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恋 13

 その目つきがいいと気に入られることが多く、解体ショーに出るのは免れた。  殴られ専門にもならずにすんだ。  一緒にいた連中はみんなそれほど長くは生きられなかった。    縛られ鎖で繋がれ、複数に犯されるのが専門だった。  オレが罵り抵抗するのがいい、そういう奴らに愛玩された。  呪い諦めなかったからこそ、殺されないですんだ。  無感覚になり面白みのなくなった連中は、解体ショーや、嬲り殺しに使われていったからだ。  たいていは女だった。  子供のオレに優しくしてくれた女達はみんな最後には死んでいった。  殺される前まで優しかった。     さすがに子供はオレしかいなくて、女達は自分の為には泣かなくてもオレの為には泣いてくれた。  女達が死ぬ度、オレの呪いは強くなった。  呪わないといけない理由が増えていく。  「こういうとこでしか発散できないからね」   オレ達を人間だとは思っていない奴らはそう言った。  唸る程金のある奴らだ。    だけど、金のなかった母親の男達と何ひとつその本質は変わらない。    「こんなこと、外でやったらオシマイだよ」   男達は笑う。    子供を抱くこと?  子供を引き裂くこと?    女を殴ること?  殺しながら犯すこと?  解体ショーをオレに見せつけ、怯えるオレにさえ興奮する連中。   女の手足が生きながら切り落とされる。  大金を払ってそれを見ている連中が歓声をあける。  怯えて泣くオレは、その女に子供のように抱き締められたことがあったことを思い出す。  普通の子供を抱き締めるみたいに抱き締めてくれた女。  泣いてるオレを誰かがまた犯していく。  子供ではなくなると、人気がなくなる。  オレは反抗的な態度、そして、何度となく脱走しようとした見せしめのためにダルマにされた。  ダルマにされるところでさえ、ショーになった。  オレは自分の手足か切られるところを見せつけられたのだ。  舌を奪われる瞬間まて呪い続けて。  舌を奪われても呪い続けた。  保護されるまで、呪い生き延び、保護されてからもあの施設で、また犯され呪い続けた。  オレは呪いだ。  オレはこの世界に解き放たれた呪いだ。  オレはアイツの髪をなで続ける。  お前が解き放った呪いだ。  でも。  でも。    オレはアイツを見つめる。  オレとは違って汚いモノなど見たことないだろうアイツの顔を。    オレはお前を使ってこの世界に呪いを充満させる。  こんな世界壊れてしまえばいい。  「コイツらはこうしてもいい」          この世界はそう考えることを認めているからだ。  オレは保護されて施設に入ってわかったよ。  オレがいた世界はさほど特殊ではないってことを。  動けない、何もできない人間には何してもいいって人間が「普通」の人間の中にもいた。  ソイツらの存在を、ソイツらがオレに何しているのかを本当に誰も全く気付いてなかったわけではない、それをオレは知ってる。    何かしら感じていただろ。  でも、許した。  ソイツらを許していたのはいわゆる普通の人々だったし、ソイツらも普通の人々だったのだろう。  なら、今、オレがこうしてもいい。  お前達だけが良くてオレはダメなんてない。  でもアンタ。    「アンタはオレが守るから」  オレは約束したのだ。  アンタを利用する。    そして、アンタを守る。  アンタだけは綺麗なままに。  オレみたいに汚れさせたりはしないから。  オレはあの人の髪をなで続ける。  その唇を貪りたい。    裸に剥いて、扱いて跨がりたい。    でも、しない。    そうしないことが嬉しい。  アンタは綺麗なままでいて。    オレが生まれて初めて出会った綺麗な人。  誰かを欲望のために使うことさえ知らない人。  不自由な身体に閉じ込められ続けてきたのに、恨みも憎しみもなく生きてきた人。  奇跡みたいな人。  オレの。  オレだけの宝物。                

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