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追跡 8
呆気ないほど簡単にパジャマは僕の指を受け入れた。
着ていたシャツを僕にめくり上げ、素肌を撫でられるたびにクスクス笑う。
「くすぐったい・・・」
そして、楽しそうに僕に組み敷かれながら笑う。
僕は呆れた。
小さな子供とじゃれながら遊んでいるみたいだ。
でも、パジャマは僕が触れる指に感じていないわけではない。
胸からへそまで撫でれば、身体は震える。
パジャマはクスクス笑う。
でも、理解していないのだ、と悟る。
この男には接触をセックスとして感じることがわからないのだ。
子供がくすぐられて笑うかのように、楽しげに笑う。
・・・・・・正直、気が削がれる。
なんにも知らない子供にイタズラしてるみたいだ。
なんだか萎える。
そういう趣味はない。
僕は子供には全く興味はない。
ロリペド野郎は全員死ねばいいのにと思っている位だ。
パジャマの表情も反応も子供すぎて、冷める。
イライラしてきた。
これなら生きながら皮でも剥いでる方がよっぽど楽しいぞ。
僕は。
ああ、殺せるモノなら殺すのに。
それに。
それに。
どうにもノらない。
ノらないのだ。
必死で僕を見つめる瞳が欲しかった。
触れただけで熱くなる身体が欲しかった。
僕の唇や指を欲しがる肌が欲しかった。
焦らされ、懇願する言葉。
泣き叫ぶ声。
僕を受け入れ、絞りとる暖かい場所。
だめだ。
どうにも。
勃たないわけじゃない。
僕は誰が相手でも出来るように作られている。
そういう仕様だ。
でも。
シたくなかった。
パジャマの胸を吸いながら、その感触を楽しむよりも、チラつくガキの顔が見えてしまう。
パジャマの身体は思ったよりもエロかったのに。
どうしても楽しめない。
パジャマはくすぐったいと笑っている。
でも、そこに性感は混じっている。
もっと虐めたら、違う風に泣き始めるのはわかってた。
そうなったらこっちのもの・・・。
なのに。
なのに。
「ああ!!もう!!」
僕は怒鳴った。
突き飛ばすようにして、パジャマの身体からはなれる。
生まれて初めてだ。
セックスを途中で中断するなんて!!!
「ああ!!怒られるの嫌なんだよ!!」
僕は怒鳴った。
誰にともなく。
仕方なかった。
ガキ以外とは出来なくなってた。
どうしても。
不本意だけど!!
「もう終わり?」
パジャマが無邪気に言ってきた。
ペランと、シャツをめくり、僕がさっきまで舐めていた乳首を見せてくる。
まだ唾液で濡れている。
「お前なんか嫌だ!!」
僕は怒鳴った。
イライラする。
殺したい殺したい殺したい。
思いのままに殺せないなんて、なんてムカつく。
現実で捕獲したら全身の皮を剥いでやるからな。
僕はため息を付き、頭を抱えた。
ガキが抱きたかった。
泣かせて欲しがらせて、思い切り腰を打ちつけたかった。
項を噛み、歯を食いしばらせ、締まる感覚を楽しみたかった。
奥を犯して、身体を痙攣するまで追い詰めて、そこで穴がうごめくのを楽しみたかった。
最後は甘くしてやる。
トロトロに全部溶かしてやる。
ガキだけにはそうしてやる。
そういえば、僕はガキとセックスしていたんじゃなかったっけ?
クソ。
ここから出なければ。
そして・・・調べなければならない。
「・・・お前、セックスしてないのか。二人のどちらとも」
僕は聞く。
これは大事なことだ。
そして、パジャマは簡単に答えるはずだ。
「うん。セックスしたことない」
パジャマは無邪気に頷いた。
この捕食者は、従属者をもたない。
これは極めて特異なケースになる。
たいていの捕食者は殺戮に狂う。
何も考えずに衝動のまま殺してまわる。
稀に理性を残す捕食者は、誰かを選びセックスをし、従属者にする。
捕食者は従属者を求める、はずだった。
なのに。
コイツは。
従属者を持たない。
それに。
コイツはまだ一度も殺していないのだ。
誰も。
殺戮こそが捕食者の本能なのに。
この補食者は「何」だ?
「何でそんなにセックスしたいわけ?」
パジャマが僕に言ってきた。
殴ったところで意味などないのはわかっているが、それでも殴りたいし、刻みたいし、コイツの苦痛を貪りたい。
でも話はする。
する必要がある。
コイツは何だ?
「セックスが何なのか知ってるのか?」
僕は聞く。
身体の反応はまだ性感が何なのかわからない感じだった。
もっと執拗に弄っていけぱ、コイツにも性感が何かわかって泣き叫び始めただろうけど、まあ、なんだ。
こっちが無理だ。
ガキの顔がちらつきすぎる。
「知ってるよ。突っ込んだり入れたりして、揺さぶって、喰いちぎったり、泣き叫ばせたりするヤツだ。人間相手なら死ぬまでする。殺してからもつづけてたりする」
パジャマが答えた。
実に正解だ。
その通り。
「何故お前はしない」
補食者はセックスをむさぼる。
実際僕がそうだし、今まて戦ってきた捕食者達は全員そうだ。
「あなたは何故セックスするの?みんなセックスばっかりだ」
逆に質問された。
つまらなそうにパジャマは言った。
「何故それだけしかないかのように貪るの?」
パジャマは心底不思議そうに言う。
「セックスしたからって、その相手から何かを奪えるわけでもないのに。気持ちよくなるそのためだけに生きてるみたいだ。そんなのつまらない」
パジャマは肩をすくめた。
「あなたも、あの人もそればかりだ。・・・・・何が怖いの?何故そんなモノに逃げ込むの?」
パジャマはまた僕の肩を抱いてきた。
何故だか、コイツの動きが読めない。
逆らう気力もなく、肩に回された腕をそのままにした。
だが、パジャマの言葉は気に障った。
「逃げ込むだって?」
僕はその言葉を繰り返す。
この僕が?
この僕が?
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