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恋人 12

 「あんたにグズ呼ばわりされるつもりはねーよ」  グズが低い声でキレていた。  「黙れ、バイブのくせに」  ゲスが鼻で笑う。  グズの目に凶暴な色が浮かぶ。  ゲスは用心深く後ずさる。  オレとあの人が公園についた時、ゲスとグズが喧嘩をしていた。  ゲスはどうしてもセックスがしたくて、グズを探しにきたらしい。  のんびり散歩しながら来ていたオレ達は途中で抜かされていたようだ。  だが、元々仲の悪い二人はとうとうここで険悪になってしまっていた。  中に入っている時でさえグズはゲスが嫌いなのだ。  気持ち良くても。  グズとゲスでは喰ってるモノの差がデカい。  優秀な猟犬と、政府が飼ってる化け物を喰ってるグズは(正しくはそれを喰ったグールを喰った)戦闘能力ではゲスより上なのだ。  生来の殺し屋であるゲスよりもグズはつよい。  ただし、ゲスは本当にゲスなので、グズよりも本当に手段を選ばない。  二人の争いが始まれば、凄まじいものになるだろう。  面白そうではあるが。    だけどこんなところで騒ぎはこまる。  オレはため息をついた。  「グズ、止めろ」  オレはそっとあの人の手を離してグズに駆け寄る。  それだけでグズが嬉しそうな顔をする。  そんなに嬉しいか。    オレがあの人を置いてお前の方に来るだけても。  抱き寄せられた。  「迎えに来てくれた。来てくれた!!」  震える声で囁かれる。  抱きしめる腕が震えている。  ・・・あの人が迎えに行こうと言ったからだ、とは言えない雰囲気だった。  わかったよ。  オレはため息をつく。  グズの背中に手を回し、グズの背中をポンポンと叩いた。  「帰るぞ。・・・二人でセックスはしないけど、一緒に寝てやるから」  オレ達は眠らない。  でもグズはオレを抱きしめて横たるのが好きなのだ。  それだけでもいい、と言うほど。  オレを何時まででも抱きしめている。  オレも結局はグズに甘いのだ。  ゲスではダメなのはわかった。  また考えよう。  「うん。うん」  グズがすすり泣く。  グズの相手にゲスはむりか。  確かにゲスは身体以外は最悪だしな。  セックスだけで考えすぎた。  グズの相手だけのために誰かを探さないと。  性格も考慮して。    それに、ゲスは別の意味であの性格が必要だったのだ。  ただ、あの人とゲスが並んで話しているのは見えた。  ゲスはあの人に見せたことのない笑顔で笑ってた。  オレもグズもゲスも。  あの人には対応が変わる。  恋い焦がれてるのはオレだけだけど、ゲスでさえあの人には甘い。  グズも恋敵であるあの人に甘い。  この世界にあの人だけだからだ。  オレ達が何であろうと全く気にしないのは。  そして、オレ達を人間から救ってくれた人だからだ。  人間を憎みながら人間であることを止めさせてくれた人だからだ。  人間を止めることができた  これ以上の救いをオレ達は知らない。  さあ、考えよう。  人間の世界をこわす方法を。      

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