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グール 13
「どういうこと?」
素直だが残念ながら頭の回転はあまりよろしくないガキが首を傾げる。
「寝たきりの奴らが、【動けるようになって】職員を2人殺して出て行ったんだろ?・・・そして、次の日もまた【誰かが】殺された。そうだろ?死体の写真は6体。でも今の話までだとまだ2名分しかない」
僕は笑った。
面白い話だ。
実に面白い。
「防犯カメラの映像を解析する限りそうだとしか言いようがない」
犬はため息をつきながら言った。
こんな馬鹿げた話に慣れてきた自分が嫌なんだろう。
そこがこいつのツマラナイところだ。
僕は面白いぞ。
人が沢山死ぬ話大好きだ。
「どうやって動けなかった人が殺したって言うの?それに一人は手足もないんだろ?」
不思議そうなガキ。
この素直さが可愛い。
思わず、僕は隣に座るガキの頭を引き寄せて、その唇に軽くキスをする。
「何・・・」
ガキは真っ赤になる。
ガキはいまだに人前でキスされるとこうなる。
何を今更。
犬はこの部屋以外でしたセックスは全部監視か盗聴してるのに。
僕は危険な監視対象だからな。
まあ、ガキがそれを知ったらすごく怒ったり恥ずかしがったりして、とりあえず、本気で僕がむちゃくちゃ怒られるので、ガキには秘密。
犬と僕はこのことだけでは結託している。
僕も、犬も、本気で怒るガキだけは避けたい。
今までも、そう、今日もしたこの部屋の外でのセックスが誰かに中継(音声だけでも)されていると知れば、僕、ガキに怒られるだろ。
とってもとっても怒られるだろ。
大人として当然の配慮だ。
でも、外ではしないという選択肢だけはない。
とにかく、だ。
「【能力】だよ」
僕はガキに言った。
少なくとも、犬達はそうみている。
だから僕に話が来たのだ。
「手足のなかった男が手足とおそらく舌も得て、殺された職員が手足と舌を失った。そして、手足が生えた男が手足の無くなった職員喰い殺した」
僕は指摘する。
入れ替わっている。
実に馬鹿馬鹿しいがそういうことだろう?
「個室や浴室にはプライバシーがあるから防犯カメラはないが、廊下にある防犯カメラからわかることは、もう一人の殺された職員も介助のために利用者の部屋に入り、そしてそこから出てきたのは職員ではなかった。そしてその部屋に残されたのは喰い殺された職員の死体だけが残っていた。自分では動けないはずの利用者は消えていた」
犬は無表情に、でも嫌そうに言う。
だって実に馬鹿馬鹿しい話だからだ。
だけど犬、今目の前にいるのは不死身の化け物なんてもっと馬鹿馬鹿しい存在たぞ。
でも僕はまだ話の続きがあると知っている。
スーツの前に伏せられたままの写真がまだある。
6枚。
おそらく6人の写真。
最初に見せないということは、重要ではない。
つまり、死んでいるのだ。
そうまだこの話は終わってないのだ。
「で?・・・そこにある残り6体の死体の写真はは?殺した奴らは出て行ったんだろ?3人。死体は2つ。でも後6人はどう死んだ?どう殺された?」
僕は楽しくなってきた。
多分まだ死んでる。
まだまだ面白いことがありそうだ。
犬は死体の写真だと見抜いた僕に嫌そうな顔をして、その楽しい写真はまだ見せない。
そのかわりにもうある写真の方を指ではじいて僕の前に出す。
みたいのに。
グロい死体。
行方不明になった障害者達の写真だろう。
これは。
つまらない。
「その前に最初の事件について、防犯カメラからわかったことを時系列に並べて行くぞ」
犬は一人の男の写真を指差す。
やせ細った、表情が伺えない、年齢の分からない顔の男だ。
表情がないのは表情を作る体力もないからだろう。
だが、写真でみてもまるでこちらを本当に見ているのではないかというようなエネルギーが男のその目にはあった。
犬は男の名前を告げた。
「24才。生まれた頃から重度の障碍がある。子供の頃はそれでも少し話たりも出来、少しは動けたようだが、今では身体は僅かに首を動かす程度だそうだ。二年前までは両親が介護していたが、高齢の両親から生まれたため、父親は74才で脳梗塞で死亡、母親も身体をわるくなり面倒がみられなくなり、この施設に入った。兄と妹がいる。家族は毎日のように施設を訪れていたそうだ。始まりは彼だ。彼しかいない部屋から、彼のパジャマを着た男が扉を開けて出てきた。歩いてだ。そして、始まった」
犬は言った。
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