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追跡 7
抱き寄せられた。
長い腕が僕を包む。
座るパジャマの胸の中に閉じこめられる。
何故か抵抗できない。
優しく優しく背中を撫でられた。
身体を揺すられながら。
子供をあやすようなソレは信じられないほど気恥ずかしかった。
真っ赤になるのがわかる。
ふざけるな。
そう思った。
この僕が赤ん坊みたいに「いい子いい子」されるなんて有り得ない。
だけど、身体が上手く動かない。
これはコイツの心の中だからか?
「・・・ソレもあるけど、違うよ」
パジャマはのんびり言った。
心までよまれてるのか?
ここはコイツの空間だ。
何があってもおかしくない。
キュッとだきしめられた。
それはガキが僕の中から出た後に、僕を大事そうに抱きしめる時の感覚に似ていて、吐息が出た。
思わず腰が揺れた。
コイツの接触には性的な匂いは何一つないが、コチラはセックス無しだったことは精通を迎える前からはほとんどない。
どんな接触にもセックスを紛れ込ませてしまう。
ガキが僕に触る時を思い出してしまう。
出てしまう吐息が嫌で、恥ずかしくて必死でこらえる僕をあやすように撫でるガキを思い出してしまう。
優しい、でも欲望に満ちた目で僕を見つめるガキを。
ムカついた。
僕に触っていいのは、ガキだけだ!!
僕の右手は瞬時で銃に変化する。
どんなものでも消し去る、捕食者を殺せる武器だ。
パシュ
ただし、発射音は空気の抜けたような音になる。
僕は至近距離でパジャマの頭をぶちぬいていた。
パジャマの頭はお湯に入れた氷のように消え去った。
「酷いなぁ」
首を失った身体がのんびりした声で言った。
顔がなくても話しても、驚きはしない。
ここはコイツの中だ。
全てがコイツの思い通りだ。
パジャマの顔か胴体から亀が甲羅から顔を出すように新たにのびてくる。
僕の銃で撃って消したモノは再生しないから、やはりこれはコイツの中の出来事なのだ。
僕は突き飛ばすようにして、パジャマの腕から逃れる。
「どうして逃げるの?」
パジャマは不思議そうに僕に尋ねる。
「あなたは抱きしめられたがっているのに
当たり前のように言われた。
僕は血が逆流するのがわかる。
怒りで目の前が歪む。
この僕に言うか、この僕に。
そんなセリフをこの僕に。
何人も刻んで、剥いできたこの僕に。
僕は、馬鹿にするのも、からかうのも大好きだけどね、僕がされるのは大嫌いなんだよね。
殺せないなら。
犯してやる。
一瞬、ガキの顔がチラついた。
でもこれ、現実じゃないからね。
まあ、言ったら妄想みたいなもんだろ。
じゃあ、いいよね。
浮気にならないよね。
うん。
うん。
大体僕はセックスは泣き叫んでされる位なら殺してからする派だから!!
したいわけじゃないわけで。
殺せないからするためで。
したいわけじゃナイから。
だから。
だから。
浮気じゃないから!!
僕はガキに言い訳をした。
頭の中のことまでは許して欲しい。
それでもコイツからガキにバレないように、ガキがコイツと対決する前に現実でも殺そう。
そこまで考えた。
バレたくないのだ。
いや、だってガキが怒るかもしれないし。
・・・、絶対怒るし。
怒られるの嫌だし。
「怒った顔、可愛いよね」
パジャマはニコニコ言い放った。
「はぁ?」
僕は自分の顔が歪むのがわかった
殺す。
いや殺せないから
犯す。
コイツ僕を舐めきっている。
僕は怒り狂った。
パジャマはニコニコ、やはり人畜無害に笑っている。
全く好みではない。
僕はもっと悪くて、顔が甘く整っていて、不敵で、犯されるなんて思いもしないような男を組み敷くのが大好きなのだ。
まあ、それを言うと、ガキももともとは好みではない。
僕の好みよりは若すぎるし。
でも今では好みどころかそれ以上なんだが。
「可愛い」
またニコニコ言われた。
「・・・・・」
僕は言葉も忘れて震えた。
押し倒して、無理やり突っ込んでやる。
僕はパジャマにゆっくり近づいた。
殺すことは出来なくても、犯せることには確信があった。
身体の感覚はある。
少し他人の身体のようではあっても。
まあ、他人の頭の中なのだ当然か。
感覚があれば、快楽は貪れる。
剥いだり刻んだりすれば、パジャマは拒否して感覚を遮断されてしまうだろう。
でも、快楽なら?
セックスは苦痛と快楽を伴う。
ただ苦しいだけならパジャマはその行為を拒否するだろう。
でも、苦痛と快楽がいりまじったモノなら、拒否できない。
欲しくなるからだ。
そう、もっともっと欲しくなるからだ。
そして、精神がパンクするまで追い込んだなら、パジャマは僕をここに留めておけるかどうか。
僕はコイツの中に閉じ込められているんだから。
ここから抜け出す為にも、コイツを犯す必要があった。
だから浮気じゃないんだよ?
だから浮気じゃないんだよ?
脱出するための手段だ。
僕はガキにめちゃくちゃ言い訳していた。
怒らないでね?
・・・絶対に言わないけど!!
パジャマは自分から腕を広げて僕を待っていて、とんでもなくそれかムカついた。
ベッドに座るパジャマの顎を掴んだ。
「ん?」
不思議そうに僕を見つめる目に怒りを感じながら、その唇に唇を重ねようとした。
「ダメ。それは他の人とはしちゃだめだって」
パジャマは言った。
自分の口を押さえる。
パジャマと一緒に逃げ出した「ダルマ」と「迷子」そのどちらかがそう言ったのか。
どちらかを従属者にしたのだろう。
二人ともとやってる可能性もあるけどな。
「・・・こっちだってお前なんかととキスする必要はないから別にいいよ」
僕は鼻で笑った
僕はキスの代わりにパジャマの喉を舐め、吸った。
「ん?」
パジャマは不思議そうな声を出した。
体重をかけてベッドの上に押し倒す。
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