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グール 8
あの人は眠ってる。
最初は俺だけを脱がしていたのに、いつの間にかこの人も全裸になっていた。
あの人の綺麗な身体を僕は優しく撫でる。
真っ白で、細身だけれど、肉体を武器に生きてきた人間らしく筋肉はしっかりとついている。
綺麗な身体。
胸に淡く色づく2つの乳首から、まだ濡れているペニス、完璧な形の足の指まで、この人は綺麗だ。
指、髪、首筋、耳。
何もかも。
俺は起こさないように、でも確かめるように撫でる。
俺だけのあんた。
俺のだ。
綺麗な顔はいつも張り付いている不機嫌さがなく、子供みたいな無邪気さに溢れている。
俺しか知らない顔。
誰もこんなあんたを知らない。
いい夢を。
おきてるあんたに安らぎなんてないから。
僕はそっとあの人のまぶたに唇を落とす。
汚れた埃だらけの床の上でも、この人が腕の中にいるなら俺には天国だ。
あんたは天国には行かないし、あんたが生きる場所は地獄でしかないけれど。
そっと背中をなぞり、白い尻を撫でる。
そっと指をその狭間に沿わせる。
撫でる穴は俺のモノだ。
思わず指を挿れてかき混ぜたくなる想いを堪える。
あの人の同意がないことなんかしない。
寝てるあの人のそこに押し入って、あの人が目覚めるまで待って、目覚めたら思い切り鳴かせたくても。
あんたがしたくないことはしない。
あんたは俺にめちゃくちゃなことしてるけどな。
ホント、めちゃくちゃに・・・。
いっつもいっつも!!
思わず穴を撫でる指に力が入ってしまい、あの人が小さく呻いた。
うっすらと開ける唇が、たまらなくいやらしい。
キスしたくなるのをこらえて、綺麗な髪を撫で、その髪にそっと唇を落とす。
この人は今では俺の胸の中に収まってしまう。
それが嬉しい。
あんたを包み込んでやれる。
でも。
「・・・なんでまだされる方なんだよ・・・」
俺は愚痴る。
そこには納得いかない。
いや、確かに、さっきまであの人以上にセックスに狂ってた俺が言うなって話だけど。
俺は出会ったあの日から。
死体を犯すあの人を見た時から。
ずっと一貫してこの人を抱きたかったのだ。
「穴」になるのを引き受けたのも、確かに殺されるのが嫌だったのもあるけれど、それ以上に、あの人に触りたかった。
「僕を抱ける機会があるかもよ?」
そうあの人が笑ったのが一番の理由だった。
俺はこの人が抱きたい。
この人の中に入れたい。
それはどんな欲求よりも強い。
俺は狂っている。
俺はおかしいんだろう。
死体を犯すこの人に、一目惚れしたんだから。
俺は着々と、身体を開発されながらも、とんでもない身体にされながらも、それでも諦めることなく頑張った。
喉を犯されながらもイケるようになった時は、正直びびった。
肩の肉を食いちぎられても、射精した時にはもうどうなってしまったのか、とも。
でも、俺はあの人を抱くことをあきらめなかった。
「穴」から「恋人」に昇格し、身体を触らせて貰えるようになり・・・。
とうとうあの人を抱いた時にはもう死んでもいいと思った。
すぐにまた抱きたいから嫌だと思い直したけど。
それでも、なかなか抱かせてくれなくて。
でも、でも、とうとう、あの人から「抱いていい」とまで言われて・・・。
俺がどれだけ歓喜したと思う?
しかも。
しかも。
あの人は確かに俺を求めて抱かれてくれたんだ。
俺は思った。
俺はあの人のもんだ。
俺の求めるものはここにある。
もう、あの人だけいればいい。
腕の中のあの人だけがすべてだと。
俺達はこうあるべきなんだ、と。
あの人がどんなに可愛かったかは誰にも言わない。
鬼畜なあの人があんなに可愛くなるのは俺だけ知ってればいい。
でもでも。
・・・・・・あれから一度も抱かせてくれない。
泣きたい。
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