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友達 2

 僕は多少の罪悪感があるので、ガキに僕を抱きしめさせてやった。  「好き。好き。大好き」  と抱きつかれるのは、悪い気はしない。  笑ってたかもしれない。  その僕とガキを犬が気に入らない目で見ていた。  犬のヤツは部下からホテルのベッドの惨状を聞いているはずだ。  部屋は飛び散った血でひどい有り様だった。  僕がそこでガキに何をしたのかは犬も良くわかっているだろう。  責めるような目が気に入らない。  お前だって子供みたいな嫁を無理やり組み敷いているくせに。   泣き叫ぶのを無理やりしてるくせに。  気に入らない。  なにより、ガキの前で良い人ぶってるのが気に入らない。  何が全員グールになっていた、だと?  嘘つきめ。  どうせまだグールにはなっていないけど、全員その可能性があるから殺したんだろ。  死が近い老人達の死期を早めることをこいつらが躊躇するわけなどない。  ガキにも言ったが、コイツらは高校生を性奴隷として殺人鬼に差し出すような連中だ。  まあ、いい。  いつかガキに申し開き出来ない最高のタイミングでお前の本性は暴いてやるよ、犬。  その時が楽しみだ。  僕は微笑みさえ浮かべて犬を見た。  犬の苦々しい表情が増したのでさらに楽しくなった。  ガキの腰に手を回し、夢中で僕に頬摺りしてくるガキをあやす。  可愛いな。  ホント。  「で、お前は連中がもうグールを作らないと思うか?」  僕はガキの背中を撫でながら犬に聞く。   「いや、作るだろう。ただし、もう派手にはやらない。厳選した相手をグールにするはずだ」  犬の答えは僕の考えと同じだ。  「何故そう思う?」  僕は聞く。  「すくなくとも、ダルマはこの世界を憎んでいる。ダルマだけは他のグールと違って明らかに憎しみのために殺してる。いたぶり、その肉体を弄び、殺してる。あれほどの怒りと憎しみを持つ男が、ただ大人しくヤクザに飼われているだけとは思えない」  犬の答えに僕は満足した。  「合格だよ、犬。あの男は呪いだ。手足を奪われ舌さえ奪われても生き延びたのはこの世界を呪う意志があったからこそだ。この世界をメチャクチャにできる方法があるのにそれを使わないはずがない」  僕は言った。  当然だ。  ダルマはそうする。  僕がダルマならそうする。    まあ、僕は本音を言えばこの世界なんてどうでもいい。  殺して楽しんで、ガキと気持ち良くなれたらそれでいい。  もちろん金は必要だけどね。  真剣に正義の味方はしているが本当にどうでもいい、この世界なんて。   僕とガキ以外はどうでもいい。    だがダルマの気持ちはわかる。  自分の身体と同じ位、メチャクチャにしたいよね。  メチャクチャにされたのなら。    ダルマを切り刻み犯したのはこの世界だ。  ガキが守ろうとしている世界だ。  罪のない人々?  まさか。  ダルマみたい子供が長期間に渡って虐待されているのに全ての人間が気付かなかったわけがないだろう。  きっと幼いダルマを喜んで買った人間もいるはずだ。  幼い性器にむしゃぶりつき、小さな穴に興奮した変態どもが。  そして、それを見ないふりをしたたくさんの善良な人々がいただけだ。  どいつもこいつも見捨てただけだ。  自分には関係ないから。   色んな理由はつけても、それだけのこと。  それだけ理由でダルマは地獄を生きてきたのだろう。  だからダルマは世界を壊す。    自分が壊されたのと同じ位の執拗さで。  よし頑張れ、と他人事ながら言いたいところだが。  僕は真面目に正義の味方をやっているんでね。  「新しいグールを作っていることがわかれば、お前たちも動けるわけだな」  僕は考えながら言う。    犬達のサポートは欲しい。  「そうだな」  犬は頷く。  さてさて。  どうするか。        

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