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追跡 10

 「ボク達は生きてもいい。僕達達は誰かに赦される必要はないんだ。あなたはずっと一人だったんでしょ。ボクの存在を許さない人達はいた。ボクが動けないから。ボクが話せないから。あなたもそう、存在を許されていないのでしょう?昔から」  パジャマの胸は暖かい。  その声は、やけに響く。  僕は性的愛玩用の人形として作られた。  それ以外の存在は許されていなかった。  だから沢山殺してそこを出た。    存在が許されない?  何故許される必要がある?  存在を許さない連中の存在を何故こちらが許してやる必要がある?  人間が僕を許さないなら、僕も人間を許さない。  お前達が自分の快楽のために僕を作り出したのならば、僕もお前達を快楽の道具につかう。  それの、どこが悪い?  何が悪い?    僕の、僕達の身体は道具だった。  必要なら臓器として売られる家畜だった。  刻んで剥がされる生き物だった。    同じようにしてやることのなにが悪い?    「何も悪くない」  パジャマは断言した。  僕の心を読んだかのように。  確信のある声だった。  「ボクだけだ。君と同じなのはボクだけだ。この世界で君を責めないのはボクだけだ。そして、ずっと一緒にいられるのはボクだけだ」  パジャマは僕の背をなでる。    「あなたは一人じゃない。・・・ボクはあなたを迎えにきたんだ」  パジャマは僕の髪を撫でる。  子供の髪を撫でるように。  「動けない頃、それでもたまに夜の夢の中であなたを感じていた。あなたは一人で、寂しがっていた。だからボクはあなたに会いたいと思ったんだ。だからボクはこうなった」  パジャマは僕を大切そうに抱き締めた。  言葉よりもその手の優しさに心が乱された。  そこに性的な意図が何一つないからこそ。    パジャマは子守歌をうたう。  まるで僕を子供のようにあやす。  僕は不安になる。  記憶にはない。  そんなことをされたことなどない。  育ての親はそれなりに優しかったが、所詮工場で大人数の飼育だ。  子守歌などなかった。  それは苛立ちのように優しかった。  僕は、  僕は  僕は。  思わず泣き叫んでいた。  怖かった。  本当に怖かった。  信じられない位怖かった。  そして、何が怖いのかわからなかった。  そんな僕をパジャマはしっかりと抱き締めていた。      「お前じゃない!!お前なんかじゃない!!」  僕は泣きながら叫んでいた。  ガキに会いたかった。  ガキを抱きしめたかった。  ・・・・・・いや、抱きしめられたかった。  でもそんなことは僕のプライドが許さなかった。  だから、パジャマの胸にすがった。  コイツじゃないけど、コイツしかいないから。  「うん。でも、ボクにはあなただよ」  パジャマは僕に囁き、しっかり抱き締めてた。    性欲がおこる。  僕の身体はパジャマにその意図がなくても、セックスを欲しがる。  コイツを組み敷き犯し、殺せたならいつもの通りなのに、犯すことも殺すことも出来ない。  身体は熱くなり、僕は悶える。  身体をいくらよじってもパジャマは僕を腕の中から離そうとしない。  パジャマの中であるここでは、現実のようにパジャマを僕は引き離せない。    「シてあげてもいい。あなたをそういう意味で欲しがっていないボクなら、あなたに入ってもあなたは傷つかない。・・・・・・あなたは本当はあなたに入られたいのでしょ?」  パジャマの言葉に僕は驚愕する。  そして怒りに震える。    僕が入られたがってるだと?  まあ、確かにガキに根負けしてさせてやったりはしたが、そんなワケはない。  「単なるセックスを楽しむだけなら、別にそんなことにこだわらなくていい。快楽が得られるなら何でもいいでしょ。何故そこまで嫌がるの?本当は嫌じゃないからでしよ」  パジャマにそんな言葉を言わせてしまった。  いつもだったらそんなこといわせる前に殺すのに。  ガキにだってそんなこと言わせないのに。  でも、僕はガキが僕の中を擦る感覚を思い出してしまった。  いっぱいに広げられて、熱く堅いモノで擦られる。    ガキならいい。     そう思う。    でも、同時に嫌だと思う。      凄く、イイから。    たまらなく欲しいから。  僕はここで感じるように作られていることを痛感させられるから。  「嫌だ。嫌だ、嫌だ、嫌だ!!」  泣きながら叫ぶ。       ガキには知られたくないことも僕にはある。  そんな僕は知られたくない。  させてやってるのではなくしてほしいなんて。  セックスドールな僕は。  「ボクなら、大丈夫。あなたのセックスはボクには大した意味はない」  パジャマが優しく言う。  ガキには見せれない。  ガキだけには見せれない。  でも、  でも。  「お前なんかじゃない!!」  ボクは泣き叫んだ。    ボクは決してそうすることを許すつもりはない、ガキの腕の中にいる自分を思い、それも否定しながら、叫んだ。  パジャマの吐息がした。  それでもパジャマが笑ったのはわかった。  「迎えに行くよ」  パジャマが言う。  ふざけるな!!   「僕がお前を捕まえに行くんだ」  僕は怒鳴る。  そして、酷く拷問して殺してやる。  「待ってて」  人の言葉を聞かないパジャマが言った。  「お前が待ってろ!!絶対に殺してやる!!」   僕はパジャマの胸に頬をすりつけながら言った。  堅くなった股間をパジャマの身体にこすりつけてもいた。  性欲でからだが焼けそうだった。  たまらなく欲しかった。  「待ってて」  パジャマの声がもういちどだけした          

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