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破滅の音 5
僕は闇を漂っていた。
電話の盗聴、ネットの掲示板。
音や文字を拾っていく。
そして大事なのは、
女達とのお喋り。
風俗、愛人、キャバクラ。
女達は闇に生きているからだ。
もちろん、そっち系の男達に身体を与えてる青年達とも話した。
人間はセックスしている時が一番無防備になる。
何も言わなくても何かを漏らしている。
そして、そういう世界で身体を売る連中は色々と察する能力が高い。
じゃないと自分も危ないからだ。
基本、口を割ることはない。
闇が深ければ深いほど。
口が堅くないと生き残れないからだ。
彼女や彼は、頭の悪いフリさえする。
そんな彼らに口を開かせるのは普通では無理だ。
僕は女は好きじゃないが、ちょっと甘く囁く位のことはしたし、キス位はした。
男相手には、もう少々。
指だけだ。
指だけ。
そして今日も。
これは誓って浮気ではない。
ないからね。
ないんだから!!
ガキには絶対言わない。
怒られるじゃないか。
だって拷問したら早いけど、正義のための拷問でもガキは許してくれないだろう。
じゃあ指位は許して欲しい。
仕事だ。
正義の味方としての仕事の一環。
僕はガキが一番いい。
楽しんでなどいないんだから。
それに、今日の相手はさらにそういう仕事のヤツじゃないんだから、ここまでしないと教えてくれないんだから仕方ないんだからね。
僕は言い訳しながら、その男のズボンを足から完全に抜いた。
もう、上着は床に落ちていて、ワイシャツは片方の手首にひっかかっているだけだった。
見事な彫り物が背中や乳首の周りにまで入れられていた。
このクラブで飲んでいた構成員だ。
この街を仕切っている組の。
僕はコイツが組長のお気に入りで、組長に組み敷かれているらしい、という噂は聞いていた。
疑問符もある噂だった。
その噂を疑うものも多かった。
そう、甘く整ってはいたけれど、男からは凶暴さがにじみ出ていて、とても男に組み敷かれるな男には見えなかったからだ。
これが本当なら、組長は僕と同じで、綺麗で悪い、組み敷かれそうには見えない男が好きらしい。
少し組長には親近感を持った。
身体を弄ってみた感じでは噂は本当だろう。
この身体は男を知っている。
ちょっとテンションがあがったのは内緒だ。
でも、この男はゲイじゃない。
おそらく組長はその地位を利用してこの男を抱いていたのだろう。
そこでこの男もそうされる良さは知ったけれど、ゲイではない。
けど、僕は違う。
僕は。
男とするのは大の得意だ。
めんどくさいから殺してただけで、ちゃんとたらしこむのも得意なんだよ。
本当は。
このクラブにある女達とのお楽しみ用の個室に引きずり込んですぐには、男は元気よく、罵り声を上げ抵抗したけれど、胸やら穴やらを弄ってやったなら、すぐにとろけた。
僕に堕ちない男はいない。
僕はとても甘く淫らに相手を溶かす。
これは自慢でも何でもない。
僕はそういう風に創られているからだ。
誘惑し、魅了し、堕落させる。
そして、破滅させるための、人間の形をした麻薬として創られているのだから。
組長に身体を開いてはいても、それがこの男の本意ではなかっただろう。
ヤクザも悲しい飼い犬だからだ。
上のために何でもする。
でも、今、この男は完全に僕に身体を明け渡して、僕を欲しがっていた。
牝のように。
繰り返す。
これは浮気じゃない。
だけど、ガキには言わない。
絶対に。
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