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恋 5

 僕はお前を傷つけるし苦しめるし、何もかも奪う。  でもお前だけだ。  お前は僕と同じ意味では僕だけではない。  不平等だ。    「斬りたくなかった」  僕は泣き言みたいに呟く。  「ゴメン。ゴメンね」  ガキが囁く。    「僕だってお前が血を流して平気なわけじゃない!!」  僕は喚く。  ヒステリーだってわかってる。  コイツがどう思っているのか知らないが、僕だってコイツの両腕を斬るのが平気なわけではない。  確かにいつも作戦でコイツが無事で済むような作戦なんて立てたことがない。  いつもコイツはボロボロになる。  身体が千切れて、バラバラになって。     でもそれを平気でそうしているわけではない。    今日だって手足を切り落としてダルマにしようかと思ったけど、平気なわけではない。  わけではないんだ。  本当にそうしてしまったかもしれないけど、平気ではないんだ。  ガキの痛みを何とも思ってないわけではないんだ。  傷付けてしまうけれど平気ではないんだ。  「わかってる。ゴメン。ゴメン。俺が悪い」  ガキは僕の髪を撫で、優しく何度も囁いた。    その声の優しさに、その指の優しさに僕は目を閉じ、身を委ねた。    「ゴメン。傷付けてゴメン」  ガキが謝ったから、許してやってもいいと思った。    甘えるように身体をすりつけてしまったかもしれない。  ガキの身体が震えた。  堪えるように。    顎を優しく掴まれ顔を上げさせられた。  ガキが苦しげな顔をして僕を見ていた。    あんまり僕が欲しそうだったから、僕はガキがキスするのを許してやった。  ガキのキスはやはりとても優しくて。  ささくれてた心が凪いでいくようだった。  「触らせて。・・・・・・こんなあんた見せられて、我慢なんかできない」  唇が離れて、ガキが呻いた。      苦しそうな声で。  両腕を斬られ、血を吹き出すガキの姿をおもいだしてしまった。  痛めつけてしまったことは平気ではないんだ。  罪悪感と言えなくもない。    「ダメだ」と言えなくなった。  それにもう少し、この優しい指に慰められたくもあった。  僕がガキを斬ったことで、傷ついた僕の心を。  斬られた当人のガキに慰められたかった。  僕だって知っている。  この世界に僕のようなモノをそれでも慰めようとするのは、この指だけなんだって。  この指が、ガキだけが優しく僕を慰める。  ガキで飢えを満たしたいのとは違う欲望が、僕に拒否の言葉を言わせなかった。  何も言わなかった。  だから、ガキは僕を抱き上げた。    軽々と。  ガキは僕と違ってどこででも僕に触れたらいいわけではないのだ。  優しくベッドまで運ばれた。    そっと寝かされた。    ガキが体重を出来るだけかけないようにのしかかってくる。  髪を撫でられ、頬を撫でられ、またキスされた。  「触る、だけ」  僕の拒否を恐れるようにそっと囁き、ガキは僕の服をそっと脱がせはじめた。  僕は抵抗しなかった。  ガキは血に汚れた自分の服も床に脱ぎ捨てた。    ガキはまた僕の上に重なる。  血に汚れたガキの肌が僕の肌と触れ合う。  熱くて、解け合いそうだ。    「ゴメン。ホント、ゴメン」  コツンと額をあわせて囁かれる。  泣きそうになる。  泣かないけど。  確かに僕はイカレてる。  だから、お前をの斬られた傷みより、僕の方が痛いんだなんて思ってる。  でもそれを真に受けて謝るのは、この世界にガキしかいない。  「ゴメン。ゴメン。傷付けてゴメン」  何度も謝られながらキスされた。頬、額、唇、顎を齧られ、首筋を舐められた。  それは優しい。  泣きたくなるほど優しい。  僕は喘ぎそうになって気付く。  そう言えば。   そう言えば。  当然この部屋も盗聴されてる。  犬達に。  僕の言動は僕の家以外では全部監視されている。    「どうしたの?真っ赤だよ、顔も、耳も首も」       ガキがそれでも背中を撫でながら、耳を甘く噛みささやいてくる。  耳を噛まれる甘さに声が出そうになって僕は唇を噛み締める。  いや、僕、人前でセックスするの別に平気だけど。  なんならガキが嫌がりながら感じるのとか、めちゃくちゃ好きだからしたい位だけど、本気で怒るから止めたけど。  まあ、僕とガキはネット中継で公開セックスしたこともあるくらいだけとね。  しかも1000人いる会場のステージで。  でも僕が中継したわけてはない。  あれは事故だ。  僕のせいじゃない。  あの後しばらくガキがホントに鬱になってしまった。  そんなことくらいでって呆れた。  そして、急に元気になったと思ったらコイツ自力で記憶消していたんだけど。  その気持ちが初めてわかった。    ふざけるな。  僕がガキに抱かれる声を、他人に聴かせてたまるものか。    この僕が。  この僕が、だ。  ガキに抱かれる声を犬達なんぞに聴かせてたまるか!!  嫌だ!!  僕は触らせるのを止めようと思った。  でもガキは許可が出たと思っているから、優しくは会ってもその指は僕の胸を撫ではじめていた。  包み込むように手のひら全体で撫でられ、乳首の周りを親指でなでられる。  首筋を甘く噛まれながらそうされると、心地良くて、もっとされたくなる。  止めるのは簡単だ。  「駄目だ」とガキに言えばいい。  ガキは止めるだろう。  でも嫌だった。  慰めて欲しかった。         

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