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夢から始まる 1
お祭りみたいに楽しんだ。
逃げ惑う男達をグズとゲスで追う。
グズとは数字でフォーメーションを確認しあう。
猟犬を喰ったオレ達は、猟犬の真似事ができるし、ゲスの仕事はもともと始末屋だ。
追うことへの勘はいいから、口頭の指示で動ける。
今日の仕事は勝手に「店」を開いていた奴らへの見せしめだった。
暴力とセックスの店だ。
いたぶらないと勃起しない客のための店。
「こういう店」はこの街では組以外がやってはいけないことになっているのだ。
なのにしてた。
だから。
お仕置きだ。
見せしめに残酷に殺す。
その場に閉じ込められていた女達は最初に殺した。
生かしておいたら、ゲスのオモチャにされて可哀想だからな。
ゲスは女全般を憎んでいるから、また酷いことをしてから殺しかねない。
そうすればそれを見たグズがまた怒る。
問題は起こる前に解決する。
オレのリーダーシップは正確だ。
それに、もうみんな衰弱してる、長くはなかっただろう。
殴られ犯され続けたのだから。
オレは4人ほどいた女の首をへしおってころした。
オレは女達に恨みはない。
もちろん食糧として美味しくはいただくが、オレも同じ境遇だったのだ。
楽に死なせてやる位のことはしてやる。
それが人間相手だとしても。
こういう女達をゲスのオモチャにはさせない。
オレはそれなりに優しいのだ。
ゲスは女をいたぶって楽しむ前に殺されたことに、ブツブツ文句を言っていたが、すぐにまだ生きてる獲物に切り替えた。
コイツはプロなのでこういうところはホントいい。
だが、コイツに捕まった奴はオレでさえ気の毒だ。
オレは捕まえた奴を勃起させて、それを使って楽しみながら喰い殺すだけだか、ゲスは凄まじいサディストなのだ。
食事以上に楽しむだろう。
苦痛を与えることを。
まあ、獲物をどう喰うかはそれぞれの勝手だ。
グズみたいにさっさと殺してから喰ってもいい。
人間だって踊り喰いにしたりとかするだろ。
ちゃんと食べてやることが一番大切だ。
頭以外は余すとこなく食べてやる。
喰いもしないで殺すだけの捕食者とやらとはオレ達は違うのだ。
「オレ達」の捕食者は殺すことさえしないけどな。
オレ達は狩りを楽しむ。
街に逃げ出した生き残りを追うのだ。
逃げ出したのは3人。
3人が別方向に逃げだしたのは賢いと思った。
だけどバラバラには追わない。
怪我を追った一人をまず路地裏に追い詰めた。
3人で誘導し、突き当たりに追いつめた。
そこからはゲスにくれてやった。
ゲスは笑いながら口にそいつのネクタイで猿ぐつわをかまし、建物の隙間に消えていった。
ゲスはこの街の死角を良く知っている
長い時間をかけて死ぬだろう。
早く死ねたらと望みながら。
残りの二人も匂いを辿る。
オレ達は血の匂いを追える。
ファミリーレストランに逃げ込んでいたソイツを警官然としたようすで逮捕した。
警官のふりは知識としてきちんと入ってる。
グズが車をとってきたのでそこに押し込んだ。
人目のつかないところでトランクに載せ替える。
もう一人は結構頑張った。
フェンスを乗り越え、バスを乗り継ぎ、逃げていた。
グズにバイクを運転させた。
そうオレ達には今はバイクもある。
バス停の時間から乗ったバスを割り出し、先回りしてバスを待つ。
降りてきたソイツの顔は見ものだった。
それでも逃げ出した。
街の中を走り回り・・・。
オレ達は追いかけることを楽しんだ。
だから本気は出さなかった。
楽しく追いかけるために。
でもとうとう路地においつめたソイツが、隠し持っていたナイフを握りしめ、オレに襲いかかってきた。
まあ、避けるまでもなく、予定通りビルの屋上から向かいあったビルの壁を蹴りながら降りてきたグズにナイフが届く前に頭を殴られ、頭を弾けさせておわったけれど。
ソイツはグズがその場で喰った。
オレは車のトランクにいれたままにしてるヤツを喰う予定だ。
元気だったら勃たせて使ってから喰う。
その前に女達の死体を隠れ家に運び込まないと。
冷蔵庫に保管して明日以降の食糧にする。
食べようと思えばいくらでも食べられる。
オレ達が喰った肉がどこへいくのかもわからない。
自分の体重以上の量でもオレ達は食べられるのだ。
だけど、殺して回ることは今は控えているから、おおきな冷蔵庫をいくつも買って、そこに死体をストックしておくのだ。
殺さない日のために。
味は落ちるが仕方ない。
大量であれ小量であれ、オレ達は人肉を毎日食べずにはいられないのだ。
女達の死体も運ばないと。
オレ達は「店」に戻った。
そこでそれを見つけたのはグズだった。
グズは困ったようにオレを見た。
オレも驚いた。
時間は少し前にさかのぼる。
女達の死体を後部座席に放り込み、隠すために毛布をかけてから、まだトランクの男が生きてるかを音で確認した。
動いている音がした。
頑張って欲しい。
使いたいから。
そこでグズが慌てたようにオレを呼びにきたのだ。
地下室で見つけてしまった、と。
それ、を。
見つけたのが生存者だったならサッサと殺せばいいのに、と思ったがグズは慌てててなにを言っているのかわからない。
コイツがここまで心を騒がすモノって?
そしてオレはグズに連れられて言った地下室で驚いた。
確かに言葉を失った。
真っ白な肉体が微かに蠢いていた、
それは、手足を切り離された少女だった。
オレと同じ、「ダルマ」の。
こいつら、ダルマまで作っていやがった
手足を切り落とした女を抱きたいイカレた奴はいるのだ。
そのために、作ったのだ。
でももうかなり弱っていた。
薄汚れたマットの上で、意識がなく朦朧としていた。
オレはグズに言って毛布を持ってこさせ、大切に彼女を包んだ。
抱き上げた。
彼女は殺さない。
喰わない。
彼女こそオレが待っていたモノの一つだ。
手足のない身体は酷く軽かった。
痩せこけてはいるが、オレみたいに歯は抜かれていないし、舌も切られてはいない。
「大丈夫なの?その子」
グズが心配そうに言った。
オレはその調子に目を細める。
グズにはこの子は食糧ではないのだ。
グズは優しいが遠慮なく殺す。
食べたいからだ。
でも食糧は選ぶ。
オレを思い出すからだとしても、この少女はグズには食糧じゃない。
これはいい。
「さあな、酷く弱ってる。運が良ければ、あの人が魔法をかけるまで保てば、そしてこの子が望むなら・・・助かるだろうな」
オレは言った。
女のグール。
これはいい。
いいんだよ。
面白い。
オレはグズを見て微笑んだ。
お前を使ってやることはある。
可愛いグズ。
お前はオレのためにやってくれるだろ?
面白くなってきた。
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