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グール 9

 「なんでだよ・・・」  俺は起こさないように優しく身体をなでながら思わず呻く。  めちゃくちゃ感じてくれてただろ?  俺に全て明け渡してくれただろ?  「いい」って言って、何回も叫んでたろ?  俺、ダメだった?  そんなハズないよね、あんたあんなにトロトロだったじゃないか?  そう言いたいけど言わない。  言ったらめちゃくちゃ怒るのが目に見えてわかるからだ。  この人、めちゃくちゃめんどくさいのだ。  俺に抱かれたことを認めたくないから。  ましてやイキまくってトロトロでしたなんて、死んでも認めたくないから。     逆にあそこまでメロメロになってなければ、また抱かせてくれてたような気はする。  どうのこうの言ってこの人、俺には甘いのだ。  酷くもあるけど。  あんなになっちゃった自分を認められないというややこしいあの人のあの人らしい面倒くささだ。  でも、一応挿入はさせてくれないけど、今だって触らせてはくれてはいる。   俺には甘いから。  穴を舐めたり、胸を吸ったり位はさせてくれる。  今日は寝てしまったけど、こんな風に酷く抱いた後はお願いを絶対に聞いてくれるのを俺は知ってる。  機嫌が良ければフェラさせてくれたりもするし、スマタ位ならなんとか。  とにかく、この人はややこしいんだ。  抱かれるのは嫌じゃないけど、俺にメロメロにされた自分をみとめたくない。  そういう色々面倒くさいところか、また抱かせてくれる機会を奪ってしまってるんだってわかってもどうにもならない。  この人が素直になることなんかあるだろうか・・・。  俺はため息をつく。    でも諦めない。  諦めるものが。  言っておく。  俺にはこの人を抱くことが全てのことに優先する。  ただし、この人の同意がなければなんにもならないのだ。  あんたが嫌なら、何にも意味がない。  俺はこの人を愛してるのだ。    殺人癖のある拷問マニア。  人欺くのが大好きで、人の希望の光を消すのが何よりも大好きな歪んだ男。  嫉妬深くて、拘束ばかりするし、酷い言葉は当たり前。自分がしたければ、どこででも俺を犯すモラハラ男。  絶対に「愛してる」とは言わない男。  罪のない人達までころしてきた酷い男。    ・・・どこがいいのかなと自分でも思う。  いつも思うけど、顔と身体とセックス以外この人は最低だ。  でも。  でも。  俺のために「正義の味方」であろうとする男。  正義の意味すら本当にはわかっていないだろうに、この人は正義の味方だ。  そうあることに全てをかけている。    それで全てが許されるとは思ってない。  でも、俺は愛してるのだ。  誰が許さなくても。  許されなくても。  俺はこの人を愛している。  もう離れられないほどに。  抱きしめた。     目覚めないで。  そんなことさえ思ってしまう。  俺の腕の中のあんたでいて。  本当目覚めないのは困るけど。  たまらなく愛しかった。  足音が近づいてきた。  来るころだと思っていた。  「・・・お楽しみ中、すまない。仕事なんでね」  スーツだった。    

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