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グール 3

 僕はとっても嬉しくなった。  僕は、僕は、絶対に諦めない人間が大好きなのだ。  しかもそれが悪党だとなおさらいい。  もう勃起しそう、てかしてる。  僕は笑顔でソイツを追いかけた。  死人の血にまみれたままで。  もう浮かれてた。  恋人を追いかけるような・・・いえ、口がすべりました、ごめんなさい、本気じゃないです。   冗談でも恋人なんかじゃありません。 思わず心の中のことでも言い訳してしまう。 だって、怒るし。 他の誰かを恋人だなんて言ったら。 そういうのすぐ怒るし。 言い直そう。  そう、ネズミを見つけた猫のような気持ちで追いかける。    すぐにおいつく。  でもタイムリミットは後一分だった。  頑張れば逃げられるかもしれないぞ。  走っている間に時間が来るかも。  僕はコイツの頑張りに期待した。  好みのタイプではないが、この頑張りは好き。  一生懸命頑張るヤツって、胸が熱くなるよね。  もう感動しちゃうよね。  だけど、コイツは出口を目指していた。   あーあ。  建物から逃げたら、約束違反だ。  僕はこの建物の中で一時間逃げられたなら助けるって言ったのに。  僕はガッカリした。  もう少し・・・期待してたのに。  でも、出口から飛び出そうとしたソイツは、出口から外へと伸ばした両腕を空中に飛ばした。  そう肘から先だけ、キレイに離れて飛んでいったのた。  出口から出たその分だけ。  噴水のように血が吹き出す。  切り落とされた箇所から、冗談みたいに勢いよく。    暖かい生きた人間の血が後ろに立つ僕にもふりかかる。  これ。  これが本物の血だ。  この熱さだよ、うん。  「・・・外に逃げるのは約束違反だ」   淡々とした声がした。  出口の外に、山刀を手にしたガキが立っていた。  一刀両断で両腕を飛ばしたのだ。  ガキの顔には表情がなかった。  ガキ、と呼んではいるが、身長はまた伸びて180センチを越えてしまった。  いまでは僕より10センチ高い。  おまけにまた一回り身体も厚みをましている。  本人が目指すプロレスラーみたいな身体ではないけれど、発達した筋肉は明らかにアスリートのものだ。  でも、まだ18。  ガキだ。  ガキに腕を斬られたソイツはなかなか悲鳴をあげなかった。  ぼんやり吹き出す血をみてた。  悲鳴をあげたのが、切り落とされた腕が建物の外にゆっくりと転がるのを見た時だったのは興味深い。  痛みを現実として信じられないってことはたまにあるのだ。  「うぁぁぁぁぁ!!」    ソイツは絶叫した。  僕は仕方なかった。  仕方なかったから・・・ソイツの首をはねた。  だって、もうタイマーは残り3秒だったから。  この建物で一時間逃げ切ったなら、殺せなくなっちゃう。   殺し方を選ぶ暇はなかった。  残念なことに。  首は飛び、その切り口かは吹き出した血は暖かく降り注いだ。   人間の血液はエネルギーに溢れている。   僕は恍惚としてそれを浴びた。  ガキは無表情にそれをみていた。  

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