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殺戮の歌3
「ごめん」
ガキが俯きながら言う。
怒られた子犬みたいな様子で。
ソファに沈み込むように座っていた。
腹が立つ。
腹が立つけど可愛い。
可愛いけど腹が立つ。
僕達のホテルの部屋だった。
ガキの向かいのソファーには犬が座っていた。
僕に報告をしてきたのは犬だった。
何故、犬は立ち去らない。
ここは僕とガキの部屋だ。
ガキを回収した時点で犬は帰ってもいいはずだ。
犬、お前は何を心配している?
誰を気遣っている?
お前が報告してきたくせに。
お前なら隠すこともできたくせにそうしないでおいて、何を心配している?
命令に逆らうこともできない、ある意味僕より汚れた手を持つお前が、誰を心配している?
何も出来ないくせに。
お前が僕にガキを差し出したくせに。
僕がガキに何かするかと?
ああ、そうだな。
僕は怒りをコントロールできない。
ああ、そうだな。
でも殺さない。殺さない。殺したりなんかしない。
ソファに座りうなだれるガキが可哀想で、可愛くて、ひきちぎりたかった。
どうしようもないほと乱暴に犯して、僕だけしか見ないようにしたかった。
穴に性器を強引にねじこんで、精液で身体の中を満たしたかった。
怒りと性欲は良く似ている。
股間がはちきれそうになっていた。
酷くしたくはない。
でも、わからない。
僕にもわからない。
「出ていけ、犬」
僕は言った。
犬は逆らわない。
どうせお前には何もできない。
お前に出来るのは部屋の後始末だけだ。
犬はゆっくりと立ち上がった。
一瞬ガキが縋るように犬を見たのが許せなかった。
優しくできなくなる。
なってしまう。
優しくしたい。
したいんだ。
でも。
僕はじりじりとガキに近づく。
服を引き剥がして、床でガキを犯すことになるだろう。
この部屋はマンションと同じで盗聴されてない。
犬はガキがどんな目にあっているかにヤキモキするだろう。
犬がする想像よりも酷いかもな。
また、部屋が使えなくなるかもな。
でも、苦しいだけじゃない。痛いだけじゃない。ちゃんとイカせてやるから。
泣き叫んで許しをこいつづけるほどに。
ガキが怯えた目で見てる。
そんな目で僕を見るな。
お前は僕の物だ。
「そうそう、あんたの【情報源】、部下を接触させてある、それで良かったんだろ?ソイツが泊まるホテルに部下を送っておいた」
そう言って、犬はドアを開けて出て行った。
僕は頭に上がった血が一気に下がったのがわかった。
下がりすぎてめまいがしたほどだ。
「大丈夫?」
ガキが慌てて僕にかけよる。
「何にも、何にも聞いてないよね?」
僕はそのガキの肩を掴んで揺さぶった。
情報源、ホテル。
あの入れ墨の構成員について、僕がちょっと指を使って情報を聞き出していたことについて犬は言っていた。
犬は知っている。
当然だ。
僕の言動は常にモニターされているのだから。
僕の都合良く動く駒にしたあの構成員について犬がガキに何か言ったんじゃないかという心配が、全ての怒りを凌駕した。
浮気じゃない。
浮気じゃないから!!
「何って何?」
ガキがガクガク揺すぶられながら困惑したように言った。
僕はガキを抱きしめたまま、安心してため息をつく。
良かった。
良かった。
知らなくていいから。
浮気じゃないから。
僕の怒りはどこかへ行ってしまっていた。
浮気したと思われる恐怖が怒りを凌いでしまった。
良く考えたら犬が言うはずがない。
言わないからこその犬だ。
僕は歯噛みした。
犬ごときにのせられた。
でも、良かった。
ガキを傷つけないですんだ。
でも犬はいつか殺す。
ガキには絶対バレない形で。
うまくやらないと。
僕は。
自分を・・・コントロールできない。
僕はソファに座ったままのガキを立ったまま抱きしめていた。
凶暴な性欲は消え去り、今あるのは愛しさだけだ。
お前が襲われたと聞いて、最初に感じたのは恐怖感だったのに。
お前が死んだ可能性に怯えたのに。
無事だとわかったら許せなくなった。
ガキの髪をなでる。
「・・・どうしたの?」
ガキが心配そうな声を出す。
僕の背中にそっと手を伸ばして。
酷い目に合わされそうになっていたのに、それがわかっているのに僕の心配をするか。
どこまでお前は馬鹿なんだ。
僕とのセックスに夢中になって何もかもを投げ出してくるヤツはいくらでもいるけど、お前は違う。
まあ、他の誰よりも僕とのセックスを求めてるのもお前だけどね。
「お前は僕のものだ」
僕は言う。
「うん」
ガキが頷く。
「何故黙ってた」
僕は言う。
「・・・・・・この街にいる間だけ・・・。友達が・・・欲しかったんだ」
ガキが小さい声で言った。
「僕だけじゃだめか?」
僕は言う。
「あんたを愛してる。だけど・・・この街にいる間だけならいいかと思ったんだ」
ガキの言葉にウソはない。
僕はガキから全てを奪った。
家族も友人も平和な生活も。
暴力と殺人とセックスの毎日を押し付けた。
友人がいる日常を求めても無理はない。
僕の世界は元々ガキの世界じゃない。
酷いのは僕だ。
「僕だけだ!!僕だけじゃないとダメだ!!」
僕は怒鳴った。
それでも僕はガキの全てを要求する。
奪うたけ奪って、縛り付けて、愛しているとの言葉さえやらないで。
「うん・・・ごめん。ごめんね。傷つけてごめんね」
ガキはつらそうな声で言った。
身体を抱き込まれた。
ガキは自分の胸に僕の顔を押し当てた。
優しく髪がなでられた
泣きそうになる。
そう、謝るのは・・・ガキなのだ。
「あんたは俺だけなのに、ね。ごめんね」
その言葉が本当に辛そうだったから、泣きそうになって、僕は泣く代わりにガキの身体を服の上から噛んだ。
「あんたが俺だけなことに俺がどれだけ幸せなのかを・・・忘れてたよ。ごめんね。忘れちゃいけなかった」
ガキは優しく言った。
また泣きそうになった。
僕は酷い。
僕はガキを愛してやれない。
僕はガキから全てを奪う。
でも僕にはガキだけなのだ。
この世界にガキだけなのだ。
それを、ガキはそれを嬉しいと言うのだ。
「秘密はゆるさない」
僕は言った。
泣きたくなかったから目を強く閉じた。
その分、ガキの匂いが強くかんじられた。
安心する、匂い。
「うん」
ガキは何故か本当に嬉しそうに僕を抱きしめながら言った。
僕はガキの胸に顔をうずめた。
暖かいここが僕は好きだ。
ガキは髪をなで、何度も僕の頭にキスを落とす。
その優しい感触に目を閉じたまま酔う。
「ごめんね・・・大好き」
ガキの声に小さく頷く。
お前は僕のもの。
お前だけは絶対手放さない。
お前が幸せでなくても。
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