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反撃 4
「始めるぞ、グズ。頭だけは撃たれるな」
オレはグズに言った。
「おれが心配?」
嬉しそうにグズが言う。
可愛いもんだな。
本気でそう思う。
本当に嬉しそうだからだ。
オレに心配されるのがそんなに嬉しいか。
「当たり前だ。セックスの相手がいないとな」
オレはわざとそんなことを言う。
あっと言う間にグズの顔が曇るのがちょっと可哀想になって、グズの頬にキスしてやる。
唇はだめ。
あの人だけだから。
そしたら、オレの方がこんなキス位で、こんな時なのに、いや、こんな時だから欲しくなってしまう。
せめて口で。
グズに舐めて欲しい。
いや、グズとオレがそんなモノで終われるはずがない。
オレは疼く身体をこらえる。
グズが身体をこすりつけてきた。
グズのも勃ってる。
「後で、な?」
オレはグズの勃ててるそこにに自分の股間を押し付けた。
グズは呻いた。
オレも呻いた。
「奥までぶち込んで、溢れる位出してやる」
グズが呻いた。
腰を打ちつけられ、喘いだ。
グズのを奥まで埋め込んで、思い切りついて欲しかった。
「してくれよ・・・」
オレはグズの耳を噛みながら言った。
でも、ここまで。
どんなにおったててもここまで。
さあ、始めよう。
殺して食って。
オレ達は強くなる。
キスの代わりにグズの指を舐めてやってから、オレ達は名残惜しいまま離れた。
「行くぞ」
オレはグズに言った。
「うん」
グズも頷く。
オレ達はその建物へ入ることにする。
繁華街の外れにある、小さなビルディング。
大きな看板が掲げられていた。
「 組」
ここは今日からオレ達のモノになる。
笑い声が止まらない。
奴らは銃を持っていたし、実際に撃とうともした。
その手首をことごとく飛ばしていく。
本当は山刀が欲しかった。
オレの記憶に存在する男のように。
でも山刀なんてなかったから、街についてすぐ捕まえた若い男に、開店一番のホームセンターで鉈を買わせた。
そして、無駄なモノはもう食いたくなかったけれど、夜まで待てない食いしん坊のグズのためにその男は喰った。
食べない頭部だけは海に捨てた。
その後、いつもならセックスするが、今回はしてない。
いつ追いつかれるかわからないからだ。
殺した若い男の家でシャワーを浴び、ずっと車の中にいて外に出たがるあの人をあやしながら、この事務所に直行した。
コイツの持っているものはあまり役に立ちそうにはなかったけれど、地元のヤツでこの街の地図代わりにはなった。
鉈を振り回せば面白いように、銃を握った腕は吹き飛んでいく。
身体は見事なバランスで着地し、また跳び、人を切り刻んでいく
彼女が食べた量が少ししかなかったせいか、記憶のコピーのコピーのせいか、記憶の中の男への情報は曖昧だ。
ただ、速く動けるようになった。
そしてどうすれば人を斬れるのかはもう身体が知っていた。
その男の能力だ。
奴らが動くより先に動けた。
オレ達は堂々と入り囗から入ったのだ。
大きな看板を掲げた正面玄関からだ。
何故か正面玄関の外にスタンドタイプの灰皿があり、強面達がそこでタバコを吸っていた。
ヤクザも室内禁煙か。
それに笑ったが、オレ達はタバコを吸っている連中の横を駆け抜け、開いた入り口から中に駆け込んでいった。
ヤクザは虚をつかれたようにオレ達を中に入れてしまった。
なんて間抜けなんだろう。
まあ、グズがデカい身体をしていたとしても、どうみても、オレ達はカタギのガキと細身の男の二人連れだ。
抗争も下火になっている今じゃ、多少ダレてても仕方ないか。
怒声をあげて追いかけくる連中達を、くるりと振り返り、オレ達はソイツらの建物の中で斬って斬って斬りまくった。
オレは速かった。
なる程。
相手より先に動けるなら、防御などひつようないのだ。
素手で殴り、千切るより、洗練された動きは実に合理的に人間を破壊していく。
どううごけばいいのか瞬時にわかった。
おいおい。
お前はどんな殺人マシーンだよ。
オレはオレがコピーした記憶の中のヤツに話かける。
彼女を殺した若い男だ。
彼女の脳死にいたるまで壊した。
姿はぼんやりとしか解らない。
彼女はの脳の損傷は記憶も曖昧にしてる。
本来はこんなものではないのだろう。
オレ達を追ってくる男の能力は。
この男ともう一人いる、本当に恐ろしい男が。
その能力はどんなものなのか。
捕食者。
従属者。
彼女が殺して喰ったヤツの知識がそれを裏付ける。
だが、この殺人マシーンの能力は劣化コピーでも凄まじい。
面白かった。
オレは笑いながら、斬っていった。
ただし、今回は喰うのも殺すのも後回しだった。
グズも鉈を楽しそうに振り回していた。
ぽーん。
ぽーん
面白いように腕や、指が飛んでいく。
でも、腕や指だけ。
まだ殺しちゃいない。
殺したくて食べたいけど。
おやつ代わりにグズが指の一本を齧っているのは許してやろう。
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