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恋 12
寝ているアイツを眺めながら、ベッドにすわる。
オレはアイツの様子を見に来た。
来てしまう。
ちょっと躊躇してから、髪に触れた。
グズをあんただと思ってしてしまったことを心で詫びる。
もうしない。
あんたをそんな風に使っちゃいけない。
子供みたいな寝顔。
穏やかで優しい顔立ちは、でも柔和ではあっても男のモノだ。
震える指でそっとその長めの髪を撫でる。
それでも、触れるだけでたまらない気持ちになる。
性欲だけじゃない。
これは愛しさだ。
24才だというが、コイツの中身はグズより幼い。
身体だけはオレ達とは違う何かになって、動けるようになり、痩せ衰えていた身体が別人のようになっている。
大人の男の身体。
グズみたいにデカくはないが、背の高い、すらりとした均斉のとれた身体はしなやかな筋肉に覆われていることも、形の良いペニスも、オレは全部知ってる。
コイツの身体を洗ったのはオレだからだ。
昨日からは自分で洗うようになったけど、まだ教えるという名目でシャワーに一緒に入ってしまう。
さすがにオレは服は脱がない。
オレのが勃起していることの説明やらセックスの説明が面倒くさいからだ。
それでも、アイツは穴にチンポを入れたり入れられたりするのが大人の楽しみであることは理解したようだ。
あの時だって動物の交尾を見ながら驚いている子供みたいに、オレが男を犯すのを見ていた。
眉をひそめていたから、多少気持ち悪いとも思っているようだ。
そうは思っても口に出さないのは育ちの良さか。
アイツにしろ、グズにしろ、良いところのお坊ちゃまなのだ。
本来は。
身体さえ自由に動いたなら、今頃人生を謳歌していただろうに二人とも。
家柄が良く、金持ちで、外見もいいのだから。
とにかく、オレはアイツに欲望を感じていることを気づかせない。
気持ち悪いなんて・・・思われたくない。
オレがどんなことしてきたかなんて、されてきたかなんて、アイツは知らなくていい。
汚いことも痛いこともされて。
オレでさえ思い出したくはないことも沢山ある。
今のオレが人間相手にしていることは、オレがされてきたことに比べれば大したことではないのだ。
泣いて幼いオレは懇願する。
それはしないでと。
それから逃れるために何でもする。
舐めたり、手で擦ったり、咥えたり。
何でも言い、どんな汚いことも我慢する。
でも、結局そうされるのだ。
何日も寝込むほど、小さな身体の肛門が裂けるまで突っ込まれ、いたぶられる。
それを母親が冷たい目で見ている。
男の興味をつなぎ止めるためにオレを男に差し出し、そしてオレに嫉妬しているのだ。
男達は母親と息子を同時にヤれることを喜んだ。
母親が差し出した息子で楽しんだ。
そして母親とも。
「コレはこうしてもいいモノだ」
ソイツらはそう思っているから罪悪感などない。
オレは誰からも救われることなどない。
母親が何で死んだのかも覚えてない。
その後、男達の誰かによって、アソコへ送られた。
そこからが本当の地獄だった。
薬、暴力、洗脳。
鎖に繋がなくても人を縛る方法などいくらでもあると知った。
それでも諦めなかった。
反抗的なのがいい、とあまり薬を使われなかったのがオレが生き残れた理由の一つだろう。
薬なんか使えば人間なんてカンタンに壊れる。
呪いうらみながら、生き延びた。
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