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グール 14

 そのパジャマの男は何人かの部屋をふらふらと訪れていった。  楽しそうに踊るように歩きながら。  入って行った部屋の中で何が行われたのかはわからない。  カメラには、扉を開けて部屋に入っていく男が映るだけだからだ。 男が中に居た部屋は最初に出てきた部屋を入れたなら5部屋。  そして、浴室。  そして男は全裸の男とその浴室から出てきたのだ。  浴室の中でなにが行われたのか。  喰い殺された死体と、脱衣室のゴミ箱に捨てられた陰茎。  枯れた手足と舌。  そこから想像するしかない。  全裸の男はおそらく、シャワーで血液や精液を洗い流したのだろう。    全裸の男がバジャマの男と浴室から出てきた同じ頃、もう一人の夜勤職員が、一人の利用者の部屋に入った。  パジャマの男がその前に訪れた部屋の一つだ。  そして、その部屋から出てきたのは職員ではない男だった。   血に濡れたパジャマを着て。  居住者の写真を犬が指し示す。 この男が部屋から出てきたというのだろう。  痩せこけて表情がないから誰も同じように見える。   犬はその居住者の名前を告げた。    「19才だ。彼は難病でだんだん筋力が落ちていくんだそうだ。3年前ほとんど動けなくなり、この施設に入った。入った頃は少しは話せ動けたそうたが今は無理。人を殺すなんて不可能だ、もちろん。だが歩いて出てきてる。しかも、殺してな」    19才。    ガキと同じ年頃か。  この少年は部屋を出た後、血まみれのままふらふらと迷子のように施設をさまよっていたらしい。  そして、職員更衣室から服を調達して全裸では無くなっていた【ダルマ】だった男と、同じくパジャマ以外の服に着替えた【パジャマ】を着た男と、この【迷子】のようにさ迷っていた男は出会ったわけだ。  【ダルマ】はまた浴室に【迷子】を連れて行っている。  おそらく身体を洗ってやったのだろう。  3人で浴室に向かっている。   【パジャマ】は【迷子】の部屋からも服を持ち出している。  そして、三人は連れ立って、施設の外に出たのだ。  出る前に看護士に職員がいないことを電話で知らせて。  そして警備員を殴り気絶させて。  「続きは?まだあるんだろ?後四人分の死体の話!!まだ2人しか死んでない!!」   僕は後四人が殺される様子が聞きたくてわくわくした。 自分が殺してなくても誰かが殺される話は大好きなのだ。 犬は無機質な目で僕を見た。 何の感情も出さないのは正解だ。 場合によっては殺すからね。  そして、犬はつづけた。 警察等が来て大騒ぎになったが、施設はそれでも次の運営される。  生きて介助が必要な人達がいるからだ。  殺人事件とは別に浴室で行われていたと思われる性的虐待についても調べることになったが、それでもそこにいる人達の生活は続いて行くからだ。 介護が必要な人たちだ。 直ぐにそこを出ることも難しいのだ。  金持ち向けの施設なので他よりは待遇が良いとは言え、それでも人員不足を抱えてはいた。  施設はなんとかして人をかき集め、むしろ普段よりも人を多くし、夜は警備員を増やし対応しようとはしていた。 殺人事件なのだ。 施設の対応はそうするしかなかっただろう。  しかし、外からやってくるのではなく、中から現れるモノによる殺人に警備員で対応などできたかどうか。  そう、もう一度確認しよう。 【パジャマ】が自分の部屋と、【ダルマ】がいる浴室以外で事件の夜に訪れたのは【迷子】とほか2人、やはり起き上がることが出来ない人々の部屋だった。 そう【バジャマ】【ダルマ】【迷子】身動きが出来なかったはずの人間達が歩き出したのだ、【ダルマ】にいたっては手足まで生えている。 【パジャマ】が最初に動き出し、【ダルマ】や【迷子】が動き出している。 でも、【パジャマ】は【ダルマ】や【迷子】以外の2人とあの夜接触してる。 【バジャマ】は浴室にいた【ダルマ】以外の4人の部屋を訪れたのだ。  でも、彼らは【ダルマ】や【迷子】とは違い、そのまま寝たきりのままだった。   【パジャマ】や【ダルマ】や【迷子】のように動けないはずなのに動き出したりはしなかった。  いつもの通り、表情のないまま、たまに目を開き横たわっていたらしい。  その朝までは。    「その施設には何人いるんだ?」  僕は聞く。  「施設というよりはグループホーム、らしい。本来は起き上がれないような人達を受け入れる施設では無かったのだけど、要望に対応していくうちにそうなった、そうだ。20名程が集団生活をしている。施設ではなくホームなんだと施設長に力説されたよ。6名程が寝たきりで、残りは介助の程度は様々だ」  犬は答えた。  「それで?それで?後4人はどうやって殺された?、ちゃんと殺し方まで説明しろよ」   僕がこんなに犬の話を楽しみにしたのは初めてだ。  これは面白い話だ。  こういう話、僕、大好き。  犬は心底嫌そうな顔をし、ガキは微妙な顔をしてはいたが、やはり好奇心がおさえられないらしい。 動けないはずの居住者達が三人動きだし、その夜2人の職員を食い殺した。 そして三人は出ていった。 でもその後にも殺人があった。 4人死んだ。 どんな風に? 面白い話だ。  「殺人があった次の日の夕食前だ。食堂で利用者が集まって食べるんだが、介助が必要な居住者を迎えに行った職員二人が帰ってこなかった」  犬は続けた。  

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