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反撃 5
「どうも」
オレは笑った。
その男を見下ろしながら。
男は震えてはいたが泣き出しはしなかった。
そう、メンツというものは必要だ。
組長だもんな。
だから男はグズに顔を踏まれていても床からオレを睨みつけるくらいのことはしてみせた。
流石。
グズはお前の頭なんか踏み潰しちゃえるよ、リンゴみたいにさ。
でもそういう顔できんの。
いいね。
オレ達はあっという間に組長の部屋で組長を捕まえていたわけだ。
出来る限り、殺してない。
出来る限り、傷つけてない。
無目的な殺戮も捕食も終わりだ。
オレ達は目的を持って動く。
だから恐怖は植え込む必要があった。
部屋の外からこちらを覗く連中は固まったままだ。
五体満足なヤツは少ない。
逃げ出さないことだけは褒めてやろう。
オレは立派な机に座って、そこにあったタバコに火をつけ咥えた。
この身体になってからは初めてのタバコだ。
不思議とそれまで吸いたいとは思わなかった。
ダルマになってからもたまには吸いたいと思ってたのにな。
煙を吐き出す。
ああ、なんてことだ。
人肉以外の食い物と同じだ。
紙みたいに味かない。
クリスタルの美しい灰皿に灰をおとす。
オレは行儀はいいんだ。
机に座ってはいてもな。
セックスと人肉以外は何もかもが味気ないことを思い知る。
安らかな眠りさえ、この身体には不要だ。
「組長さん」
オレは煙を吐き出しながら呼びかけた。
グズの靴底とカーペットに挟まれている頭に。
組長のことは知ってた。
オレを【飼っていた】店は、この組が経営している。
組長が何度か店に来て、新しく堕とされてきた女の子を味見していたのを見たことがある。
酷い抱き方で、女の子が客より先に組長に殺されるんじゃないかって店のヤツらが心配していた。
実際、一人は死んでいる。
泣き叫び、顔を血まみれにしながら悲鳴を挙げていた女の姿をオレは覚えている。
ここは小規模の組だが、ここは合法のソープから、非合法のそれこそ人間をいたぶり殺しながら犯すような店まで【経営】していて、金はもっているし、何より特殊な趣味の顧客が国や経済界の偉いさんにもいるらしく、規模の大きさの割りには上手く生きている組だ。
「組長さん・・・オレを覚えてる?」
オレは言った。
組長はグズの靴の下から不思議そうな顔をした。
オレは味気ない煙草を吸いながら微笑んだ。
まあ、分からないだろう。
でも忘れたとは思わない。
オレをダルマにしたショーは店始まって以来の最大のショーだったからだ。
生きた人間の解体ショーだ。
犯されながら手足を斬られた。
しかも、オレはその後も生き延び、【人気商品】となった。
忘れるわけがない。
まぁ、自分でも良く生き延びたと思う。
死にたくなかった。
ただ殺されるだけなのが嫌だった。
例え何一つ出来なくても、死んでヤツらに何もできないよりは、それでも生きたまま呪える方が良かった。
呪うだけしか出来ないとしても、そんなもの何の役にも立たないとしても。
死んで何もかもなくなり、何も出来なくなる位なら、呪うこと、それだけでも出来ることを望む位、オレはあんた達を、いや、この世界を憎んでいた。
「こうすりゃ、思い出すかな」
オレは薄く笑った。
オレは立ち上がり、組長を踏みつけているグズのそばへ行く。
タバコは咥えたままた。
そして跪いて、グズのズボンのボタンとチャックを外す。
「はぁ?」
まぬけな声を出したのはグズだ。
まさかこんな所でこんなことをされるとは思ってなかったのだろう。
驚きのあまり、組長の頭をつぶしかける。
ミシミシと音をたて、組長は悲鳴をあげる。
「こら、壊すな。潰れたら治らないんだからな。・・・お前、バカだな、こんなにしながら殺してたのか。ガッチガッチじゃねーか」
オレは叱りながら言った。
グズのは臨戦状態だった。
殺して喰ってからするのがお約束なのに、殺すだけでまだ喰ってもいないし、やってもいないわけだ。
まあ、こうなるよな。
グズのはデカい。
それが気に入って使っているだけのことはある。
オレはもう濡れている先を、音を立てて擦ってやった。
「あんた何考えて・・・こんなとこで・・・」
グズはそう言うくせに、もうオレの髪を掴んでいる。
オレに可愛いがられた体はオレを欲しがる。
殺している間もずっと、オレとのセックスを考えていたんだろう。
オレを見下ろす目が熱い。
これはこれで考えなきゃいけないけどな。
オレ以外の相手もまた作ってやらなきゃいけない・・・。
「頭潰さないでイケよ」
オレはそれでもグズが可愛くなって、優しく言うと、グズのを咥え、唇でしごき始めた。
「マジかよ」
グズは呻いた。
オレは音を立てて吸い、舐めて、唇と喉まで使ってグズのを扱く。
グズが呻いたり、身体を震わせる度に、靴の下の頭が軋む。
靴の下の顔に見せつけるようにオレはいやらくいやらしくフェラをした。
だけど、コイツが勃起して興奮したとは思えない。
その目は苦痛と恐怖しかなかったからだ。
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