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追跡 1

 「お仕置きだね」   あの人は綺麗な唇を吊り上げて笑った。  楽しそうにすら見えた。     俺は驚く。  もっと叱られると思ったのだ。  俺は彼女を殺し損ない、逃がし、最悪なことに俺の肉さえ喰わせてしまった。  良かったのは人質になってたスーツの部下はまだどこも食われてなくて、無事だったくらいだ。  そこは純粋に嬉しい。  でも、あの人にスーツの部下に価値はない。  使い捨てにする道具にしか思ってない。  だからそれはあの人には意味のないことだ。  だからてっきり怒られると思ってスゴスゴあの人の元にもどってきたのに。    くくっ  あの人は笑った。    俺のぽかんとした顔が面白かったらしい。  「追えるだろ?」  あの人はスーツに聞く。  「時間はそんなにかからない。逃げ切れない」  スーツは頷く。    逃げた彼女のことだとわかる。  スーツ達は彼女を追っているのだ。  防犯カメラ、その他の解析を行っているのだ。  スーツは彼女が見つかると請け合った。  「あの女はお前の部下が逃げるやり方で逃げるはずだからな。全くやり方が異なる連中を追うより追いやすいだろう」  あの人は笑った。    ああ、そういう・・・こと、か。  スーツは彼女がどう逃げるのかがわかるのだ。  彼女が逃げる為に使うやり方。  それはスーツ達のやり方なのは間違いないからだ。  彼女が逃げ切るために使う方法はスーツ達のやり方だからだ。  普通の主婦だった老女にそんなノウハウはない。  「まあ、確かに拙い結果だよね。・・・でも、あの女を追えば元凶の捕食者に行き着くはずだ。上手く行けば一網打尽にできる」  あの人は楽しそうに言った。  この人の頭はどんな時も次の手を考えて動いている。  俺がしくじる可能性も考えていたに違いない。  「それに、あの女は死ぬ。あの女、鼻や目はすぐに再生しているのにお前が割った頭蓋骨だけはなおる気配もなかった。脳へのダメージは治らないんだろうな」  飛び降りる彼女の映像を拡大したものを見ながらあの人は言った。  部屋の外からスーツの部下が撮影していたものだ。  俺がわった頭蓋骨から、彼女の脳かみえていた。  でも、確かに潰した鼻は治っている。  「一度匂いさえわかれば、犬どもはそいつらを必ず見つけ出し、追い続ける。まあ、失敗ではあっても、そこまではわるくはない」  あの人が言うならそうなんだろう。  不意に耳をつかまれ、屈ませられた。  あの人の前に跪くような格好になる。    あの人が唇をオレの耳よせる。  吐息が熱い。  「だけど、な。・・・お仕置きはお仕置きだ」  オレの耳元でささやいた。  オレはゾクリと身体を篩わせてしまった。  どうなるのかわかっているからだ。     あの人はオレの耳を舐めた。   耳朶を噛まれ、穴の中に舌を入れられた。   スーツ達の前なのにオレは、身悶えてしまった。  あの人が笑ってる。  声が耳もとでして、その声に腰が震えた。  楽しそうにあの人は笑う。  でもさすがにそれ以上はここではしなかった。    「犬、見つけたら知らせろ。僕はガキにお仕置きをする」  あの人は跪いたオレを見下ろしながら言った。  まるでオレにフェラさせる時の姿勢のままで。  オレの身体はその言葉に反応して疼いた。  犯される、そうわかったから。  俺の穴がひくついていた。  あの人の目が綺麗で。  俺は唾をのんだ。  

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