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破滅の音7
「ド素人に刺された、と」
スーツが呆れたように言った。
「スーツ、ゴメン・・・」
俺は謝った。
俺が刺されてすぐ駆けつけてきた救急車に俺は乗せられてしまった。
彼が呼んでくれていたらしい。
ぱっくり開いた傷口の中で触手が蠢きながら再生しているところを見せるわけにはいかない。
応急処置を必至で拒否しているところに、スーツ達が駆けつけて、俺を回収してくれたのだ。
「いや、素人ではないな。うまく内臓を避けて刺していた。何者だ」
スーツは俺の傷口を確認しながら言った。
俺は上半身裸で、ソファに寝ていた。
スーツがホテルの部屋に運んでくれたのだ。
刺された腹の傷口を指で確かめながらスーツか言う。
もう血は止まっている。
スーツは丹念に傷口まわりを撫でた。
あの人に見られたらヤバいかもしれない。
あの人は嫉妬深いのだ。
スーツの手は俺の腹筋を撫で、傷口を確かめる。
俺は呻いた。
ちゃんと俺は痛みは感じるのだ。
脳内麻薬も出てない今、痛くて苦しくて仕方ない。
「死なないように上手く刺している。救急車を呼んだ携帯も回収した。指紋を今照合している。・・・殺す気がなかったのは本当だろう。・・・何者だ?そして、何故あの男にも私にも黙っていた?」
スーツの声は厳しい。
スーツは慌てて駆けつけてくれたのだ。
救急車に飛び込んできたスーツはとても心配そうな目していた。
言葉すらなく、飛び込んで・・・俺を見て、その目が安堵したのがわかった。
そして心配をかけてしまったのだと。
「偶然知り合ったんだ。何も知らないんだ・・・」
俺は正直に言った。
「明らかに反社会的な世界の恋人を持つ少年だとわかってたんだろ、君の話では!!明らかにマトモではない少年との関係を誰にも君は言わなかった!!それがどれだけ危険なのかわかっているのか?どういう形で君の敵は君を襲ってくるのかわからないんだ。あの男とは違って君は死ぬんだぞ!!今回腹刺されたたけで、首を斬られなかったのは運が良かっただけだ!!」
スーツに初めて怒鳴られた。
いつも冷静なスーツに。
スーツは怒鳴った後、困ったような顔をして俺の髪を撫でた。
俺は涙ぐんだ。
こんなにも心配させてしまった。
悪いことをした。
「ゴメン・・・スーツ」
俺は小さい声で言った。
こんなはずじゃなかった。
「・・・私でなくてもいい、せめてあの男には言うんだぞ。秘密は危険だとわかっただろう?」
スーツが何故か目を泳がせながら言った。
俺を見ようとはしない。
だけど頭を撫でる指は、あの人が甘やかしてくれる時みたいに優しかった。
「・・・これは私が殺されるな」
小さい声でスーツは言って、指がゆっくりと離れた。
触っていた腹からも手が離れる。
慌てたように、俺に新しいシャツを投げ渡す。
俺はそれを着る。
あの人の好きなブランドだ。
確かにあの人ならスーツを殺しかねない。
嫉妬深いのだ。
本当面倒見のいいスーツは俺を可愛がってくれているだけなのに。
ノックと共にスーツの部下がはいってきた。
「指紋で身元がわかりました」
その次の言葉に俺もスーツも言葉を失った。
「その少年はグールです。最初にいなくなった三人の一人、【迷子】です!!」
そう言われたからだ。
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