開けて。
彼は穴を締め上げ、揺すってやった。
「うぐぅ」
声にならない呻きを男はあげる。
彼は勃起した男のモノを後しろの穴に受け入れ、男にまたがっていた。
「ほらっ出せよ・・・オレのここで出すのが好きなんだろ?」
彼は激しく腰を動かした。
まだ残る男の精液が穴と陰茎の間で泡立つ。
擦る角度を調節して、彼は腰を上下させる。
男の身体が痙攣する。
彼は自分の中に迸る感覚を楽しむ。
まあ、こんな早漏チンポじゃ満足にはイケないが。
でも、これは楽しい。
コイツに散々突っ込まれた時にはなかった楽しさだ。
コイツはレイプは大好きだったのに今は泣いてるのがおかしかった。
それに、美味しい。
コリッっと飴でも噛むように口の中に残ったそれを咀嚼して飲み込んだ。
長い間、ミキサーにかけられたドロドロの食事しか食べれなかった口に、固形物の食感は、官能的でさえあった。
何より新しい歯は、鋭く強く、なんでも噛み砕く。
口の中の味に、男のモノを咥えている穴より快楽を感じた。
コイツの粗末なチンポより、食べる方が絶対に良かった。
もっと欲しい。
もっと食べたい。
彼は男の『残っている』方の目に人差し指と中指を突っ込んだ。
新しい腕や手は、とても力強い。
グチュ
濡れた肉か千切れる男がした。
涙を流す眼球がつかみ出され、千切られた音だ。
彼は男の眼球を眼窩からつかみ出し、千切り取ったのだ。
先ほど、反対側をそうしたのと同じように。
悲鳴はない。
舌がないだけでなく声帯も焼き切られているのだ。
彼がそうだったように。
限界までひらかられた口と呻き声。
眼球を失った落ちくぼんだ両の眼窩から、涙の代わりに血液が溢れ出すだけだ。
彼は掴みだした眼球を口の中に放りこんだ。
飴でも噛むように噛み砕く。
眼球はとても甘かった。
こんな甘さは知らなかった。
甘い。
溶けるように甘い。
その甘さに脳が焼かれる。
思わず穴が収縮し、劇痛に苦しんているはずの男のモノが育った。
男のモノはまた硬くなっていた。
死を前にしての本能なのだろうか。
眼球のコリコリとした歯触りに、身体が燃えるように熱くなる。
グチャグチャ
噛みしめるために、腰が止まらなくなるほどの快感が生まれる。
甘い。
甘い。
気持ちいい。
男のモノが育っていくのを感じながら、彼は声をあげた。
血に染まった指を舐めた。
たまらなく甘い。
欲しい
欲しい
もっと。
もっと・・・食べたい。
彼は男の耳にかじりついていた。
食い千切る。
吹き出す血の暖かさが心地よかった。
男を噛みちぎる度に中で震える性器が良かった。
夢中で味わい、腰を振った。
自分の性器が射精して、身体が震えるのを感じた。
血の匂い。
肉の味。
男の恐怖。
それでも育つ男の性器がたまらなく良かった。
「・・・お前、いい。初めてそう思ったぜ」
彼は笑った。
歯のない顔を歪ませ、男は喉をそらせ、呻いていた。
目のなくなった眼球から、涙の代わりに血を流しながら。
千切られた耳から血を流しながら。
でも、まだ足りない。
足りない。
足りない。
もっと欲しい。
キシャア
人のものではない声が自分の喉から出るのを不思議な気持ちて彼は効いていた。
喉を垂直にたて、自分が獣のように吠えるのを。
男の肩に歯を立てた。
腰は激しくゆれていた。
そこを擦る。
そこに欲しい。
激しくぶつけながら、噛みついた甘い肉を食いちぎる。
吹き出す血が暖かく顔にかかり、その匂いに酔いしれた。
血が甘い。
口で噛み締める肉が甘い。
擦るそこがたまらなく気持ちいい。
肉を噛みしめ夢中で飲み込む。
何度となく飲まされた精液は嫌悪しか感じなかったが、この男の肉と血は夢中で味わい飲んだ。
「美味しい・・・」
腰を振りながら彼は叫んだ。
「気持ちいい・・・気持ちいい!!」
こんなにセックスがよかったことはなかった。
男の喉を食い破りながら、彼は達した。
赤い血が男の喉から迸るのと、彼の勃起した性器から白い精液が迸るのと、男が絶命しながら彼の中で射精するのは全て同時だった。
肩につくまで伸びた髪を振り乱し、彼は白い背をそらした。
齧りとった肉から流れ込む血を飲み込み、咥えこんだ男のモノから身体に注がれた熱い迸り、命の最後のエネルギーを味わう。
胸に流れ落ちる血液の熱さ、最期に燃焼する男の体温、全てを心行くまで楽しんだ。
脳を煮られるような快感に貫かれる。
中で感じる快楽。
舌で味わう快感。
暴虐を振るう自由。
復讐という長い間の望みが満たされる達成感。
凄まじい飢えと、それが満たされる満足感と、それでも足りない虚無のような欲求と、消えゆく命を食らうリアル。
さらに男の肩に喰らいつき、肉を喰らいながら、むさぼりながら、達した自分の性器をさらにその手で扱き、彼は吼えた。
性器が潮を噴く。
透明な液体が飛び散る。
吠え続けた。
獣のように。
こんなに・・・面白かったことはなかった。
クソみたいな人生で一番、楽しかった。
それを、パジャマを着た男は目を丸くしながら見下ろしていた。
まるでショーでも見ている少年のように。
拍手でもしかねない様子で。
その目はやはり、透明で。
どこまでも無邪気だった。
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