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恋 2

 「セックスの時に穴を濡らすヤツだよな、コレ?なんか、口にいれても大丈夫なヤツ買ってこいって言われてんだけど、あんたわかる?フェラする時に使えないヤツはだめたって」  不躾に質問までされて俺はますます真っ赤になった。  何?  何なんだコイツ!!  「出来ればアナル専門だといいんだけど。挿れる方のつかいごこちより、挿れられる方が使い心地いいヤツ、って言われてんだけど。わかんねえんだよね。おれ、挿れられたことないし。今まで唾液とか精液で濡らしてたから、ローションだとどう違うのかもわかんないし。舐めて濡らすだけじゃだめなのかな。おれ、舐めるの好きなんだけど」  デカい声で言われて、俺はたまらなくなってソイツの口を思わず塞いだ。  俺達の会話にそこそこ人がいる公園の人達が振り返った。  何だ。   何で、白昼の公園でこんな目にあわされてるんだ。  何でコイツ、アナルとか精液とかデカい声で言えるんだ。  有り得ない。  あの人並みに感覚がオカシイヤツがいるとは。  いや、あの人も下品だし何でも平然と口にするけど、いや、俺を苛めたいだけでわかっててやってるとこもあるけど、コイツ、コイツコイツ!!!!  「むががが」  それでもソイツは何か云おうとしていた。  「ちょっと黙れ!!お願いだから黙ってくれ!!」  俺は叫んだのだった   それからしばらく後・・・   「そう、もう、勝手なんだよ。自分のしたい時に押し倒してくるんだから」  ソイツの苦々しい呟きに俺は何度も頷いていた。 俺とソイツはめちゃくちゃ語り合っていた。  「もう無理って泣いて頼んでも許してくれないし、むしろ泣いたらもっともっと責めてきて、見上げたら楽しそうに笑ってるんだ。酷くない?・・・気持ちいいけどさ」  俺は頷く。  わかる。    わかる。  泣いたら泣いた分喜ぶんだ。    「酷いこととかしてる最中に言ってきて追い詰めて喜ぶしさ」  何それ。  俺達がしてるとこ見て来たみたい。  「初めての時なんかレイプみたいなもんだぜ?怖くて泣いても泣いても止めてもらえなかったんだから。しかも、終わったら自分のモノ宣言されて。それもオモチャ扱い。おれにだって甘い憧れとかあったのに」  うわぁ、完璧に一致。  俺も「僕の穴」って云われた。  コイツは「棒」扱いみたいだけど。  もはや他人とは思えない。  俺達はちょっと人に見られにくい場所にあるベンチに座って話をしていた。  まあ、なんだかんだと言って、話が合ってしまったのだ。  年上の大変横暴な恋人を持つ男ならではのアルアル話に思わず花が咲いてしまっていた。  なかなかコイツの恋人もあの人レベルのワガママらしい。   俺はずっとゲイなことも隠してたからこんなこと、友達とも話したことはなかった。  「鬼畜だよな」  俺が長く言えなかったことをコイツはあっさり言った。  「そうだよね。場所も関係ないし。俺なんか真昼の公園でみんな見ているとこで押し倒されて・・・」  思わず言ったら気の毒そうな顔をされた。  「いや、おれ、そこまではされてない。お前可哀想だな」  言われて俺は言葉を失う。  同情されてしまった。  ねえ、あんた。  俺は俺の恋人に心の中で言う。  あんたキングオブ鬼畜な恋人大賞を受賞したみたいだよ。    「でも不意打ちで可愛いとことか見せられたら、ちょっとやられちゃうんだよね。だって普段あんだけ鬼畜なのに、めちゃくちゃ可愛くなったりすんだぞ。あんなの反則」  ソイツはため息をついた。  わかる。  わかりすぎる。    「わかるよ」  思わず手を握ってしまう。   もはや他人とは思えない。  あの人があんな可愛くなってしまう瞬間とかさ、怯えたような顔する刹那とかさ、あの人が腕の中で溶けてしまうあの時とかさ。  もういつ死んでもいいとか思うわけだよ。  「まあ、おれは今んとこあの人のバイブでしかないんだけど。あの人本当に好きな人いるし。性格ややこしいから本命には手を出せないタイプでさ」  ちょっと切なげに言うソイツの手を握りしめる。  わかる。  わかる。  あの人も、本当に愛した人がいて、「愛してる」と言うのはその人にだけなんだって俺も知ってる。  でも、今あの人の側にいるのは俺だ。  俺なんだ。  「大丈夫だ。俺もオナホール扱いから恋人にまで昇格した。お前にだってできるって!!」  手を握りしめ熱く語る。  語っちゃう。    「そう?、そうかな・・・」  なんか泣きそうなのがめちゃくちゃ切ない。  俺も通ってきた道だから。          

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